
13:45
弥陀ヶ池に向けて、山頂からの急降下ルートは続く。
ようやく、尾根のような場所に出て道幅が広くなったのでちょっと一安心。
そして、足元だけでなく周囲を見渡す余裕も出てきた。いやぁ、絶景だ。
まるで、ハンググライダーからの眺めのようだ。このまま強い風が吹いたら、ふわっと浮き上がるんじゃないか?空高く舞い上がるんじゃないか?と思える景色。

13:46
とかいいつつ、油断大敵。
傾斜は相変わらずキツい。見ろ、この直滑降。
登山は下りがキツい、というのをイヤというほど思い知らせてくれる。
登りは心肺機能が試され、下りは足の筋力が試される。
登りで既に筋力を使い切っている人は、ここで膝がガクガクしてくる。足の筋肉が体のバランスをとっていられないんだ。
一方、下界からは高校生くらいの男連中が登ってきていて、途中すれ違ったのだけど「しんどい、しんどい」とぼやきながらもすいすいと登っていく。
「山頂、まだですか?」
なんて僕らに聞いてくるくらいだから、本当にしんどいんだと思う。でもその割にはグイグイ登っていく。容赦なく登っていく。なんだこいつら。いや、こいつら、というか若いっていうのはこういうものなんだな。
「自分の体力の衰え」などはさして気にならないものの、こうやって若い人のパワーを見ると「昔はこういうのが当たり前だったのか!?」と現状との違いに驚く。

13:56
つくづく、このルートを登りの際に利用しなくてよかったと思う。
見てよこの急な坂。これを一気に登るとなると、げっそりですよ。
写真にはオレンジ色の上着を着たよこさんが写っているが、膝に片手を置き、もう片方の手は登山道と自然との境界線用に引っ張ってあるロープに手を伸ばしている。かなり疲れが溜まってきているのがこの姿勢から伺える。

14:03
おかしいな、さっき「眺めがいい」と言ってからかれこれ15分経つのに、まだ弥陀ヶ池が遠くに見える。下っても下っても、まだ下りきらないという錯覚に陥る。

14:05
ようやく、シャクナゲの群生が登山道脇に見えてきた。植生が戻ってきた。森林限界の極楽はそろそろ終わりだ。

14:09
弥陀ヶ池。神秘的、と形容するのは安直だけど、池の底までしっかりと見えるので心が洗われる。
魚は・・・たぶんいないよな?川がないから、ここに生息しようがない。でも、誰か昔の釣り人が放流して、今でも生息しています、なんてことがあるかもしれない。
この池は、湖畔の水上に木道が設けられているのが面白い。この木道を進んでいくと、金精峠側の登山口につながっている。
あと、湖畔の砂浜に人が立ち入ることができるようで、人影がわずかに見ることができた。どうやら女性二人のようで、一人が湖畔に少し足を踏み入れ、そこでバンザイをしている光景をもう一人が撮影をしていた。映え、を狙うなら随分いい写真が撮れそうだ。

14:21
鞍部、と呼ばれるところまで下りてきた。山頂からの道は一旦ここで一休み。
ここはいろいろな道の分岐点になっている。
五色沼・弥陀ヶ池方面への道、座禅山経由でロープウェイ駅行きの道、座禅山を経由しないでロープウェイ駅行きの道、そして我々が歩いてきた山頂への道。
先ほどから神秘的な佇まいを見せつけてくれている弥陀ヶ池だけど、立ち寄るのはやめにした。みんな疲弊していて、とてもじゃないけど「ここから標高で40メートルちょっと下がるところに行くよ」とは言えなかったからだ。またここに戻ってこないといけないとなると、誰も乗り気にはならないだろう。
ただそのかわり、印象的な噴火口を見せていた座禅山ルートは行かせてもらおうと思う。若干大回りにはなるけれど。噴火口、みたいじゃん?
「さっき、高いところから見た」と言われればそれまでだけど。
しかし、鞍部から見ると、座禅山方面のルートはちょっと登りがあるようだ。「やめようよ」と静止されないように、こっそりと「下山口はこっちだ!」と伝えておく。

14:28
ということで、右は座禅山コース、左は座禅山を経由しないコース。
どう見ても左の方がラクそうな道なんだけど、許せ。

14:30
座禅山コースに向かった我々。
背後に草津白根山を見上げることができるような位置までやってきた。
先ほどまでは急降下中で、こんな全体像を見ることはできなかった。そう思えば、随分下ってきたものだな。

14:34
「座禅山、まだ?」
「おかしいなあ、地図上だとすぐのはずなんだけど」
今更ながらの上り坂にみんな疲れ果てながらの問いに、僕も疲れつつ焦りつつ、地図を確認する。
そうやって歩いていたら、「座禅山火口」という看板が見えてきた。
え、ここ?
もっと、ババーンと噴火口の縁に立って、噴火口を見下ろして「おおぅ」と驚くつもりだったのに。
木々に囲まれていて、普通だった。

14:35
あー、言われてみると、確かにここだけくぼんでいるような気がする。
そうか、噴火口イコール荒涼とした大地、と勝手に思い込んでいたけれど、標高が低いところだと木が生い茂るんだな。
せいぜい目の前に、まだ溶け切っていない雪がある程度だ。
もう少しだけ火口のへりに近づけるようだが、僕を含めて疲れが顔に色濃く出ていたので、やめにした。どうせ、緑に覆われた窪地があるだけだろうし。
(つづく)
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