2020年、新型コロナウイルスの流行が始まり、まだ感染者数が増えたり減ったりを繰り返していた2021年。
感染者数が減ると、「GoToトラベル」のような旅行観光業支援のための大盤振る舞い施策が国から提示され、人々はその安さに釣られて旅に出て、また感染者数が増えると家に閉じこもるということを繰り返していた。
後からこのときの様子を振り返ると、国を挙げたマッチポンプかつストップアンドゴーで、一体何をやっていたんだ?という内容だ。でも、観光業がこのままでは死に絶えてしまう!ということもあって、ウイルス感染が一段落するやいなや手厚い支援策、観光誘発企画が乱発されていた。
僕らおかでん家も、第何波になるかもはや覚えていないが、感染がピークアウトして落ち着いた頃合いを見計らって旅に出ることにした。
どこに行くか、というと上高地だ。
2021年、我が家にとってもっとも印象的なできごとは、弊息子タケが誕生したことだ。
「タケ」の名前の由来は上高地河童橋から真正面に見える「岳沢(だけさわ)」であり、彼のふるさととも言える場所だ。なにせ、僕ら夫婦が結婚する年の2019年、2回も上高地を訪れているからだ。事実上の新婚旅行が上高地、ということもあって、とても思い出深い。
そして、パートナーのいしが妊娠中だった2020年も、上高地を訪れている。妊婦が上高地という山奥に行くことは褒められたことではないが、当時の僕らはそれくらい上高地を好んで歩いていた。
そして2021年。弊息子タケ、生後7ヶ月。首は座った。おすわりもできるようになった。ハイハイはまだできない。そんなタイミングで、僕ら一家は再度上高地へと向かった。0歳児のタケに、自分の名前のルーツとなった岳沢を見せるために。
ちなみに余談だが、女の子だったら「梓(あずさ)」という名前になっていたはずだ。上高地を流れる川が梓川だからだ。
2021年10月29日(金) 1日目
07:55
新宿駅。
9番線ホームから出発する、特急あずさ5号南小谷行きに乗車する。
特急あずさの始発電車は朝7時なのだけど、今回はちょっと遅い便を選んだ。一旦松本を通り過ぎ、穂高まで行って穂高神社を参拝しようと思ったからだ。
これまで、上高地から徒歩1時間のところの明神にある、穂高神社奥宮に参拝してきた。しかし、本宮はまだ1度もお伺いしたことがない。弊息子タケが産まれたこともあり、一度家族揃ってご挨拶しておこう、というわけだ。そのために、南小谷まで直行する特急あずさに乗る。
昔は南小谷行きの特急あずさ(スーパーあずさ)なんてザラにあったと思うのだが、今や朝8時新宿発のあずさ5号だけになってしまった。ちなみにこれも2025年には白馬止まりに縮小されるということだ。後立山連峰方面の登山をする上で、貴重な乗り物なのだけど、惜しい。
生後7ヶ月ちょっとのタケは今なんでも口に入れたい盛り。
いしのヘッドライトをおもちゃにしている。
まだ絵本の読み聞かせが通用するような月例ではないので、車内でどれほど彼がごきげんでいられるか、出たとこ勝負のところがある。
彼が飽きないように、夫婦で交替で抱っこしたり車内探検をしたりして、時間を潰す。
とにかく、「泣くことを我慢する、こらえる」という発想が一切ない生き物なので、油断がならない。そしてウンチおしっこも、油断がならない。ウンチはまだ軟便なので、オムツのポジションや座っている状況次第ではオムツから漏れ出す可能性がある。注意は怠れない。
なお、今回の旅の荷物はそれなりの量になったのだが、一番かさばったのがタケのオムツ、二番目がタケの着替えだった。風邪を引かせるわけにはいかないので厚着をさせなくちゃいけないし、上高地は使用済みオムツを捨てられるような場所ではないので、全部お持ち帰りだ。
11:01
穂高駅到着。
この時期、長野県民が県内旅行をする際は「県民割」というのが適用され、大幅に安く宿に泊まることができた。そしてその県民割が拡大し、長野県周辺の県の住民も適用されるようになっていた。
一方で東京は、地方からは「ウイルス大流行の魔窟」と未だに見られており、この手の旅行割引サービスで提携してくれる県は皆無だった。なので、僕ら東京都民はどこへ行っても割引なし。
旅先のあちこちで「県民割」のステッカーが貼ってあるのを見て、悔しい思いをしたものだ。
穂高駅前。のどかな景色。
スーパーもコンビニもない。駅前にコンビニがあるのは当たり前、というのは東京に住んでいる人の考え方だ。地方だと、車でアクセスしやすいロードサイドにお店がある。この穂高駅周辺も、地図で調べてみると駅から離れた国道147号線沿いにセブンイレブンが一軒あった。
穂高駅。瓦ぶきの屋根の駅舎が珍しい。
はるか昔、燕岳から大天井岳、常念岳、蝶ヶ岳と縦走した際の起点としてこの駅を使ったことがある。
そのときは駅に到着してすぐにタクシーに乗った。なので、駅の印象は全く残っていない。
20年近く経って、ようやく「へえ、こういう駅だったのか」と知った。
穂高神社。
駅からは歩いて行ける距離。
境内には、100円ショップかドン・キホーテのパーティーグッズで売っている、数字のバルーンが金銀ギラギラと光って掲げられている。その数字は「753」。
・・・ああ、「七五三」か。
あまりに突拍子もなくて、「753」のバルーンが七五三を意味していることに気が付かなかった。
神社にしてはポップというか今風というか、こんなデコレーションをする時代になったんだなーと感心する。しかも、手前の地面に「祝 七五三詣 穂高神社」というプレートが置いてあるので、たぶんこれは記念撮影のためのものだ。バックに拝殿を写しつつ、記念写真を撮れるにするという工夫。なるほどねえ。
犬とお参りができる神社。
穂高神社は日本アルプス総鎮守、ということになっている。
にもかかわらず、荒波を乗り越えていく船に乗った武将の像が境内にある。
穂高神社は「ワタツミ(海神)」が祀られているということで、こういう像も立っているのだろう。
唐突だけどニワトリの写真。
なぜかこの神社、境内にニワトリが飼われていて、我が物顔でウロウロしている。人を見ても恐れることがなく、余裕の表情だ。これには面食らった。
(つづく)
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