森林限界突破の恍惚【日光白根山】

部屋のテーブルに、こんなチケットが置いてあった。

おみやげ応援キャンペーン
お土産4000円以上ご購入で500円割引になります。宿泊滞在中限定

ほほう、500円割引か。

僕はこういう挑発を受けると、ついソワソワしてしまう。買うつもりがなかったとしても、なんだか落ち着かなくなる。

でも、さすがにお土産4,000円はハードルが高いな。職場へのお土産、御近所さんへのお土産、家族や親戚へのお土産・・・とたくさん買う人でない限り、これはちょっと厳しい。

1,000円以上ご購入で100円引き、だったら「ついうっかり」買ってしまったと思う。でもこれだったら宿側としては単に1割引にしただけになっちゃうから、メリットが薄いか。

17:10
お風呂に向かう。

いいよな、この時間。夕ご飯までまだ余裕があるなか、「もう今日は終わりだ」感が出てくる瞬間だ。旅の移動を終え、あとはダラっと風呂に入り、ご飯を食べ、部屋でくつろぐだけだ。家にいないので、家事もないテレビも敢えて見ない、もちろん外出して買い物をするということもない。

夕食前のお風呂っていうのが、最高に「ああ時間の余裕があるな」という染み渡る感情があって、いいもんだ。

そんな感慨に浸っているおかでんさんに朗報です。内湯・外湯ともにいい湯加減です。42.0度。

へー、ちゃんと湯温を測って、ホワイトボードに書いているのか。親切だな。それだけ気を遣っている、ということだ。最初このボードを見たとき、天気予報の今日と明日の最高気温を書いているのかと思った。「42度!?そんな馬鹿な!」って。

17:13
源泉の泉質はちゃんと写真で記録に残しておくんです。写真を撮ってもどうせ記憶に残らないんだけれど。

ええと、含硫酸かるし・・・面倒くさくなった。文字おこしやめ。長いな。スペシャリティコーヒーの名前みたいだ。国名、地名、豆の種類、農園の名前などがずらずらと並んでいるやつ。

しかもこれがラミネート加工されているので、テカってよく見えないんだもう。結構あるんだよな、このパターン。やめて欲しい。

・・・と、「光が反射して写真撮影しづらいのでやめて欲しい」とわがままを言う客。

pHは6.6。弱酸性だ。

これは明らかに間違っている見識だけど、「強酸性とか強アルカリ性って言われると、得した気になるよな」と思う。すまん、僕がいかに小物かがよくわかる見識だ。いつも「得をしたい」という欲にまみれて、卑しく日々過ごしております。

そういう欲に目がくらんだやつは釜茹での刑でもくらえ。

ありがとうございます、喜んで42度の釜茹でになります。せめていいダシでも体から滲み出させて、世の中に微力ながら貢献したいと願う次第であります。

露天風呂。

不思議だよな、白濁したお湯って「結構酸性が強そう」と思ってしまうんだけど、実際はpH6.6。

まあそりゃそうか、バスクリンで「登別カルルス」とか白濁した入浴剤があるけれど、強酸性だなんて聞いたことがないもんな。あと、お前が毎日飲んでる牛乳は強酸性なのか?と言われたら、それは違うし。すまん、認識が甘かった。

18:07
己の小物っぷりと無知に恥じ入りつつ、夕ご飯を食べに行く。

こういうとき、18時ジャストに行くというのはちょっと恥ずかしい。お前どれだけがっついてるんだよ、と思われたくない。18時前に既に食事処に到着しているなんて、もってのほかだ。

かといって、30分遅れとかだと、仲居さんの手間を増やしてしまう。なので、ここは「大人の余裕を見せつつ、大人の常識をわきまえた時間」として指定時刻の5分遅れくらいで、のっしのっしと会場にやってくるのがかっこいい。

と、また小物が何かほざいております。

「畳の間に椅子とテーブルだぞ」

なれない待遇にソワソワしつつ、椅子に座る。時々こういう旅館がある。足腰に支障がある方にとっては快適だろう。

各席には、御献立が印刷されて用意されていた。ちゃんと「二二二号室」と部屋番入だ。しかも、今日の日付と料理長のお名前、さらにはハンコまでついてある。

これは帰宅後に額装するべきものかもしれない。背筋がシャンとする。

しかも、いきなり先付けの料理が「ラ・トマト」だもの。なにその料理。いきなり僕らをビビらせにかかあってるぞ。

しかも、メインは「とちぎ和牛ステーキ(50g)」。これにもビビった。

温泉旅館の会席料理なので、いろいろな料理が出てくる。そのうちの一品なので、肉厚豪快なステーキはいらない。50グラムでちょうどいいと思う。でも、「50グラムでステーキが成り立つ」というのには興味がある。サイコロステーキだろうか?

飲み物のメニューも写真を追っておく。

ノンアルコールビールのオールフリーがあるんどえ、僕はこれをいく。さすがに湯葉とか天ぷらを食べながら、「ゆずジュース」というわけにはいくまい。

お酒が飲める勢は、「奥日光ビール 日光いろは」なるビールを飲んでいた。最近はこの手のご当地ビールが本当に多いな。もちろん奥日光で醸造はされていないと思う。

手前のガラス小鉢が「ラ・トマト」。

思わず、「オウ、トマト!」と声を上げてしまう。

奥にはヤシオマスという栃木県の特産となるニジマスのメスのお造り。

鮎ですよ鮎。6月ですから。

魚一匹まるごとを食べるとき、魚が無念そうな顔をしているときと、食べてほしそうな顔をしているときがある。今回の鮎は、まさに「食べてくれッ!」という顔をしていて大変に結構だ。

一方、シシャモって大抵が無念そうな顔をしていらっしゃる。すまんすまんといいつつ、食べている。

これがとちぎ和牛のステーキ。

なるほど、サイコロステーキではなかった。陶板焼きなので、「50グラム?少ないな!」という印象はまったくない。むしろ、じゅうじゅうと焼ける音と匂いがたちこめて剛性だ。

1枚あたり16グラムくらいか・・・なんて変な計算をしちゃダメだ。

ぱっと見た目は鴨ロースのようだけど、ちゃんと和牛だった。うん、うまい。

この宿はトリプルメインイベントの構成になている。鮎、ステーキ、そしてビーフシチュー。

温泉宿でビーフシチュー?と思うかも知れないけど、いくつかそういう宿を僕は知っている。ビーフシチューって、和風に軸足を向けることもできる万能選手なので、温泉旅館の会席料理に組み込まれてもまったく違和感がない。パンとかなくて充分。白いご飯でいいし、酒のつまみにもなる。

で、白いご飯とお吸い物。

ご飯の上にはしらすが乗っていた。最初からのっている、というのがちょっと珍しい。おひつから自分でご飯をよそう、というスタイルではないからだ。

シラスは無念そうな顔をしているか?・・・いや、顔が小さすぎてわからないや。

最後、マンゴーシャーベットでシメ。

「とちぎ和牛」とか「ヤシオマス」とかご当地感を出してはいるけれど、いずれにせよ奥日光という土地そのもので採れたものではない。ならばもう、開き直って南国フルーツのマンゴーだっていいじゃないか。

この吹っ切れ方が素晴らしい。うん、マンゴーのシャーベットで締めるといいよね。無理して季節はずれのとちおとめ(いちご)を使わなくてもいい。

料理はこの他に天ぷらがあったんだけど、揚げたてが遅れて届けられたので、「それっ、熱々のうちに食べなくちゃ!」とがっついてしまい、写真に残っていない。

(つづく)

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