結婚決定で天にも昇る気持ち、じゃなくて富士山に登る【富士山登山(富士宮口)】

18:03
食事を済ませ、トイレにも行き、あとはもう寝るだけの時間になった。

山小屋の夕方から夜にかけては、ひたすらのんびりとした時間が流れる。早く寝てしまう人も多いけれど、僕はそれに抗って消灯時間ギリギリまで起きていることにしている。

夜中にふと目が覚めて、まだ夜明けまで時間があったら絶望するからだ。なにせ、これまで多くの山小屋で「狭くてキツくて、隣の人とぶつかり合いながら眠れない一晩を過ごす」ことをやってきた。そういう時間はできるだけ短いほうがいいし、寝るからには疲れ果てて熟睡したい。浅い眠りだと、この世の地獄ともいえる狭い空間を体感し続けて、辛い。

食後は自室で読書をしたり、外が暗くなるまで寒さを我慢しつつ屋外で過ごす、ということをやってきた。しかしここ富士山の場合は、屋外で過ごすというのはちょっと厳しい。景色が単調なのと、8月でも寒いからだ。

ちょろっと外を見て、早々に部屋に引っ込むことにした。

新七合目御来光館から外界を眺めたところ。

はるか下に新六合目宝永山荘の屋根がうっすらと見える。

まだこの時間でもポツポツと登っている人が見える。この時間に登っている人たちは、このあとどういうスケジュールなのだろう?遅い到着でこの山小屋にたどり着くのか、それともゆっくりゆっくりと登り続け、翌朝までに山頂に着けばいいやと思っているのか。

いや、でもこのまま登り続けたら、深夜に山頂に着いてしまう。ご来光を待ちわびるとしても、標高3,700メートル以上のところで一晩過ごすのはかなり大変だ。

山の上方面を見上げたところ。

丘の上のように見えるところに山小屋が見える。あれが八合目の池田館。

そしてよく見ると、万年雪山荘の下に何やら明かりが灯っている場所がある。これも山小屋で、元祖七合目山口山荘。

今僕らがいる場所が「新七合目」だけど、「元祖」との間に「えー、あんなに遠いのー」とぼやきたくなるような標高差が待ち構えている。

でも、このように「次なる目標」が見えているのは、励みになっていい。富士宮ルートのメリットだ。

18:08
部屋に戻る。

僕らの後にまだ相部屋の人がやってくるかもしれない、と思って寝床を隅っこに寄せていたが、どうやらもう来ないっぽい。

それなら、「スペック上では4人部屋」となっているこの空間を、僕ら二人で使わせてもらおう。

とはいっても、ふとんはあくまでも通常サイズのものが2つ並んでいるだけだ。枕が下界基準からすると不当に多く並んでいて、「ここは4人が寝るところですよ」と主張していらっしゃる。

これでもまだ良心的なほうで、もっと本気で客を詰め込む気まんまんな山小屋の場合、枕がもっとコンパクトサイズになる。

山小屋にチェックインしてからわずか45分程度で、もうやることがなくなった。早い、早すぎる。

メシは荷解きした直後にカレーをサクッと食べておしまいだし、館内探検するほどこの山小屋は複雑な構造になっていない。談話室もない。トイレに行って、周囲の風景を見て、もうおしまいだ。

とはいっても、富士登山はご来光を見てナンボ、というイベントなので明日の朝は早い。僕らは朝3時に起きて、身支度のうえ出発する予定にしている。

山頂でご来光を見ようと思ったら、新七合目に宿泊ならば3時起床でも遅い。身支度を終えて2時出発くらいじゃないと間に合わない。でも僕らは、「まあ別に登山途中でご来光を見られればいいよね」と考えていたのでスタートは遅めにした。

忙しいいしをキャッチして込み入った話ができるのは、こういう旅の最中が一番だ。

「これで安心!結婚準備&マナー」という本を買って持ってきたので、寝るまでの間二人でここに書かれている内容について話し合う。

いし側の実家にご挨拶に伺ったのがこの3日前。さてこれから結婚ですね、という今だからこそ読んでおきたい本だった。しかも、もろもろの段取りを考えたら年内に挙式という展開になりそうだから、なおさらだ。あと4ヶ月以内だぞ、おい。

しかもいしは、

「私、記念日とか覚えるのが苦手なんですよね。だから私の誕生日と結婚式の日を一緒にしませんか?それだと、2つ覚えなくていいですし、これからのお祝いも1回で済みますし」

なんて不穏なことを仰ってる。いや、それだと4ヶ月どころかもっと期間短縮になるんですがどうすればいいのやら。

この本を買ったのは、お作法に則って結婚式に辿り着こう、という理由ではない。結納も両家顔合わせもないまま、いきなりぶっつけ本番で結婚式を行うつもりなので、何をお作法通りにやって、何を省略するのかを把握しておきたいからだ。つまり、どちらかというと「省くものを検討するための本」として活用した。

本を読めば読むほど、結婚という行事はいろいろな縁起やいわれの集合体だ。僕らは「いやー、今どきの結婚なんでざっくばらんに済ませればいいっすよ」と思っていても、それを良しとしない家族親族がいるかもしれない。周辺への気遣いは必要なので、そのためには「原理原則論としてのお作法」を知っておきたかった。

実際この本を読んで「へえー、そうなのか!」と感心した内容はたくさんあった。具体的には何一つ覚えていないけど。いざ結婚してしまうと、そういうお作法はスポーンと頭から抜けてしまう。終わったことなので。

20:58
21時には話を切り上げて寝よう、ということにしていたので、これにて就寝準備に入る。

寝る前にトイレに行っておこう。ソロリソロリとはしごを降り、トイレに向かう。

周囲はほぼ寝静まったようだ。しかし、ところどころ閉じられたカーテンから明かりが漏れている。山にやってきたからといって、いきなり19時台20時台に寝るのは難しいのだろう。

この廊下写真を見たらわかるように、カーテンが閉まっていない部屋もある。つまりそこは宿泊客がゼロ、ということを意味している。

オーバーユースが懸念されている富士山だけど、月曜日夜泊だとこのように山小屋にも空きがあるということにびっくりした。富士山に登るなら、平日に限る。

広間はすっかり明かりが消えていた。

食事用に使っていた長机は折りたたまれて壁際に片付けられていた。わざわざ丁寧だ。

奥に明かりが灯っている部屋があり、そこには山小屋のスタッフさんが控えていた。夜中の登山客にも物販を対応するために24時間体制なのだろう。

とはいっても山小屋の軒先から中を見るとこんな感じ。

外は真っ暗。

営業しているように見えないけれど、ちゃんと営業中だ。

僕は週末の富士登山しか経験がないので、道中の山小屋というのは真夜中でも賑わっているイメージがあった。山小屋で実際に買い物をする人がどれほどいるかは不明だけど、少なくとも登山客の多くが山小屋前で休憩を取る。だから山小屋の周辺はいつもワイワイしている印象だった。

それが今日は、すっかり静かだ。へえ、富士山ってこういう時もあるのか。

おそらく、あと数時間もすれば「夜から登り始めて、朝ご来光を見て下山する」弾丸登山の人たちが登ってくるはずだ。そうなると、少しは小屋の前も賑やかになるのだろう。僕自身、過去の富士登山はだいたい21時~22時位に五合目を出発している。

(つづく)

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