ただいま、わが愛しの山小屋泊【焼岳】

山頂が見えた

07:43
先行していた学生諸君が立ち止まっている姿がぼんやり見えてきた。

また道に迷った、というわけではなさそうだ。二人が立っているところに、柱が見える。お相撲さんが鉄砲の練習をするためのものではあるまい。

ということは、あれが山頂か。

焼岳山頂

07:44
焼岳山頂の表示。

焼岳には「北峰」と「南峰」があり、ここは「北峰」となる。南峰の方が標高が高いので、ここはまだ前哨戦にすぎない・・・のだけど、残念ながら火山活動のため、南峰には立ち入り禁止だ。

北峰が2,444.3メートル、南峰が2,455.4メートル。その差わずか11メートル。スーパーマリオみたいにすっげえジャンプをすれば、南峰気分が味わえるかもしれない。

焼岳山頂

いや、味わえるもへったくれもない。

なにしろ、この背景。一面のガス。何も見えない。

この北峰の目と鼻の先に南峰があるはずなのに、そんな気配すらない。そして、北峰と南峰の間には、火口湖があるはずなのだけど、それも見えない。直線距離だと、100メートルとか200メートルといった近さなのに。

視界はものすごく悪いけど、雨脚が強くなっていないのは救いだ。そのため、「下半身はレインウェアとスパッツを装着しているけど、上半身は半袖」という中途半端な格好になっている。

決して変態紳士なわけではない。ほんとうなら、下のウェアも脱いでしまいたいのだけど、上着と違って脱いだり履いたりするのに手間がかかる。なので、こういう怪しい天気の時は脱がないで様子見に徹している。

焼岳山頂

07:50
山頂はちょっとした広場状になっている。

もともとこんなにつるんとしていたとは思えないので、岩をどけて整備した人工的なものなのだろうか?

天気が良い時、ここでコーヒーでも湧かしたら気持ちいいだろうなぁ(棒読み)。

晴れた時なんて、全く想像できねぇ。一面のガス一面のガス一面のガス。

焼岳山頂

07:51
「やったぞ、山頂に着いたぞ」という高揚感や達成感があるはずなんだけど、全くそういう感情はなし。

焼岳小屋を出発してから約70分。「やれ、もう登らなくていいぞ」という安ど感は少しあるけれど、それ以上のものはない。

座り込んでくつろげるような状況ではない天気のため、しばらくその辺をウロウロして写真を撮る。

しかし、単なる岩を撮影しているだけで、何がしたいのかよくわからない。

焼岳山頂

多分この写真も、何か意味があって撮影したんだと思うんだよなぁ。

今となっては、なんでこんな写真を撮ったのか、さっぱり覚えていない。

ザックカバーが本体内蔵だった

07:58
今頃になって思い出した。

このザック、底面に収納ポケットがあって、そこを開けると中から雨天用のザックカバーが出てくるのだった。もちろんサイズぴったりのやつだ。さっきまで居心地悪く、青いザックカバーをガサガサいわせていたのだけどあれは無駄だった、というわけだ。うっかりしていた。

最近の登山用ザックは、大小問わずこうやってザックカバー内蔵型のものが増えた。メーカーや販売店の人に聞くと、「一時しのぎ的なものなので、雨の時にはザックカバーをちゃんと別に用意したほうがよいです」と言われる。

しかし今回のような、ガス中心の霧雨・小雨程度ならばこういう内蔵カバーで十分だった。

しかし山頂に到着してから気付くかね。遅い。

焼岳山頂

08:01
下山開始。

登った気があんまりしないけど、山頂から一歩踏み出す、ということはすなわち下山だ。これがじゃんじゃん雨が降っていれば、「この荒天の中よくやった!やり遂げた!」という気持ちを持てるのだけど、今日は微妙な心境。

まあいいや、上高地にとっとと下山して、十数年ぶりの上高地観光でもしてすごそう。今から下山すれば、14:30のバスまで随分時間の余裕がありそうだ。

学生コンビは、山頂でしばらく今後の行き先を相談していた。結局、このまま先に進み、中ノ湯コースを下山するとのこと。釜トンネルの入口にある洞窟風呂「卜伝の湯」に浸かって帰ると言っていた。

学生たちとお互い無事に下山しましょう、とあいさつをかわして別れる。で、別れた後になって思い出した。ああそうだ、卜伝の湯って30分刻みの貸切風呂なんだった、と。湯船は一つしかない。それを伝えておけばよかった。

あの学生たち、どうしたんだろう。せっかくだから、と混浴をしたのだろうか。

よせ、下世話な想像はよせ。

焼岳山頂

一方の僕はというと、「混浴に混ぜてもらう」という発想がとっさに出てこず、今来た道を戻る。

見ての通り、ガスが深くてただひたすら歩くしかない道だ。

下山開始

いっつもそうなのだけど、山小屋泊の山行2日目って、いつも僕は相当老け込んだ顔になる。今回もそう。

ビールをバンバン飲んだせいで翌日顔がむくむんだよ、というわけではないのに、こればっかりは相変わらずだ。顔はビールなしでもむくんでいる。そして、実感はないものの、写真には如実に表れる疲労感。

登山の疲れに加えて、山小屋で熟睡できなかった疲れ、さらには風呂に入っていないので顔が汗でギトギトしているのが重なっているのだろう。しかも、小屋で夕ご飯を食べてから、ほとんど身体を動かしていない。就寝時間まで2時間ほど時間はあったものの、「動ける範囲」というのがすごく狭い。そのせいで「食べてすぐ寝る」に等しい顔のむくみっぷりになるらしい。

(つづく)

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