12:49
山頂を後にした我々は、日光白根山三つのピークのうち、北側のピークに向かった。
お昼ご飯を食べるための大休止をするためには、山頂のピークは狭くて不向きだったからだ。
みんな結構疲れていたけれど、隣のピークに移動するためまた急な岩場を降りそして登り直す。
日光白根山の東側に五色沼という沼がある。360 度川につながっておらず、水が流れ込むことも川として流れ出ていくこともない。おそらく噴火口跡に雨水が溜まったものだろう。
日光白根山の魅力はいくつもあるけど、周囲をこのような大小様々な沼に囲まれていることによる風光明媚さは特筆だ。
時間に余裕があるならば、下山ルートは五色沼の湖畔を歩くことを考えていた。しかし、下山口となるロープウェイ乗り場は白根山の西側で、この五色沼は白根山の東側。明らかに大回りとなるルートなので体力と時間次第だった。結局、今回はメンバーの疲労状況を踏まえて五色沼を経由するのはやめにした。
五色沼を経由してから下山するとなると、標準コースタイムに90分時間が余計にかかる。もちろん体力も使う。
チームで登山をする際は、体力と時間をある程度温存しておかないとまずい。何かあった時のために備えておくためには、余裕を残しておくことは必須だ。五色沼は、上から眺めるだけにしよう。
五色沼の南側写真で言うと右端の方に避難小屋がある
避難小屋には興味があるのでせめて山頂から見えないだろうかとずっと森の中を観察し続けたが発見することはできなかった森の中にすっかりその姿は隠れているようだった
12:54
お昼ご飯にする。
丸沼高原スキー場の「高原の駅」で食料調達をした人は、こんな感じのご飯だった。おにぎり2個。
12:56
一方の僕はというと、「せっかく山に登るのだから」とガスストーブ、鍋、そして飲み水とは別に用意した水でラーメンを作ることにした。その名も「カピバララーメン」。
わざわざこのような面倒くさいことをしなくてもいいのに・・・と思うが、山頂でお湯を沸かしてラーメンをすすれば、それがたとえインスタントであってもご馳走になる。なかなか、やめられない。
重たい荷物を背負って、汗をかいたり疲労困憊して、そのあとに食べるラーメンなんだからうまいに決まってる。結局、ラーメンを作るために疲れて、ラーメンを食べて満足するというマッチポンプだ。
スーパーで買ったカット野菜の袋を自宅から持ち込んでいるのだけれど、昨日の朝からずっと常温で保存されている。ただでさえ痛みやすいカット野菜を常温で、ザックに入れたまま登山して、その後食べるというエクストリームっぷりだ。このようなことを今後も続けていると、いつの日か登山中にお腹を壊してえらい目にあうだろう。
なので、カット野菜の袋を手にした時、「妙に袋が膨らんでいないか?またはしぼんでいないか?袋の中に怪しい水が溜まっていないか?開封時に、いやな匂いがしないか?」ということは確認している。
うん、一応オッケー。
13:05
お湯が沸き次第、慌てながらラーメンを作る。
なにしろ、他の三人はおにぎりをパクついてあっという間にお昼ご飯が終わっている。一方の僕はと言うと、調理の準備から始まって、食材の用意、湯沸かし、調理、そしてアチチチと言いながらの食事。とにかく時間がかかる。
すまんすまん、と言いながら調理を進め、ハフハフ言いながらラーメンをすする。慌ただしい。
それでも山頂で食べたラーメンはうまかった!
特に、絶景の景色を眼下に見下ろしながらの食事となったのは本当に素晴らしい体験だった。
急峻な崖の上に立つ山頂なので、そのぶんスパッと足元が切り立っていて、眼下の眺めが素晴らしい。
もしこの山の登頂を考えるのであれば、晴れの日に登った方がいいと思う。そうでないとこの山の最大の魅力である「風光明媚」を体験できないからだ。
もちろん、どの山だって晴れの日に登ったほうがいいに決まってるけれど、特にこの山はそうだ。
13:11
目の前に小さな鳥が現れた。鳩のような鳥だが、さすが標高の高いところに住む鳥だけあって鳩よりも目つきが鋭い。公園で見る鳩というのは緊張感のない顔をしているんだな、と思う。
実際に緊張感があるのかどうかは、この鳥の気持ちが分からないので何とも言えないけど。
我々がすぐ近くでご飯を食べているのに、まるで存在に気がつかないかのように岩場をちょこちょこと動き回りさえずっていた。ライチョウほどではないにしろ、人に対する警戒感が薄い。
調べてみると「イワヒバリ」という鳥だった。標高の高い所や岩場に住む鳥なのだそうだ。
こういう鳥に会うことができたのも、山頂のいい思い出だ。
13:23
日光白根山は360度どこを見渡しても景色が素晴らしいのだが、我々のお食事会場からは北側の景色がよく見ることができた。先ほどまでの登山途中では見ることができなかったアングルになる。
眼下には「菅沼」と「丸沼」、二つの沼が見える。右側のひょうたんの形をした沼が「菅沼」、左側の丸い形をした沼が「丸沼」だ。
この二つの沼の脇を、群馬県と栃木県をつなぐ国道120号線が走っている。
人の気配など全く感じられない湖畔だが、丸沼の奥には一軒宿の「丸沼温泉」という温泉宿があるらしい。地図でしか確認したことがないが、こんな奥地に温泉宿があるのか!と驚いてしまう場所だ。
きっと俗世間から隔離された静かな時間が過ごせるだろう。
そして写真の丸沼の奥に、何やら稜線沿いに緑が薄くなってハゲあがったように見える場所がある。おそらくあそこが鬼怒沼。
山の上に湿原が広がっていて、有名な尾瀬沼と並んでとても良い景色だと聞いたことがある。そうかぁ、あそこにあるのかぁ。いつか行ってみたいのだけれど、いったいいつになるのだろうか。
そして鬼怒沼からさらに奥に目をやると、そこには巨大な山塊が見える。あそこは会津駒ヶ岳だ。
以前登ったことがあるが、俗世間からはるか山奥の檜枝岐(ひのえまた)からの登頂は楽しかった。そしてここも山の上に湿原が広がり、別世界にいる楽しさを味わえてよかった。なんだ、この界隈の山は最高なのばっかりじゃん。
13:30
戦場ヶ原、そして中禅寺湖方面を眺めたところ。
写真左に男体山の山腹が見える。その麓に緑色の平野として戦場ヶ原が見える。
写真中央には雲海に半分隠れているけれど、青い中禅寺湖が見えている。
そして関東平野は完全に雲に覆われて雲海になっていた。今日の関東地方は概ね曇り。
地球の丸さすら感じさせる雄大な雲海で、まるで宇宙ステーションから地球を眺めているかのような気分だ。
13:33
さて、僕ののんびりとしたお昼ご飯も終わったことだし、全員一息ついたので下山を開始しよう。
五色沼には立ち寄らないことにしたので、このまま進路を北にとり、日光白根山の北側から西のロープウェイ山頂駅に向けて反時計回りに移動するこにした。
眼下に丸沼、菅沼とは別に「弥陀ヶ池」という池が見える。こちらもサイズは小さいけれど、噴火口なのだろう。濁りのない水で神秘的な雰囲気だ。
弥陀ヶ池のすぐ左に明らかに噴火口と思われる盛り上がりとくぼみが見える。ここは「座禅山」と呼ばれている。
今回の下山ルートは座禅山のクレーター脇を通りロープウェイ駅に向かう予定なので、まずは弥陀ヶ池近くまで下り、そこから座禅山を経由して写真左の方に抜けていく
山頂から弥陀ヶ池湖畔の鞍部につながる道は、予想以上に急な坂だった。
標高差が260 メートル ほどあり、それを一気に下る。登りの時に使った登山道のようにゆっくりと地図の等高線を斜めに横切っていく道ではなく、ほぼまっすぐに等高線をぶっ刺すように道が伸びている。
もちろん実際の道はジグザグのつづら折れであるけれど、それでも道は小刻みに、狭い範囲でジグザグになっていた。登りで疲れた足にとっては、かなりの負担だ。中には膝を完全に折り曲げ両手両足を使って通過するような場所もあって、みんな軽口を叩ける状態ではなくなり、もくもくと下る。
(つづく)
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