森林限界突破の恍惚【日光白根山】

09:23
ロープウェイ山頂駅付近に、意図的にガレ場を作っているようなエリアがあったので「なんでだろう?」と不思議だった。

「標高2,000メートルまでロープウェイでイケる、と聞いたのでとりあえずやってきました。登山をするつもりはありません」という人向けに、森林限界突破後の雰囲気を味わってもらおう!という配慮だろうか?と勘ぐったが、よく見ると違った。

あ、コマクサが咲いている!

火山性の小石がゴロゴロ転がっているところのあちこちにピンク色のものがある。近づいてよく見てみるとそれはコマクサだった。なるほど、コマクサ畑をここにわざわざ作ってくれていたんだ。

「登山中にコマクサを発見するぞ!」と意気込んでいたけど、登山開始前に見つけちゃった。

眼前にそびえ立つ日光白根山。

立派な山容だ。すっくとそびえ立つ姿は、いかつくもあり優雅でもある。そして今自分がいるところが、既に日光白根山の山腹であり標高2,000メートルであることを忘れさせる。

この山は、まさに漢字の「山」の字みたいな形をしている。ピークが3つ、ぴょこぴょこと連なっている。そしてこちら側に向けて、山頂直下から深くえぐれた崖がある。

なるほど、こういう山の形だから、登山道はここから正面突破ではなくぐるっと山腹を迂回するのだな。

09:25
あ、チングルマも発見しちゃった。おーい、高山植物を見るつもりだった人がもしいれば、ここでもうお役目終了でいいぞー。

09:26
ロープウェイ山頂駅の隣にある黄色い建物は、レストラン兼売店だ。軒先にソフトクリームの看板が出ている。下山したらソフトクリームを食べたい!

09:30
まだ登山開始じゃないぞ。もう少し出発は待つぞ。

登り始めたら、あとはしんどい時間が続く。なので、ちょっとここで呼吸あわせというか、ビビって足が前に出ないというか、そういう時間を過ごしている。

「天空の足湯」というテラスが新しくできているので様子を見に行った。

ああ!なるほどこれはいい。

崖の上と、崖からせり出すようにテラスが作られていて、そこに足湯が用意されている。

無料で浸かることができるのがありがたい。絶景を愛でつつ、足湯というのは最高じゃないか。山側を見てもいい、麓側を見てもいい。360度素晴らしい景色だ。

09:33
なにせ前方の景色がこれですぜ。なにあの山?ピーンとまっすぐに伸びた稜線が目立つ。

あの稜線を延々と歩くと、楽しいのだろうか、それともしんどいだけなんだろうか。特徴的な山の形なので調べてみたら、「四郎岳」という山だった。

四郎岳、あの稜線を歩けるのかどうか後日地図を確認してみたけど、どうも一般的なルートはなさそうだった。登るとしたら、急な傾斜となっている右肩の方からのようだ。

背後に猫耳の形をした、燧ヶ岳が見える。尾瀬沼の湖畔にある日本百名山のひとつだ。あそこには以前登ったなぁ。

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まだお酒を飲んでいた頃で、それこそ「下山後のビールを美味しく飲むため」ということを大前提に、行程を組み立てていたものだ。

こうやって、当日その場では「うおお!遠くの山が見える!すごい!」と写真を撮りまくる。でもあとになって、「ええと、何の山を撮影したんでしたっけ?」と困ることになる。つまり、ほとんど意味をなしていない。

あとになって記念にもならない、何の山かもわからない写真を何故撮る?

自分にとって写真とは何か、ということを考え直させられる瞬間だ。有限の資源とともに生きる、フィルムカメラの時代じゃありえない写真の浪費。その結果、何をやっているのかシャッターを切りながらわけがわからなくなってきている。飽食の時代ならぬ飽写真の時代。

せめて、写真を撮るときにコンパスと一緒に撮ったほうがいい。でないと、これがどちらを向いて撮影したのか全然わからないから。

「はっはっは、そんなわけでぜんぜん山を特定できませんでした」と笑い話で済ませることもできるけれど、それだと癪なのでちゃんと調べてみましたよ、ええ。

写真右に映っているのが、尾瀬ヶ原のすぐ近くにある至仏山。そして正面のゴツゴツした山が武尊山。

こうやって山座同定盤を撮影しておけば、山の写真を撮っても大丈夫だと思うだろ?でもこれが案外そうでもないのよ。同定盤に描かれているバッキバキにきれいな写真や絵と、実際に雲で覆われた山々ってのは似てるような似てないような感じなのよ。

山の特定が一つズレただけで、他の山が全部ズレる。で、「あれ?明らかにこの山はアレではないよね?」ということに気がついて、また最初から山の特定をやり直すことになる。

それにしても雲海からすっくとそびえ立つ武尊山はいかついな。あそこも百名山。

昨日訪れた天狗のお寺、迦葉山からさらに奥に入ったところにある。

なんかそんなにインパクトがない山だと勝手に思い込んでいたので放置していたけど、この山容を見ると「ごめんなさい、十分カッコいい山でした」と考えを新たにさせられた。

でも、当分は登る予定がない。というのも、関東近郊の百名山を早々に登頂しちゃうと、歳をとって体力が衰えてきたときには遠方のキツい山ばかりが取り残されるからだ。むしろ今のうちに、不便かつキツい山に登っておいたほうが良い、と考えている。

・・・とかなんとか思っているうちに、この山に登るためには「ココヘリ」という「遭難したときは救護ヘリが駆けつけます。そのためには専用GPS端末を用意して、有料課金してね」というサービスの利用が必須になっちゃった(2019年4月~)。

すごい時代になったものだが、道迷い遭難が増えている昨今、これくらいやって当然になってきた。

足湯とは別に、崖上にせり出したテラス。現在作っている最中だけど、これが出来上がればより一層の絶景が楽しめるんだろう。いいね。

(つづく)

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