実りの大地【北海道ハタケ仕事3】

屋台

銀河庭園をあとにして、えにわマルシェをやっている会場に戻る。お昼ごはんを屋台で食べよう、ということを考えているからだ。さすがに「たこ焼き」とか「スーパーボールすくい」のような屋台ではなく、ジンギスカンとか地ビールとか、北海道感がある魅力的な売り物が多い。お店自体は少ないものの、それでも目移りしてしまうくらいだ。

昔ながらの屋台って、最近じゃ縁日とかベタなイベントでしかあんまり見かけなくなったな。数年前まで、僕は「昔ながらの屋台というのは、発想が昭和の時代で止まってしまっていて、今の食文化や消費者のニーズを捉えていない。既得権益に守られていて、意欲的な新規参入屋台が阻まれているのではないか?」と批判的なスタンスだった。しかし最近じゃすっかりその「意欲的な新規屋台」が増えてきて、むしろ「昔ながら」というものの希少価値が上がってきている気がする。昔なんか「りんごあめ」なんて食べたいとは思わなかったけど、今だったらむしろ食べたい気持ちが沸いてきている。

もっとも、りんごあめは僕は食べられない食べ物のひとつだが。前歯が差し歯なので、「かじりつく系」の料理はアウト。焼きとうもろこしもそう。無念。

屋台に並ぶ人

「THE BEEF」と名乗る屋台。「牛」という漢字が大きく描かれている。ステーキ丼やら牛すじ煮込みが売られているようだ。

煮込み

牛すじ煮込み!それは良い提案だ。残量わずかなところを、すべりこみで購入する。

まさか北海道で、屋台で、牛すじ煮込みを食べることになるとは思わなかった。

麦ジュースと煮込み

この日のお昼ご飯。牛すじ煮込みと、串焼きと、小樽ビール!うひょう、飲むぞー。今日ばっかりは禁を犯してでも飲むぞー。

ただし、ビールのラベルをよく読むと「0.00%」と書いてあるのだけどな。

しかし、ノンアルコールビールにしてはあわ立ちがよく、なんだか楽しい気持ちになれた。

もしここで一杯ひっかけていたら、ハタケ仕事なんてやってられっか!って状態になってしまうだろう。そもそも、美味美食がしこたまあるのが北海道。本格的に飲むともなれば、酒肴に困ることは無い。酒肴があるから飲む、酒があるから酒肴が追加になる。きりがない。

あ、それ以前にハタケに行くための車を運転できなくなるな。飲酒運転反対!

むしろ、こんな広大な大地だからこそ、飲酒運転は怖い。油断しまくって、酔った勢いもあってバーンとアクセルを踏んでしまいそうだ。逆説的だけど、住宅街の中で飲酒運転をしたほうがむしろ緊張感があって運転が慎重になるのではないか、と思ってしまう。どっちにせよお酒を飲んだらハンドル持っちゃ駄目だけど。

豆畑マメヒコ

食事を済ませて一息ついたところでハタケに向かう。

おや、今日はハタケ前にある無人販売所の品揃えが豊富だ。

無人販売所の売り物

置いてあったのは、たまねぎ、じゃがいも、レッドムーン(じゃがいもの品種のひとつ)、枝豆、ズッキーニ、にんじん、かぼちゃだった。

我々が収穫していないものも含まれている。ここの品揃えはマメヒコのスタッフがやっているのか、それともこのハタケを貸してくれている地主の人がやっているのかはよくわからない。

「おー、いいなあ」

参加者一同、しげしげと眺める。旅の思い出に、ということで土産として買って帰りたい気もするが、さすがにじゃがいもをゴロゴロと抱えて飛行機に乗るのはいやなのでやめておいた。そういえば昨日、形がいびつなにんじんをもらったことだし。

カボチャって白いものもあるんだな。まるでメロンみたいだ。生ハムを添えて食べてみたい。

日本野鳥を守る会公認長靴

今日から参加する人もいたので、新千歳空港でピックアップした。お店をやっている都合上、土日両方とも休むことができないんですよぉー、と言っている。それでも北海道にわざわざやってくるのだから驚くしあきれる。なんというフットワークの軽さなんだ!

参加者の中から、「作業に入る前に記念写真を撮っておきたい」というリクエストがあったので、ハタケ前で全員集合の写真を撮った。確かに、作業が終わったらみんな三々五々着替えちゃったり、みんなをかき集めてくるのが大変だ。しかもお召し物が汚れてたりして、特に女性からしてみたらうれしくない。なるほどなるほど。

男的発想だと、どろんこになったあとに、「ほら見て!僕らこんなに汗だくで頑張ったんです!」という「汚れっぷり」を記念に残したいと思う。しかし女性からしてみたらとんでもない話だろうな。

で、写真を撮っていたのだが、よく見ると足元がみんな似通っている。履いている長靴が色違いのおそろいだからだ。同じ靴を履いている人を並べてみたら、なんと9名もいた。この日参加していたのは子供を除くと15名(マメヒコスタッフ含む)。9/15というのは恐るべき比率だ。もちろん、「みんな同じ長靴を履いていこうね!約束だよ!」なんて示し合わせたわけではない。口コミでこの長靴のよさが伝わり、あっという間に普及した結果だ。

この長靴はあの「日本野鳥の会」が作ったものだ。参加者の中に「お父さんが日本野鳥の会に勤めています」という人がいたのも事実だが、それをさっぴいてもここまで人気があるのは、「コンパクトに畳むことができる」からだ。使わない時はぺったんこなのだが、履くときはひざ下までずり上げることができる構造になっている。北海道まで飛行機で移動する我々の場合、「荷物にすっきり収まる長靴」というのは必須ともいえる条件だった。硬くで大きな長靴を手荷物にするのはイヤだし、かといって東京出発時点からずっと長靴を履いていくというのもイヤだ。そんなわけでハタケ遠足組には大流行していたようだ。

ふんをするブルー1

今日もブルーは外を闊歩していた。家の中から逃げ出したのではなく、ご主人様公認で出歩くことを許されていたようだ。

ハタケのすみっこに座り込み、なにやら遠い目をしているので何事かと思って様子を観察していたら、どうやらトイレだったようだ。すいませんガン見しちゃいました。

ふんをするブルー2
ふんをするブルー3

猫が用を済ませたのちに、そこに土をかけるというしぐさをするのはもちろん知っている。たとえ地面がアスファルトでもそういうことをやるのだから、面白い習性だ。
猫なりのたしなみなんだと思うが、「お前それ無意味やで」と伝えてやったら猫はどんな顔をするのだろうか?

感心させられるのは、実際に土の上で用を足したのち、「見せかけのポーズ」だけでなくちゃんと排泄物に土をかぶせることだ。しかも、やっぱり本当に土がかけられる喜びをかみしめているのか、結構念入りにかぶせていた。

用を済ませたら、あたりをきょろきょろして、遠目でカメラ片手で観察している僕に気づいて、気まずそうな顔をして立ち去る・・・という流れを想定したが、全く周囲に気を配ることもなくのんびりとどこかへ立ち去っていった。余裕だな。やっぱり、「個室にこもらないと用がたせない」という人間というのが特殊なんだと思う。排泄することに恥じらいがあるんだから。

オランウータンやチンパンジーみたいに、人間に近い生き物に「排泄するということは恥ずかしいことだ」という文化を植え込ませることはできるだろうか?と猫を見ながら思った。

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