実りの大地【北海道ハタケ仕事3】

ハタケ到着

13:29
時間がおしていたので、慌ててハタケに向かう。さすがにお魚が7人分14匹調理されるのには時間がかかった。かといってここでアクセルをブーンと踏むと、物陰からパトカーが出てきて「左によりなさーい」と言われるのは目に見えている。こういうときこそ、安全運転だ。何しろ北海道はネズミ捕りし放題。信号なし・まっすぐな道だらけ。だからこそ、慎重に運転しないとやばい。過去一度、北海道警にスピード違反でお世話になったことがある僕だから、なおさらだ。

「たいへーん、ちこくちこくー」

と言いながら、食パンを口に咥えつつハタケに向かう。

2ヶ月ぶりのハタケは、7月と違った様子になっていた。7月はあれほど青々と茂っていた植物だったが、既に更地になっているところがある。われわれの到着を待たずして、既に収穫が済んでしまったらしい。植物だって生き物だ。遠足という人間様の都合にあわせて成長したり実ったりというわけにはいかない。ハタケにおいて一番えらいのは、人ではない。お天道様だ。

それにしても植物たちは疾走していったな。5月に種を蒔き、7月には大いに育ち、そしてもう刈り取られている。わずか4ヶ月だ。1年は12ヶ月、これだったら年に3回収穫ができてお得だね!と言いたいところだが、これから北海道は長い冬に入る。お天道様の力は有限だ、一年中照り付けてなんてくれない。これくらいの短時間で収穫できる作物でないと、とてもじゃないが農業としてはやっていけないのだろう。

そういえば今頃気が付いたが、随分風が冷たくなってきている。9月末だけど、東京あたりと比べると一ヶ月くらい秋が早いようだ。

大豆

これは大豆かな?

枝豆の形をしたさやが茶色くなっている。大豆って、コロコロした豆の状態でしか普段お目にかからないので、こうやってさやにはいっているのを見るとあらためて感心させられる。

種まきから収穫まで3回もハタケを訪れておきながら、「大豆かな?」みたいなことを口走っている時点で俺は一体何をやってきたんだ、と驚きあきれる。みんなで手分けをしてあれこれやっていたので、このハタケの全容というのはよく理解できていなかった。ハタケのここにこれを植えます、今日はこの作業を●名でやります、といった手取り足取りのペーパーなんて当然用意されていなかったし。

わな

13:31
とうきび畑のそばには、箱型の網が置いてあった。害獣用のワナだという。

7月に一生懸命とうきび畑に防獣ネットを張り巡らしていたが、それだけでは物足りないということで積極的に駆除する方法に出たらしい。実際にこのワナで憐れな動物が捕まったかどうかは、聞いたんだけど忘れた。

こんなだだっ広いハタケが広がっている場所なのに、害獣なんてやってくるんですか?と聞いたら、畑の境界線にある防風林が茂みになっていて、それが細長く伸びているので、防風林づたいに獣があちこち移動するらしい。だから、うまそうな農作物があれば、遠方からでも獣がお出ましする可能性があり、油断がならないとか。もうこうなったら、北海道に住む生き物全部がライバル、ということになる。ライバルに食われるかこっちが先に収穫するか。

しかもこの野生のライバルたちのけしからんのは、「一番おいしいところだけをかじっていく」ことだという。ヤツらには「収穫して出荷する」なんて発想がそもそもないし、馬鹿だから「目の前においしいのがあるんだったらそれを食べて何が悪い?」という発想だ。あんまりおいしくない部分まで含めて食べればたくさん食べられるのに。・・・ああそうか、そんな悠長なことをいっていたら、熟しすぎて腐ったり人間様が収穫して遠い土地に持っていってしまうのか。だったら、刹那的にならざるをえない。

ハタケ1

7月、「さすがにやりすぎたか」と僕らだけでなくマメヒコスタッフまでもが考え込んでしまったカボチャ畑。容赦なくせん定して、大きくなりかけたカボチャの実さえもゴミ扱いにし、茎は綱引きのように引っ張られた結果葉っぱが横倒しになり、そりゃあもう悲惨な状況だった。

それがどうだ!2ヶ月経ったら、何事もなかったかのように復活しているぞ!

いや、「何事もなかったかのように」というのは、もともとのカボチャの姿を知らないのでなんともいえないのだが、とにかく「枯れる」ということはなかったようなのでほっと一安心だ。

僕らはあくまでも「お手伝い」であり、良くも悪くも無責任な立場だ。一方、マメヒコはというと儲からないとはいえこれも立派な事業の一つだ。お手伝いがやりたい放題カボチャをせん定した結果、収穫がほとんどなかった・・・なんてことになったら、大変なことだ。まさかこれが原因でお店がつぶれて数十人の店員さんが路頭に迷う、ということはないと思うけど、ボーナスに影響が出たり福利厚生に支障がでたら申し訳が立たない。豊作であるにこしたことはない。

ハタケ2

13:33
と、思ったら、どうだ!カボチャが実ってるぞ!

7月の「やりすぎた感」を身をもって知っている人たちは特に興奮し、「おおお!」と黄色い声を上げている。僕はおっさんなので「ぬおおお!」と茶色い声だけど。

力強い生き物だな、カボチャって。僕がカボチャだったら、あれだけ虐殺ともいえるせん定をされたら、もうすっかり意気消沈してやる気を失って、実なんて付けないと思う。ふてくされて地下にもぐって、イモにでもなってやろうか、なんてグレそうだ。

収穫したカボチャ

13:49
ジェノサイドを乗り切ったカボチャたちが誇らしげに収穫されていく。いくら収穫しても、まだまだ見つかる。本当に成長力がある生き物だ。それにしても種まきから4ヶ月で、ここまで実をつけるなんてなんという駆け足人生。

「実が詰まってるかな?」

と、スイカの品評よろしくポンポンと叩いてみた。・・・が、皮が厚いのでよくわからなかった。

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