
上高地食堂で昼食後、また河童橋に戻る。
河童橋を越えて、西糸屋山荘や上高地温泉ホテルがある梓川右岸を散策する予定だ。
・・・人、多いなあ。
主に海外からのツアー客は少ないが、それでも数名から10名程度の中小規模の外国人団体客はちらほら見かける。そして、クラブツーリズムといった国内旅行ツアーは相変わらず活況だ。

バスターミナル近くのカラマツが黄色く色づいて、とても美しい。上高地の中でももっとも美しいカラマツエリアがここかもしれない。

これまで何度もここを歩いたことがあったが、気が付かなかったもの。
梓川にせり出した電柱っぽいものがある。周囲の風景に馴染むように茶色く塗られているため、地味だ。
なんのためにあるのか不明だが、川の水位か水量か、なにかを計測しているものっぽい。

新雪をまとう霞沢岳と、上高地のカラマツ林。美しいコントラスト。

上高地から新島々に向かうバスの予約時間を遅く設定したのは、上高地をギリギリまで満喫したいからだ。
そしてその「ギリギリまで満喫」の要素として大事なのが、上高地帝国ホテルの「カフェ・グリンデルワルト」でゆっくりと過ごす、ということだ。
ということで赤い屋根と頑丈な石垣が美しい、上高地帝国ホテルにやってきた。これだけ頑丈なら、豚が逃げ込んでも狼に襲われることはないだろう。

カフェのど真ん中にある、暖炉の煙突を眺めながら席につく。
上高地にしては客が少なく、ゆったりできる空間。心地よい。そしてここも、明るすぎない照明が心を落ち着かせる。

二人揃ってケーキとコーヒーのセットを頼む。
ケーキもコーヒーもとても美味しい。値段は上高地価格に加えて帝国ホテル価格であり、相当に高い。
クオリティも高く、スタッフのホスピタリティが素晴らしいのが救いだ。自分の財布に対して言い訳ができる。
お会計は3,500円。一人1,750円だ。
いずれ、子どもが大きくなってくると「子どもにはりんごジュースを・・・」となり、さらに成長すると大人と同じものを飲み食いするようになる。そうなると昼下がりのティータイムに5,000円以上のお支払い、となってしまう。さすがにそんな財力はないので、きっと今このくつろぎ時間は「独身時代の余韻」なのだろう。もうすぐ、そうは言ってられない財政事情になる。「お茶を飲むなら水筒に詰めて持ってきたものを飲む」という時代が、あと数年で我が家にやってくる。

もともと、僕がこの「グリンデルワルト」を発見したのは、帝国ホテルのメインダイニング「アルペンローゼ」の値段が高すぎて断念したからだ。
もちろん、帝国ホテルの食事なので素晴らしい食事なのだと思う。しかし、3,000円近い料理がメニューに並ぶと、選ぶものがなくなってしまう。
その結果妥協したのが、グリンデルワルトでのひとときだった。食事はできないけど、コーヒーが飲める。するとどうだ、「妥協」だなんてとんでもない。最高の時間がそこにはあった。
あと、その時は僕が小梨平で一人、天幕合宿をやっている最中だった。時間は潤沢にあったので、「今ここでカフェに立ち寄るのもありだな」と思った。

もし、駆け足で日帰りで上高地観光だったら、グリンデルワルトを利用しようとは思わなかっただろう。それよりもご飯はどうする?お土産は?写真をどこで撮る?ソフトクリームとか河童焼きとか、甘いものをたべる?とドタバタして、落ち着こうとは思わなかった筈だから。

しばらくの間帝国ホテルでゆっくりとくつろぎ、上高地最後の時間を楽しむ。
そろそろバスの時間だ。
帝國ホテルから歩いて10分ほどで、バスターミナル。
バスは既に便指定を済ませてあり、14:05発の新島々行きに乗ることが確定している。

バスは新島々を目指す。
釜トンネルをくぐり、下界に戻ってきた。
沢渡エリアに向かう途中がちょうど紅葉の見頃だった。上高地は、カラマツはとても美しかったが、山に生えている落葉樹の紅葉は既に終わっていた。そこから標高を下げ、「親子滝」とよばれるあたりの山々が美しかった。
新島々まで降りてくると、今度は紅葉があともう少し、という状況だった。バスで季節をまたいだことになる。
(つづく)
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