小田原漁港での夕食食材調達に失敗した我々は、「抑えの候補地」としてあったお店を目指した。
「宿の部屋で持参メシを食べるためには、加工済み食品でないとアウト。だから漁港で食材を買えるものは少ない」
ということについては考慮していなかったけど、だからといって呆然と立ち尽くしてしまうわけではない。ちゃんと界隈のスーパーについては、調べがついていた。
というのも、箱根湯本から先は、温泉集落がぽつぽつと続くので「人の気配」はずっとある場所だが、なにしろ「観光地」だ。土産物やおしゃれなカフェはあっても、気軽にお惣菜なんぞを「あらお安いわね」と買えるような場所はない。いや、あるかもしれないけど、「ナントカ商店」みたいな小さなお店で、僕らのようなよそ者の観光客が気づくのは難しい。
だから、「湯本に着いてしまったらもう負けだぞ」と考えていた。箱根湯本に着く前に、食材については勝敗を決しないと。
そんなあなたに朗報。
小田原から国道一号線で箱根湯本に向かう途中に、ちゃんと大型のスーパーがある。箱根板橋駅近く、「小田原百貨店板橋店」がそれだ。
これなら、ちょうど道すがら、という場所にある。なので、「小田原漁港で食材調達失敗。慌てふためいてスーパーに駆け込んだ」感はない。むしろ悠々と、「最初から立ち寄るつもりでした」とすまし顔で駐車場に車を突っ込むことができる。
・・・誰に見栄を張ってるんだか、よくわからないけど。自意識の問題として。
「おだわら・・・100・・・パンティ?」
いや、パントリーだった。
「小田急百貨店」ではなく、「小田原百貨店」なので間違えてはいけない。
ここで、念願だった刺身などを購入することができた。
16:20
これにて本日の行程は終了。あとは宿を目指すだけだ。
夕食時間の制約がないので、「急げ急げ、早く宿に着かないと、メシ前の風呂に入れなくなる」と慌てなくていい。お気軽だ。
とはいえ、この国道一号は混むんだよな。土曜日は、小田原から箱根方面。日曜日はその逆。ほぼ一本道だし、観光地を貫く道なのでとても混む。日曜日の午後なんて、絶望的に混む。
イヤな思いをしたくなければ、早めの到着・出発にするか、公共交通機関を使ったほうがいい。
案の定、ノロノロ運転になってしまった。
16:21
箱根湯本駅通過。
東京の新宿からやってくる小田急ロマンスカーはここが終点。
ここから先は、箱根登山鉄道でスイッチバックをしながら強羅を目指すことになる。強羅からはケーブルカーとロープウェーを乗り継いで、ようやく芦ノ湖に到着となる。
ちなみに僕は、箱根湯本から芦ノ湖までを公共交通機関で移動したことがない。全て車だ。なので一度利用してみたいと思っているのだけど・・・ついつい、車になってしまうんだよな、この界隈をウロチョロするときって。
よく考えてみると、箱根湯本は何度も来ているし宿泊もしたことがある場所だけど、何一つ町並みのこととか商店街については知らなかった。
宿泊って言ったって、いわゆる「社員旅行」だ。ロマンスカーの中でベロンベロンになるまで飲んで(空になったロマンスカー型の弁当箱に清酒を注いで一気飲みとかしていた)、そのまま宿の送迎バスで護送されるという流れだったからだ。翌日はその逆。
明日は時間に余裕があるので、できたらこのあたりの商店街を見て回りたいものだ。
塔ノ沢の温泉街が見えてきた。
数寄屋造りの和風建築で、いい雰囲気の温泉旅館って感じがする。でも一泊おいくらぐらいするのだろう。高そうな印象がある。
後で調べてみたら、案外安くて1泊7,560円からのプランがあった。あれっ、安い時もあるのだな。
ただし日本の旅館というのは、ホテルと違って「ルームチャージ」ではない。なので、1部屋に大勢が泊まる「4名1部屋」の場合と、「2名1部屋」の場合とでは1名あたりの単価が全然違ったりする。あと、これは世界共通だろうけど、週末は高くて平日は安い。
そんなわけで、「1泊7,560円~」といっても、その条件というのは結構厳しくて、結局2割3割高いプランを選択するしかなかったりする。油断がならん。
いや、この宿がそうなのかどうかは知らない。そこまで調べていないので、あくまでも一般論として、だ。
あと、「1名で旅行したいな」と思っても、相変わらずNGな宿が多いのも、僕のような独身者は困ったものだ。割高になってもいいから、せめて「1名様」プランをネットに提示して欲しい。
平日限定とかケチくさいことを言わないで、週末も1名様オッケーにすればいいんだ。しかしその際は2名様分の料金を請求しますけどご了承ください、ってことにして。
前を走っていた車が、右に逸れていった。右は渓谷になっていて、吊り橋になっている。
うおー、車一台がやっと通過できる吊り橋だ。
でもむしろ、こういうのが味があっていいよな。「さあ、この橋を越えたら今晩の温泉旅館だぞ!」って一気に気が引き締まるというか、テンションが上がる。カップルで訪れている人だったら、がぜんその気になるだろう。
この先にあるのは、「山の茶屋」という旅館だった。1泊1名4万円くらいする個室露天の特別室なんぞがある、立派な旅館だ。
Googleマップを見ると、旅館の建物の背後から山の上に向かって階段?らしき通路があり、その先には離れのような建物が確認できる。
なんだろう、この建物は。
お高級な「離れ」の部屋なんだろうか?でも、それにしては宿の本館からは離れすぎているように見える。しかも道中が階段?だとしたら、結構歩くことになりそうだ。いくら「都会の喧噪を忘れて静かなひとときを。」とかいっても、ここまでお客さんを歩かせるだろうか?暑い日寒い日、雪の日雨の日なんて大変だ。
航空写真で見ても、よくわからない。このあたりの緑が濃く生い茂っていて、道が見えない。建物周辺は開けていて、庭園?みたいな感じにも見えるけど、何のためにあるのかはよくわからない。一瞬、ゴルフ場かと思ったくらいだ。
ひょっとしたら、むかーしから住んでいる地主さんがひっそりと住んでいるのかもしれない。謎は解明されないままだ。
こういうのって、楽しいよな。実際に訪れて、後でそれを地図で確認して、webで確認して、「ほう!」とか「あれっ?」とか、新しい発見がある。
「山の茶屋」、泊まってみたくなった。かなりお高いけど、館内の雰囲気がとても良さそうだ。
16:30
大平台温泉の看板が出てきた。
この近くを走る箱根登山鉄道は、3回連続でスイッチバックをする、急勾配の難所だ。そんなスイッチバックのさなかに、温泉街がある。
温泉街がある、といっても国道一号線はその温泉街の外周を通っていくに過ぎず、どういう風情の温泉街があるのかは僕は知らない。明日逆方向でここを通過する際は、敢えて温泉街の中に立ち入ってみよう。
大平台の地図が大きく掲示されているところの前で、若い女性5名が地図を確認している。鉄道でここまでやってきて、さて今晩泊まる宿はどこにあるんだろう?と探しているのだろう。
それにしてもみんな、自分の胴体ほどあるボストンバッグを抱えている。一体中に何を詰めているんだろう?女性というのは旅行の際に荷物が増える生き物だとは思うが、それにしても多い。連泊を考えているのだろうか。だとすると大変にうらやましい。
ログハウス風の作りになっている箱根登山鉄道大平台駅。
この駅自体がスイッチバックになっている。
せっかくだからスイッチバックを実際に見てみたい、と思ったのだけど、なにぶん土地が狭い場所柄につき、駅前駐車場なんて一台たりとも存在しなかった。
「近くに車を停める場所があったらそこでいったん車を降りよう」
と思ったのだけど、結局そんな場所は見つからないまま、集落を通過してしまった。あらー。
そういえば、先ほど通過した塔ノ沢温泉の「一の湯」も、「立ち寄り温泉」ののぼりが出ているけど「えっ?でもどこに車を停めればいいの?」とびっくりしてしまう。よく見れば駐車場があるのだろうけど、通りすがりのとっさにそれを見極めるのは難しい。
ということで、一の湯も、この駅も、箱根はどこも狭い。
そういえば、その狭さを逆手に取って、宿は崖下にあって、崖下まで宿専用のロープウェイで移動するというのを売りにしているところがあったっけ。今はもう廃業してしまったけど(晴遊閣大和屋ホテル)。また、「宿専用の渓谷電車で崖下まで移動する」スタイルの宿もあった(対星館)けど、こちらも時を前後して営業をやめてしてしまったっぽい。何かと面倒だったのだろうか。
「対星館」については営業をしているのかしていないのか、僕はよくわからない。Googleマップを見たり航空写真を見る限りでは、崖下の土地は更地にされてしまっているようで、宿らしき建物が見あたらない。しかし、2018年2月時点では公式webサイトが存在しており、まるで営業をしているかのように見える。うっかり、現役で営業している宿を「廃業」なんて言ってしまったらマズいので、このあたりは表現をぼかしておく。
ちなみに、「大和屋ホテル」に向かうロープウェー「夢のゴンドラ」は、まだ国道1号線沿いに堂々と看板が残っていた。撤去する予定はないのだろうか?大変に紛らわしい。
後で知ったことだが、2013年8月にこの2軒の宿は同時に営業を終了し、その後1軒の宿として合併して3年後のリニューアルオープンを目指しているらしい。この旅行記は2015年5月のものなので、まさにリニューアル中、ということだ。
・・・が、この記事を書いている2018年2月時点で、まだ営業を再開したという話は聞いていない。計画はどうなっているのだろうか。
「大涌谷三叉路~大涌谷 通行止」という電光掲示が出ている。
ちょうど二週間ほど前から群発地震が発生し、大涌谷から大量の噴煙がでるようになったので入場規制をかけたばかりだった。
今晩泊まる小涌園は大涌谷から直線距離で3キロちょっとしか離れていないけど、山一つ向こうだから多分大丈夫だろう。
大平台を過ぎ、次の温泉集落である宮ノ下温泉に到着。
先ほど書いた、「崖下にある宿にロープウェーやら渓谷鉄道でアプローチしなくちゃいけない」という温泉地、「堂ヶ島温泉」の宿はこの右手にあった。いや、正確に言うと「右手崖下」か。
宮ノ下温泉と言えば、名門富士屋ホテルが有名。
・・・だけど、うっそうと茂った木々に邪魔されて、建物はほとんど見えなかった。
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