11:37
いよいよ、ホテルおおるりに潜入。
佐野SAで乗り換えたバスは、ここが終着地らしい。載っていたお客さん・・・漢字変換を間違えた、乗っていたお客さんは全員ここで下車した。
なんだか、荷物として運ばれているような感覚になるんだよな。湯けむり号って。こういうシステマチックな送客というものにこっちが慣れていないので。
うわっ。
トラがお出迎え。
剥製か?いや、剥製がこんな子供でも触れるような場所にいるわけがない。単なる人形だろう。なぜこんなのがホテルの入口にいるんだ?
「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」
の格言を思い出した。これから僕らが入るのは、虎穴だ。じゃあ、虎児っていうのは何だろう?それは、一泊二食で6,000円もしない激安宿の謎、そのものだろう。
11:41
フロントで、宿帳を書く。
さすがにこの時間なので、部屋には入らせてもらえない。チェックイン時間まで、ひたすら待機だ。
・・・と思ったら、もう部屋に入ってよい、とのこと。おお、それはラッキー!平日泊なので、こういう融通が利くのだろう。聞いたことあるか?正午前に部屋には入れる宿、だなんて。
チェックイン時、フロントで案内の紙をもらった。
夕食は18時から19時10分。70分限定だ。
朝食は7時から7時45分。こっちはよりタイトで、45分制となっている。
繁忙時は、時間を区切って、お客さんを2回転、3回転と入れ替え制にしているらしい。山小屋のようだけど、むしろその方がありがたい。自由入退場のバイキングだと、混雑していて空席を探すのに難儀するからだ。
あと、この宿の夕食は飲み放題だ。時間を区切らないと、飲んべえが居座ってしまう。それにしても70分制で飲み放題ともなると、ずいぶん慌ただしい。度のきついヤツをとりあえず持ってきてくれ!ということになりそうだ。
悠長に第三のビールなんて飲んでたら、心地よくなる前に時間切れになってしまう。なにしろ居酒屋とは違って、自分で料理をとってこないといけないバイキングだから。
チェックアウトは9時半まで。ちょっと面白いのが、「お会計は8:30からです」と書かれていることだ。多くの宿では、チェックアウト時間というのは「デッドライン」を意味するものであり、それより前の時間であれば早朝でも構わないものだ。しかしここは、「1時間しか、チェックアウトの手続き時間はありませんよ」と宣言している。
こういうところも、コストカットなのだろう。
ロビーの窓際に、浴衣コーナーがあった。自分のサイズに合った浴衣を部屋に持っていってくれ、というわけだ。
この宿に限らず、最近じゃあちこちの宿でこの制度が導入されている。身長が高い僕にとっては、ありがたいことだ。毎度毎度、仲居さんに
「あら、お客さんは大きいですね・・・浴衣の『中』じゃ小さいでしょうから、『大』を持ってきますね」
と言われ、換えの浴衣が届けられるまで落ち着かないまま待機、という儀式があるのだkど、それが省略されるのはいい。
宿からしても、そういうやりとりを省略できるので、いい。これぞまさに、win-winではないか。もういっそのこと、全部の宿でこの制度を導入してくれ。
宿としては「お客様に浴衣を部屋まで運ばせるのは忍びない」と思ったのかもしれない。その代わりとしてかなんなのか、女性向け浴衣にはカラフルな「ファッション浴衣」が用意されていた。ピンク、青、緑、黄色と色とりどりだ。
これで、女性客には「自ら浴衣を選ぶ楽しみ」が得られる。
しかし、さすがに全サイズの浴衣を用意するには、コストがかかると判断したのだろう。「Mサイズのみとなります!」という注釈が付けられていた。あらら。
とはいえ、「Mサイズ」の守備範囲は「身長155cm~165cm」と書かれている。これなら、大多数の女性が対象になりそうだ。・・・浴衣って、身長はどうにでもなるのだな。
なお、ファッション浴衣以外の普通の浴衣は、男女兼用だ。そういえば浴衣ってユニセックスなデザインだよな。
・・・ということは、女性向けのファッション浴衣を僕が着てもおかしくはない、ということか。ごくり。
やめろやめろ、カラフルな浴衣を着て、館内をがに股で闊歩していたら従業員に取り押さえられるぞ。目立つったらありゃしない。
フロント前に大きなロビー。
日によっては、部屋に入れる時間まで待機する人でここがごった返すのかもしれない。
突き当たりには売店があるのだけど、この時間はシャッターが閉まっていた。儲からない時間に営業をするだけコストがかかる。夕方までお店は開かないらしい。このあたりも、潔い。
館内案内図。
本館と別館がある、という時点でワクワクするよな。しかも渡り廊下付きだぜ?この旅館の発展が凝縮されているような感じじゃないか。おっと、地下2階まである、というのも楽しさ要素アップだ。
増改築の妙、というのは大きめの病院でも見られる。本館、新館、別館、2号館・・・それぞれが絶妙に絡み合う。隣の建物にこの階からだと行けるけど、この階からだと行けない、みたいな造りがあったりする。
しかし、さすがに病院の場合、魔窟ともいえるような複雑な造りにはなっていない。廊下も広い。そもそも、入院していない部外者が「探検」と称してうろついていい場所ではない。警備員室のごとく立ち塞がるナースステーションで、看護師に呼び止められるのがオチだ。
案内板に、いろいろな情報が張り出されいてる。
一瞬「まじで!?」と思ったのが、「とて焼きプレゼント」と書いてある張り紙だった。
塩原温泉のご当地B級グルメ「とて焼き」は、以前ここを訪れた際に食べ歩いて面白かったものだ。無料プレゼントなら大歓迎だ。もっと食べ歩きをしたい。
・・・と思ったら、さすがにそんな都合の良い話はなく、連泊したお客様向けのサービスだった。そりゃそうだ。
塩原温泉ホテルがリニューアルオープンしましたよ、という張り紙。
塩原温泉ホテルといえば、「湯けむり号」が最初に停車した場所だ。今回の宿探しの際に、このホテルも検討対象にしたのだけど、候補から外した経緯がある。というのも、塩原温泉ホテルは「ハーフバイキング」だったからだ。なにがどう「ハーフ」なのかよくわからないが、たぶんメインディッシュはお決まりのものがあって、あとのお惣菜的なものやデザートなどは自分でバイキング形式で取ってきてくれ、というものなのだろう。
なんだか「ハーフ」だと悔しいので、敢えて「フル」なバイキングであるこっち(ホテルおおるり)を選んだ。
なお、塩原温泉ホテルはアルコールが有料、ホテルおおるりは飲み放題だ。こういう細かい違いも、ある。僕はアルコールを飲まないので、飲み放題についてはどっちでも良いのだけど、折角だからアルコールも飲み放題の宿の方がいい。行き着くところまでいっちゃいたいんだよね、こうなったら。
なお、2019年春の時点では、おおるりグループ全般でアルコール飲み放題の制度は終了してしまったようだ。ワンドリンクは付くけど、二杯目からは有料、という料金プランをどの宿も採用しているっぽい。なんだそれは残念、と思ったけど、二杯目以降のアルコールは一杯100円だというから、相変わらず愉快だ。
おおるりの名物といえば大衆演劇を無料で見られる、ということだそうだ。大衆演劇なるものをこれまでの人生で見たことがないので、どんなものか興味がある。お金を払ってまで体験したいとは思わないけれど、無料ならばありがたく拝見したい。
二部構成になっっているようで、人情芝居で1時間、歌謡・舞踏ショーで1時間とたっぷり2時間のステージだった。すげえ、これを無料で見せてくれるのか。
なぜおおるりグループがこういうお芝居を見せてくれるのかというと、話は簡単で「帰りのバスが整うまで、お客さんを引き留める」ためなのだろう。都心からお客さんを運んできたバスが昼前に温泉地に到着するので、そのバスが折り返しで客を乗せて都心に連れて帰ることになる。その場つなぎだ。
だとしても、せめて500円くらいはお金をとってもバチはあたらないと思うけど、一体このグループの銭勘定ってどうなっているんだろう??何から何まですごすぎる。
すごいといえば、帰りの時間を現時点では全く知らされていない、ということだ。スゲー不安なんですけど。フロントの人に聞いてみたけど、「わかりません」と言われてしまった。マジか、そんなことあるんか。
とりあえず明日は、9時頃にバスがやってくるので、それに乗ってお芝居の会場に行ってくれという。その後は別途指示があるのを待て、と。えー、マジで?
「500円をお芝居に払ってもバチは当たらないだろう」とさっき言ったけど、もうこれは「イヤでもお芝居を観ろ」という構図なのだな。
劇団のポスターが貼ってあった。どうやら、明日の観劇はこの劇団によるものらしい。
ええと、劇団名は何だ?ややこしいぞ。
「座夢舞倶羅」
・・・読めない。キラキラネーム状態だ。
小さく書かれたルビを見て、ようやく状況を理解した。ああ!「ザ・ゆめまくら」と読むのか!
びっくりだぜ、江戸時代風の装いをした和装の女性やチョンマゲの男性がいるのに、「ザ」というイングリッシュの定冠詞だもの。やるなあ、名前からして何でもあり状態だ。
しかも、ひときわ大きく写っている座長がすごい。髪の毛、金&赤髪ですやん。ロン毛ですやん。しかも、カラコンが入って、右目のところにヒビ割れのような線が入っている。大槻ケンヂ?と思ってしまったが、違う、最近の大槻ケンヂはこんなメイクはしていない。やるなあ。
しかも名前がすごい。「寿鳳 炎蒋」だって。「じゅおう・えんしょう」と読むらしい。
つよい!(確信)
これ以上ないくらいカブきまくっている。いやー、驚いた。
一方で、左下に写っている「大座長」は、至って普通のお名前と身なりだ。「座長」と「大座長」というのがいる、というのが大衆演芸初心者の僕にはよくわからない世界なのだが、何にせよ非日常感バリバリで、これはええもん見させてもらえそうだ。
ただ、帰る時間は教えてくれよ、マジで。不安になるじゃないか。帰る時間もさることながら、お芝居を観た後の段取りとか、もろもろ。お昼ご飯はどうするの、とか気になることがいくつもある。
コインロッカー。
温泉旅館のロビーにコインロッカーが並ぶ、というのは実はありそうであまり見ない光景だと思う。普通、宿泊客の荷物はフロントにてお預かりするからだ。
コインロッカーがある、ということは、フロントでは荷物は預かりません宣言なのかもしれない。コストカットですから。
その真偽のほどは確認していないからわからないけど、バス到着から部屋に入れる時間、チェックアウトから帰りのバスまでの時間、それぞれにタイムラグがあるのでこういうロッカーが必要なのだろう。
それはともかく、ロッカー脇にドトールのコーヒー自販機があった。へー、こういうのがあるのか。
中には、誰かが取りそびれたコーヒーカップが取り残されていた。おーい、忘れ物ですよ。
誰だよ、コーヒー買っておきながら、わずか数十秒の間にうっかりそのことを忘れてしまった人は。
(つづく)
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