森林限界突破の恍惚【日光白根山】

11:48
錫ヶ岳の稜線から先は雲海が広がっていた。

おそらく雲海の下には関東平野が広がっているのだろう。

摩天楼とも言われるような湾岸エリアのタワーマンションや東京タワー、東京スカイツリー。全ての科学技術の結集がこの雲海の下に隠れてしまっている。

今、眼下に見えるのは人間の文明の証ではなく、何万年何十万年と続く自然だけだ。

遠くに見える山々はおそらく奥武蔵や奥多摩山系だ。

よく目を凝らすと、うっすらと富士山が見えた。

東京からでも富士山を見ることはできるが、それは冬の空気が澄んでいるときだけだ。

6月のような湿気が多い時期は空気が霞んで、東京から富士山を見ることは殆どできない。

しかし東京からはるかに北に位置するこの日光白根山で、富士山の姿を眺めることができる不思議さよ。

11:58
それもこれも今日はびっくりするぐらいの快晴だからだ。

丸沼スキー場に到着した時はガスに覆われていて、こんなに晴れた天気での登山になるとは予想していなかった。

だからすごく今この空間を歩いていることが嬉しいしワクワクが止まらない。

ただその一方で、太陽の光はますます力強さを増し、ここまでの登り道で疲労を蓄積させている我々に厳しい体力浪費を要求してきた。

12:02
山肌が黄色いところがある。それは遠くから見ると硫黄が析出したように見える。

火山性の山だから当然そういうこともあるよね、と思ったが、近づいてみるとこのエリアだけ草が生えていた。その草が遠目では黄色っぽく見えたというわけだ。

なぜこの辺りだけ草が生えているのだろう?ちょうどここが谷間になっていて、風による影響を受けにくい場所だからだろう。

12:05
まるで富士山の登山道のような砂利道を、一歩一歩登っていく。みんな一様に足取りが重い。

12:15
このあたりから一気に傾斜を直登するルートになる。

草が生えているから黄色いと思っていたけど、実際に黄色い岩もあった。

岩も黄色い!やっぱりこれは硫黄だ!

・・・いや、そんなことがあるものか。こんな硫黄の塊が石としてゴロンと転がっていたら、はるか昔に採取されてしまったはずだ。

近づいてよく見ると、黄色く見えるのはまだら模様だった。周囲の岩と同じ色の岩肌に、黄色い何かがまだらになっている。それが「苔が岩肌に付着した」ものなのか、それとも「岩の中に硫黄成分が含まれている」のかはよくわからなかった。

12:16
正面に何か白い棒が立っているのが見える。

立ち枯れ木のようには見えないので何かの標識だ。

標識ということは、あそこが山頂だろうか?・・・いや、山頂にしてはおかしい。白い棒の周辺にもっと標高が高そうな場所がある。

「山頂まであと10分」みたいな標識が立っているのかもしれない。だとすればがっかりだ、「えー、まだ先があるの!?」と思ってしまうから。

先ほどから僕は、一緒に歩いてる仲間たちに「もうすぐ山頂だよ、あともう少しだよ」と繰り返し伝えて発奮してもらっている。立場的にそろそろ山頂に着いてくれないと、彼らのモチベーションが下がるし僕が嘘つきになってしまう。

12:16
とはいってもこのあたりの登りはかなり急だ。

山というのは往々にして山頂直前はきつい登りになることがある。この山もきっとそうなんだと思いたい。つまりここが山頂目前である、と!

先ほどから「期待したい」だとか「思いたい」という推測でものを語っていることが多い。

本来であれば地図をしっかり読み込んで、登山道と等高線の位置を把握さえすれば自分がどこにいるかはわかる。つまり、それをやっていない、といことだ。

分岐が頻繁にあって道迷いしやすい山ならともかく、こういう「ほぼ一本道で、よく整備された山で、人が登山道をよく歩いている」ならばゴリゴリに読図するということはしない。気になるのは、標準コースタイムのほうだ。

12:20
急坂を登り切ると、そこは野球場のような砂地の広場があった。

おそらく、ここは噴火口だった場所の一つだ。へええ、こうやって火山は爆発するのか。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください