ただいま、わが愛しの山小屋泊【焼岳】

ただ今の時刻

14:21
焼岳小屋は電波がほぼ入らない。時々、気まぐれでアンテナが1本立つ時もあるけれど、原則ダメだ。ドコモでこの状態なのだから、auやsoftbankはまるでダメだと思う。

やっぱり、山をやる人はドコモ回線を使うに限る。

・・・というのは、2012年とか2013年頃に仕入れた知識と実体験なのだけど、2017年の今はどうなったんだろう?他のキャリアも頑張って、山の中でもドコモ同様に繋がりやすくなったのだろうか、それとも相変わらずなのだろうか。

一昔前は、「どのキャリアが繋がりやすいか!?」と、週刊ASCIIとか日経トレンディが血眼になって調査しまくっていたものだ。そして、キャリアも「エリアカバー率○%!人口カバー率でいったら99%!」などと、電波が届くエリアの広さを競っていたっけ。

それがどうだ、2017年ともなると、その手のITメディアの関心はすっかりMVNOに移ってしまった。「MVNO各社のスピードチェック」企画が多くなり、電波を受信するかどうかは相手にされなくなってしまった。もう、繋がって当たり前のご時世なのだろう。

で、そんなご時世ではないのがここ、焼岳小屋。

電波をキャッチしたければ、先ほど登ってきた峠沢のあたりまで行けばなんとかなる。この小屋は、どういう電波都合なのかわからないが、かろうじてアンテナが立たないのだった。

スマホの画面に表示されている週間天気予報は「松本市」のものなので、全くあてにならない。ここが松本市であることには間違いないし、今まさに僕がいる場所は松本市営の施設だ。しかし、なにせ標高が2,090メートルもある山中なので、市街地とは全然事情が異なる。

しかも、明日の天気は見たこともないマークがでていた。もくもくした雲の絵の下に、雨模様の線が引かれている。一部、カギ状になっているので、雷雨の予報なのかもしれない。しかし一方で、雲の背後に太陽の絵も描いてある。ああややこしい、つまり明日は曇りだし雨だし雷も落ちるし、でも晴れるのか。つまりどういうことだ。

天気が悪いってことだよ!

まあそうだな。

今日の行程予定

暇に飽かせて、しげしげと自身の登山計画書を眺めてみる。

いやあ、よくできているものだ。国土地理院1/25,000の地図がプリントされ、ちゃんと登山道と所要時間が地図上に記載されていて、さらには登山道の要所要所の所要時間がきっちり書かれている。

この計画だと、今日焼岳小屋に到着するのは14:40の予定だったけど、大幅に時間短縮をして到着した、ということになる。案外捨てたもんじゃないな、自分の体力も。

しかし、歳とともに、「登りの時間は標準コースタイムよりも短縮できるけど、下りはむしろ時間がかかる」ということが増えてきた。下りこそ体力と技術がいるわけだけど、そこは普段運動をしない自分の限界なのだろう。

登りが速いから、といって下りもその調子でいける、と早めの時間帯の公共交通機関を予約したら自滅する。なので、今回の帰りのバスはゆっくりめにしてある。11:05に上高地バスターミナルに到着予定だけど、バスの予約は14:30。

やたらと余裕を持たせているけど、体力があれば大正池まで遊びにいくつもりだし、メシだってゆっくり食べたいし、上高地温泉ホテルでひとっ風呂浴びたいし。そんなわけで、余裕を持たせておいた。

そもそも、2日目の朝、何時に出発できるかなんてのは山小屋に入ってみないとわからないのが普通だ。朝ご飯の提供時間は山小屋によってまちまちだし、その山小屋の混雑状況によっても変わる。一度に食堂に宿泊客が入れない場合、二回転三回転とお客さんが入れ替わりでご飯を食べることになる。これによって、数十分単位で時間はずれることになる。

なので、登山計画書には「焼岳小屋06:00出発」となっているけど、これは適当だ。これよりも早くなるかもしれないし、遅くなるかもしれない。

ガスが深まる

ずいぶんとガスが出てきた。雨も、それなりに降り始めた。ちょっと野外ベンチにいるのにはしんどいお天気。

ブルーシート

そもそもこの山小屋自体が変な場所にあるのは前に書いた通りだ。小屋の前に、視界を塞ぐような大岩がある。

そして今、その大岩と小屋との間、まさに登山道のど真ん中に何やらビニールシートの簡易テント?が作られた。何だこれ。

女性用トイレ?

いや、違った。時折人が出入りしている。大きなザックの人は置き場が小屋の中にないため、ここを荷物置き場として使うらしい。さらには、着替えるのもここ。

女性の場合、山小屋は着替える場所に困る。トイレくらいしか隠れる場所がないからだ。そしてそのトイレだって、現代人にとってはデンジェラスな作りなので、油断禁物だ。うっかりすると、せっかくの着替えを落っことしたり、汚してしまうことになる。

なので、こういう脱衣スペースはありがたいと思う。しかし、場所が場所だけど。

せめて、先ほど僕がコーラを飲んでいたベンチの方に山小屋を作った方が広いのに・・・と思う。なんでわざわざこういう狭くて変なところに、小さな山小屋を作ったのだろう。

ずっと不思議だったのだけど、2019年にこの小屋を建て替えるという新聞記事を読んで、「ああ、多分そういうことだな」と理由を思いついた。

火山だ。噴火だ。

焼岳は現在も煙を噴いている活火山で、南峰には立ち入りが禁止されているような場所だ。いずれ噴火したっておかしくない。そのとき、山小屋は登山者の避難場所としても機能しなければならないわけだ。見晴らしの良い、広いところにノンビリと小屋を作るわけにはいかないのだろう。だから、大岩の影に隠れるように、この小屋は位置しているのだと思う。

2019年の建て替え時には、屋根は噴石が被弾しても耐えられるような装甲にするようだ。

軒先の濡れ縁にて

ベンチでの読書が雨のせいで中止せざるをえなかったので、小屋入り口脇の軒先で、読書を続ける。

目の前の視界は、大岩とブルーシートテントだけ。あんまり山気分ではない。

かといって、ここで小屋の中に入るのは負けた気がする。ギリギリまで外で過ごしたい。

焼岳小屋フロント

15:15
とはいっても、さすがに硬いベンチに長くいるのはしんどかった。すごすご小屋の中に戻り、食堂で過ごすことにした。

食堂から小屋の入口方面を見たところ。小屋番さんが立っている左手が小屋の入口。小屋番さんの背後に、カップ麺などの売り物が並ぶ棚があり、その右隣の奥が厨房になっている。

厨房の右隣は登山靴を置く棚と、ザックを置く棚がある。とはいっても、ザックを置く棚はかなり狭いため、僕のように早く到着した人が使うことができた。遅く来た人は、外のブルーシートテントへどうぞ。

冗談みたいな話だけど、山小屋で登山靴を盗まれる、という話はよくあるようだ。「おっ、いい靴やんけ!もらったろ!」という悪意で盗むのか、それとも自分の靴と勘違いして履いていってしまうのかは不明だが、取り残された人はたまったものじゃない。山の中で、自分の靴がない!というのは本当に地獄だ。想像しただけでぞっとする。

幸い僕の場合、靴のサイズが人様よりも大きい(28センチ)ので、これまで盗まれたり盗まれそうになったことはない。

カップめん

この小屋の売り物。

カップヌードルや赤いきつねなどが並ぶ。そして、酒のつまみとしてじゃがりこやピスタチオ。紙カップの清酒も売られている。

おやっ、と思うのが水のペットボトル。そこには注釈が付けられていて、「宿泊のお客様 簡易浄化水500ml 500円、水ペットボトル500ml 500円」と記されていた。

つまりこの小屋では、水は無料提供していませんよ、というわけだ。

山小屋は場所柄水不足に悩まされることも多く、水の節約を求められる。しかし多くの場合、「宿泊客は水は無料、通りすがりの客は有料。なお、お湯は宿泊客でも有料だよ」としているものだ。

この焼岳小屋、きっぱりと潔く「宿泊客も500円」。本当に水がないっぽい。近くの沢からポンプアップしたりはできないのだろう。天水頼みだろうか?

ピスタチオなど

よく見ると、僕が愛してやまない静岡限定スナック「バリ勝男クン」が売られていた。今写真を見て気がついた。もしこの宿泊時点でこの事実に気がついていたら、間違いなく買っていただろう。

それにしてもなぜ静岡でしか売っていないスナックが長野の山中で?

CDもあるが鳴っていない

窓際には、ラジオ、CDプレーヤーなどが並ぶ。だけど、日没までは発電機を回さないので、これらは全く役に立たない。

読書中

小屋の中は、かなり薄暗い。

本を読もうとすると、難儀するレベルだ。

歳とともに老眼の症状が出てきはじめた中年おかでんだけど、「暗いところで文字を読みづらくなった」というのも密かな苦労。見ろ!人間、円熟味を増すとこうなるのだ!

というわけで、窓枠にすがりつくような姿勢で読書、読書。なにしろ夕食までまだ時間がたっぷりある。

こうやって外界と隔絶している状況だからこそ、落ち着いて読書ができる。最近の僕は、暇さえあればラジオクラウドでラジオばっかり聞いていて読書をする暇が全くないので、この時間はすごく貴重だ。

(つづく)

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