ただいま、わが愛しの山小屋泊【焼岳】

河童橋周辺

13:46
河童橋。

上高地観光客で、ここを訪れない人はいないという、上高地の中心地。

これまで僕にとっての河童橋というのは、「これから山に入るために、あわただしく素通りする」か、「ヒイヒイいいながら下山してきて、風呂だのバスだのが気になりつつ素通りする」場所だった。いずれにせよ、「素通り」だ。

山登りをする人は、この界隈のザワザワした雰囲気というのをあまり好まない。「ケッ、観光客かよ」と思っている人も多いはずだ。昔の僕が、まさにそうだった。だから、河童橋についてはあまり思いいれがない。

しかし今回、登山で訪れたとはいえ、既に僕の気分は観光気分満々だった。なにしろ、大正池までお散歩するやら、温泉に入るやら、ずいぶん貴族的な時間を過ごしているからだ。なので、今日においては、河童橋も愛おしい。

時計をチラと見る。

14時半のバスまで、残り45分。

河童橋からバスターミナルまで、5分あれば十分だ。よし、そろそろお昼ご飯兼セルフ宴会をこの界隈で開こう。

河童橋周辺

当初、「メシを食うならバスターミナルのところの食堂くらいしかない」と思い込んでいた。しかし、あらためて観光客目線で河童橋周辺を見渡すと、案外食べるお店があるものだ。

というか、基本どのホテルでも喫茶店やお食事処が併設されている。今更知る、上高地の真実。

やべえええええ、目移りしてしょうがねええええ。

どうするんだよ、今更腰を落ち着けて、岩魚の塩焼き定食なんて食べるわけにはいかないぞ。気持ちの整理ができていないし、時間があと45分じゃ、お店に入るのは危険ゾーンだ。

アップルパイ

しかし、そんな御仁もニッコリ、いろいろテイクアウトメニューやらおみやげ物屋で売られている食べ物やらが満ちあふれている。

信州りんごを使ったアップルパイやらソフトクリームが、店頭で「おいでおいで」をしてくる。ヌウ、疲れた体に甘いものとは、悪魔的誘惑ッ!

しかし気分的には、汗をかいた分、塩っ気がほしいんだよな。

河童橋周辺

13:47
上高地五千尺ロッヂのアップルパイをいったん振り切り、お隣の上高地ホテル白樺荘の様子を見に行く。ここは河童橋のたもとにあるため、特にお客さんが多い。

建物入口には「河童の休憩所」という看板が掲げられていて、宿泊業だけでなく日帰り客をガッチリ捕まえようと気合いが入っている。

売店

ほう。

店頭には、ワインが並べられてる。どうぞここで杯を傾けてください、というわけだ。

「昼酒?とんでもない!」と思っている人でも、観光地、特に大自然の中の観光地だと「お酒を飲むのも悪くないね」という気持ちになるものだ。

ワインがここまでドカンと店頭に置いてある、ということは「売れる」からだろう。

オールフリー

ワインを飲む気はさすがにしなかったけど、無事下山した祝杯ということでノンアルコールビールは喉に授けたい。

こういうときは、アサヒのドライゼロが一番向いている。ちょっとキツい感じの喉越しが、最大のご褒美だ。

ノンアルコールビールは、酔えない飲み物だ。そして、ビールを模した味なので、もともとそんなに「美味い!」というものではない。だから、「細かい炭酸の泡を喉に注ぎこむ」快感を楽しむものだ、と僕は考えている。「美味いノンアルコールビール」とか「ビールそっくりの味」である必要は、ない。

しかし、そんな僕の前に突きつけられる現実は、「ノンアルコールビールが売られていない」というものだった。まだまだ上高地のような観光地では、導入が遅れているっぽい。ビールなら当たり前に売っているようなお店でも、ノンアルコールビールまでは気が回らないらしい。

白樺荘の売店には、サントリーオールフリーが売られていた。

うーん、オールフリーじゃないんだよなあ。天然水を使っているかどうか知らないけれど、スカスカした味で物足りないというのが僕の評価だ。ドライゼロの方がいい。

この後、オールフリーはリニューアルして味がよくなったと思う。昔は僕の好みにあわなかったので「できれば飲みたくない」飲み物だったけど、2018年現在は好んで飲めるようになった。

ドライゼロを売っているお店はないだろうか?と、この界隈の売店を全て回ってみたけれどなし。諦めてオールフリーを買うことにした。

売店

13:52
店頭で、軽食があれこれ売られている。

長野といえばこれ、という「おやき」から始まって、肉まんやらコロッケやらフランクフルトやら。

よし、ここで兵糧を入手しよう。

戦利品

13:54
あれこれ悩みつつ、それでも最後は「えいやっ!」と叫びつつ買ったものは、これ。

上高地コロッケ、フランクフルト、そしてオールフリー2本。

二人分の食事、というふりをして、実際は一人で食べちゃう。食いしん坊だな、お前。

「上高地コロッケ」は、名前をつけたもん勝ちだな、と思う。上高地で揚げました、というだけだ。原材料はもちろん何一つ上高地産のものは入っていないし、コロッケの製造だって、まさかこのお店で手作りではあるまい。冷凍品を下界からトラックで運びあげているはずだ。

でも、そこまで分かっていながら、ついつい買ってしまう。それが「旅情」の恐ろしさだ。

単にこれが「コロッケ」という名前で店頭に並んでいたらどうだろうか?たぶん買わないと思う。しかしそれが、「上高地コロッケ」と名乗った瞬間、がぜん魅力的に見えてしまう。悔しいけど、それが現実。

いっそのこと、「コロッケ」ではなく「クロケット」なんて名前にすれば、もっと非日常感が出て売れるんじゃないか?と思ったけど、「クロケットって何だ?」と理解できない人が現れて、結局売上が下がると思う。

祝杯

なんかやたらと嬉しそうにノンアルコールビールの缶と対峙する。

酔っ払うわけではないので、なにもそんなに嬉々としなくてもいいのに、と思う。しかし、これはビールを飲んでいた頃からの習性で、クセになってしまっている。今更治らない。

よく、「おかでんさんってノンアルコールビールをよく飲んでますが、ビールに対する未練があるんですか?」と聞かれる。しかし僕は、ビールというか、お酒に対する未練は全くない。すっぱり止めたことで、気がせいせいしている。むしろ、「一日ビール350mlまでオッケー」みたいな寸止め節酒だったら、悶々としていると思う。

じゃあなんでノンアルコールビールを飲んでいるのか、というと、これに変わる刺激的な飲み物がほかにないからだ。炭酸水や炭酸ジュースだと、泡の粒がもっと大きくて、口の中でバチバチとはじける。一方、ノンアルコールビールはキメが細かい炭酸なので、飲んだときに「ぷはぁー!」となる。コーラで「ぷはー」はないけれど、ノンアルコールビールなら「ぷはー」はある。その違いだ。

山

13:55
梓川の河原に腰掛けて、遅めのご飯を食べつつ目の前の山を見上げる。ここも今は山頂付近がガスの中。

面白いもので、上高地周辺の山は歩かれまくっているようで案外そうではない。みんな穂高連峰の方に気が向いてしまい、背後の六百山や霞沢岳には全く興味が沸かないらしい。

みんな興味がないから登山道がないのか、登山道がないから興味が沸かないのかは不明だけど、とにかくアプローチが面倒くさい山であるのは事実だ。上高地側からは登れないので、裏側の徳本(とくごう)峠から登っていくことになる。しかし、六百山などはちゃんとした登山道がない。

コロッケ

上高地コロッケ満喫中。

上高地コロッケと名のついたコロッケを、上高地で食べる。
上高地の良い思い出です。

夏がくーればおもいだすー

あっ、いかん、それは尾瀬だ。

上高地ジェラート

14:06
はっはっは、でもお前はダメだ、上高地ジェラートだって?

そうそう、何度も何度も「上高地」で旅情を感じるわけにはいかない。いくら身体があっても足りなくなる。

僕における「上高地枠」はさっきのコロッケで埋まったので、もうおしまい。

上高地ジェラート

ああっ!?

そんな馬鹿なッ・・・!

気が付いたら上高地ジェラートを買っていた。

これが「甘いものは別腹」ということなのかッ・・・!

「上高地枠」にも別腹があったとは。

梓川

14:08
ジェラートでニッコリしつつ、河童橋の上から焼岳方面を眺める。

甘いものを食べるようになったのは、お酒をやめてからだ。それまでは、親の仇か、というくらい一切甘いものを口にしていなかった。

ノンアルコールビールを飲んで、甘いものを食べて。優雅な時間が流れていく。これまでの山歩きとはちょっと違った幕引きだ。

(つづく)

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