いいぞォ、山小屋はいいぞォ【仙丈ヶ岳】

甲府行きのバスが出発するまで残り30分弱。

今回の南アルプス行きはもうこれで終わりだ。北沢峠で、下山後すぐにバスに乗ったこともあって「余韻」が足りない。ここはひとつ、豚汁を作って打ち上げとするしかあるまい。

バス停目の前の東屋に陣取っているので、バスの動向をガン見しながら調理ができる。

意を決して、お湯を沸かし始める。大丈夫、最悪このお湯をじゃばーっと地面に捨てれば、そのまますぐにバスに乗れる。

ここで欲張らずに、「豚汁だけ作ろう」と自省すればいいのに、やるからには在庫一掃セールを、とばかりにアルファ米も作ることにしちゃった。だって、松茸ごはんのアルファ米がザックに入っているんですもの。

作戦はこうだ。

クッカーいっぱいにお湯を沸かす ⇒ お湯の一部をアルファ米に注ぐ ⇒アルファ米が蒸れるまでの間に、残りのお湯に水を足す ⇒ 再沸騰 ⇒豚汁を作る

豚汁を食べている間に、アルファ米が仕上がる。時間差にはなるけれど。

もうかれこれ20年近く使っているんじゃないか?というEPIガスストーブは、そこまで火力が強いわけじゃない。クッカーいっぱいのお湯を沸かすには、それなりの時間がかかる。

松茸ごはんの素にお湯を注いだ時点で、ちょっと時間が押している。というか、お湯を注いでから20分でこのご飯は出来上がる。やべー、20分後なんていったら、バスが出発しちゃうよ。バスの中に松茸ごはんを持ち込むことになる。それは悲しい。高速バスみたいなゆったりしたシートならともかく、路線バスの硬い椅子だし。

10:47
それはともかく、問題は豚汁だ。こればっかりはバスに持ち込めない。そうだとわかっていても、具の量から逆算して、つい水気も多めに作っちゃたよ。どうするんだよこれ。

水道はすぐ近くにあるんだけど、食べ残して捨てるわけにはいかない。「時間内に食べきれなかったら、バスを一本やりすごす」しか手がない。

あと13分しか時間がないのに・・・どうするんだ、これ。しかも、ご丁寧に唐辛子を1本入れちゃった。熱いやら辛いやらで、食べるペースが落ちるっつーの。

10:48
いざ豚汁、という段階になったところで、甲府行きのバスがバス停にやってきた。

うおおお。

バスに乗り込む人、出発時間までバスから出てきてくつろぐ運転手さん。それを見ながら、ひたすら焦るおかでんという三者三様。

路線バスなんだし、定刻どおりの11時にならないと出発しないはずだ。しかし、「もう誰も乗らないっぽいし、そろそろ行くとすっか」と運転手さんが気まぐれを起こさないとも限らない。

じゃあ、運転手に「僕、乗りますから!」と一声かければ話は早いんだが、「アツアツの豚汁を食べている最中で、松茸ごはんもまだ煮えてる最中でして」と事情を説明するのは恥ずかしい。本当に出発する気満々で運転手さんが身構えるまでは、一人孤高の戦いをここで行うことにした。

10:51
アルファ米のほうは10分ちょっとしか時間が経っていないけれど、待ってられないので食べ始める。バスの都合で料理の味が決まる。

まあ、若干芯残っているけれど、奥歯に挟まるほどのレベルではない。うん、これはうまい。

ガッツンガッツン、工事現場の重機のごとく食べる。バスを背景にして。

アッツゥイ松茸ごはんと、アッツゥイ豚汁を食べつつける。見よこの必死の形相。にっこり微笑んでカメラにポーズをキメる余裕がまったくない。

どうしてこうなった。

(つづく)

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