11:36
ここから一気に標高を上げる。
急な坂が続くが、標高が上がったぶんだけみるみる景色が良くなっていく。アメとムチのバランスが大変によろしい。こういう登り坂、好きだぜ。
こういう時はしばらく黙々と標高を稼ぎ、そしておもむろに後ろを振り返るのが楽しい。
ほら山々の稜線が見えてきた。
11:38
標高が上がってくると何が楽しいって、空がグッと濃い青色に光り輝くことだ。
低いところにいると少し霞んだ色の青空も、標高が上がると何の躊躇もなく青い。この先にある宇宙をも予感させる、深い青。
よく考えてほしい、今って6月だぜ?梅雨時で、こんな冬みたいな青空なんだから最高だろ。
鬱蒼と茂った森の中を歩いていると、一体いつまでこの森は続くのだろう?と根気が続かなくなりそうになる。でも、標高が上がってくると青空に向かって歩いている実感があって、早くあの空に近づきたい!というモチベーションに繋がる。
だからどんどん登ることができる。
これこそが標高が高い山を登っているメリットだと思う。
木々にとっては可哀想なことだけど、だんだん枝と葉っぱの密度が減ってくる。そしてその隙間から空と遠くの山々が見えてくるようになる。人間にとっては逆にテンションが上がる時間帯だ。
11:41
いよいよ木々がギブアップをしたようだ。
ついに森という形では樹木が存在しなくなり、草とゴロゴロした岩に覆われた世界に切り替わった。
標高2,400メートルを越えたあたりだろうか?
ここから先は完全に森林限界で、後は山頂まで風光明媚としか言いようのない世界をひたすら歩いて行く。
異次元に来た!という実感がありワクワク感が止まらない。
あの正面に見える丘が山頂だろうか?いや、もっとその奥だろうか?早く確認したい。
11:46
先ほどまでの光景からうってかった景色となっている。
さすが火山だけあって、こんな標高でもダイナミックな森林限界を楽しませてくれる。
しかも、ガチガチの稜線歩きで神経すり減らすようなこともなく、山の中腹でこういう光景が楽しめるというのは嬉しい。だって、ちょっと前までロープウェイに乗ってたんだぞ?わずか2時間弱でこの光景ですよもう。
今いるここは、まだ草が生えている。そして、この先もう少し標高を上げたら、その草さえギブアップして岩肌が露出している。まだまだ変化を楽しませてくれそうだ。チクショウ、楽しいぜ。
ここまでやってくると遮るものは何もない。
だから周囲の山がくっきりと見える。
日光白根山の南側に、雄大なシルエットの山が見えた。
「いいね、あの山の形」
「ここからだと、ひょいっと行けそうだね」
などとみんなで話し合う。稜線がすーっと自分たちがいるところから、目で追うことができるので「このままイケそう」と思えてくるのだった。
そしてこの山、西側斜面はとてもなだらかな高原が広がっているようだった。
「なんだ、日本って隅から隅まで人が住んでいると思ったけど、案外人がいない土地もあるものだね、あんなイイカンジの高原があるのに」
なんて話をする。
後で調べてみたら、この山は「錫が岳」というらしい。標高、2,388メートル。
「楽勝で登れそう」な気がした山だけど、ヤマレコなどで登山記録を調べてみたらかなりキツい山らしい。なんせ、道が整備されておらず、藪こぎをしつつルートファインディングを続けないといけないからだという。あと、近いようで、下界からアプローチするとかなり遠い。「ちょっとついでに立ち寄るわ」なんて口が裂けても言えない山らしい。
ただ、中禅寺湖方面の眺めは絶景とのこと。いいなー、いつか行ける日が来るといいなー。
11:47
か弱くも健気に育っている植物たち。
11:48
上州穂高岳の向こう側にはるか向こう側に谷川岳がうっすらと見える。
谷川岳はまだ雪をまとっているようだった。
天気が良ければ長野県の浅間山も見ることができるらしい。日光白根山がこんなに景色の良い山だとは知らなかった。
11:51
見てよこの山の斜面。
まるで富士山のように急な傾斜が写真に写っている。
これはカメラを傾けて撮影したわけではなく、ちゃんと水平をキープした上で撮影したものだ。
ロープウェイ駅側から日光白根山を見ると、崖でできた山だけど、南側に回り込むとこういう「急だけど、まともな斜面」になっている。この斜面を目指して、西側山腹から南側山腹に登山道はぐるっと迂回しているわけだ。
11:52
森林限界を突破後、エンディング曲が流れる中緩やかに登っていって山頂到着・・・といった淡い期待を抱いてしまったが、実際はまだまだ急な登りが続く。
この山はつづら折れの道は少なく、距離を確保しながら等高線を斜めに、比較的長くまっすぐに突っ切るルートが多い。
そのため、「よっしゃ、ここで一旦休憩しよう」と踏ん切りをつけるポイントを見定めにくく、その結果ハアハア言いながらダラダラとあるき続けることになる。なので、思ったよりもしんどく感じる道だ。
昼前、ということもあり、気温が上がってきた。日陰がなく、地面からの照り返しもある森林限界は体力を消耗する。
(つづく)
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