これだけ立派なまつだい駅とはいえ、空車タクシーが待機しているということはなかった。ひっきりなしに電車が往来している土地柄でもないし、地元民は大抵マイカーを持っているからだろう。そういえば、駅前に「タクシー乗り場」が指定されてもいなかった。
観光案内所に相談してみたら、タクシー会社の電話番号を教えてくれた。そこに電話をかけたら、10分もすれば駅まで迎えに行く、という。駅から遠くないところに営業所があって、そこでオーダーが入るまで待機、というスタイルらしい。ついでに明日の朝、松之山温泉からまつだいまでの予約もお願いしておく。
ほどなくタクシー到着。湯煙あがる松之山温泉へ向かってくれ、と力強くオーダー。任せろ、と運転手さんも深くうなずく。
道中、運転手さんに「のっとれ!松代城」について聞いてみた。
「いやあ、参加したことないですねえ・・・。地元の人って、雪に慣れてるというか、当たり前の存在なんで」
なるほど。そりゃそうだ。雪と戯れよう!というこの企画にワクワクするのは、僕らのような雪があまりない土地の人なのかもしれない。
まつだい駅から車で20分程度。松之山温泉に到着。料金は、往路復路で違ったが、おおむね4,000円くらいだった。
今回、松之山温泉で宿を探すに当たって、「折角だから温泉街の中にある宿にしよう」と決めていた。松之山温泉は、温泉宿が密集している場所の他に、周辺にぽつぽつと宿が点在している。以前、アワレみ隊で松之山温泉に泊まった時は温泉街から離れた一軒宿だったが、温泉街を散策・・・というのはやはり楽しいものだ。選択肢があるのならば、温泉街の中の宿を選びたい。
宿の値段は高いところから安いところまでさまざまだが、雪深い冬の期間はオフシーズンということで割安になっている宿もある。今回は、温泉街の最奥にあって値段が安かった「こめや旅館」というところにお世話になることにした。折角だからそこそこのお値段がする良い宿でほっこり、ということも考えたのだが、翌日に「のっとれ!松代城」というコッテリしたイベントが控えているのでほっこりしているどころじゃないだろう。今回の旅では、宿にお金をかけるのは無駄な気がしたので、やめた。
それに、「地のものをふんだんに活かした料理が!食卓に!」なんてのは多分無理だ。なにせ日本有数の豪雪地帯、しかも山間部だ。季節の地のものなんて、大してあるとは思えない。イノシシとか鹿とかだって、この雪じゃハンティングできるとも思えないし。だから、贅沢な食事を宿メシに期待しないほうがいいかなー、というのが事前の判断だった。
この宿は一泊二食付きで9,000円いかなかったと思うので、かなり安いと思う。
自炊宿で、料理を作ってセルフ宴会・・・ということも考えたのだが、食材の調達をどこでやるの?と考えた時、公共交通機関を使っていると難しかった。車でスイスイ移動できるのであれば、スーパーに立ち寄るのは容易なのだが。なので、これはやめた。
荷物を部屋に置いて、一息ついたところで温泉街探検に出かけた。明日の朝は出陣のため慌ただしいし、夕食後だと寒いし暗いし足元危ないしで油断ならない。探検するなら、今しかなかった。冬なので、重ね着した服を着脱するのが面倒だった、というのもある。どうせ今着ているんだから、このままお出かけしちゃおう、というわけだ。
旅館を出たところに、鷹の湯源泉がある。松之山温泉にいくつかある源泉のうちの一つで、源泉温度は90度を超える。沸騰寸前だ。でも面白いことに、この近くに火山は存在してない。「ジオプレッシャー型」と呼ばれている温泉で、地層がぐいぐい押されることによって生じる地熱で温められた古代海水が噴出しているということだ。「鷹の湯」という名前から見てわかるとおり、この温泉の由来は「傷ついた鷹が温泉でいやしているのが発見され・・・」という。もう、鹿とか鷹とか、日本の野獣はみんな温泉が好きだな。熊の湯とか狐の湯とかもあるし。さすがに水が嫌いなことで知られる「猫」が由来の温泉ってのは聞いたことがないけど。
松之山温泉はホウ酸の含有量が日本一、ということで知られている。そのせいか、臭いが独特で、タオルに染み付いた臭いがやみつきになって、後日もクンクン嗅いでしまうくらいだ。コールタール臭い、とも言われるが、「保健室のような臭い」と僕は感じる。もっともこれは源泉によって結構差があるのだが。
土曜日夕方5時の松之山温泉旅館街。
さすがに人があまり歩いていない・・・。これだけの冬だし、雪だし、当然か。静かなものだ。今日はどれだけのお客さんがこの地に宿泊するのだろうか?「のっとれ!松代城」に泊まりで参加する人は、松之山温泉泊というのが最有力候補になるはずなのだが。
でも、後で考えてみたら、越後湯沢から1時間もかからず松代に到着できるので、越後湯沢界隈で一泊、というのもありなんだな。温泉街としてはあちらの方が遙かに開けてはいる。
温泉街というのは、適度に道が狭いほうが風情があって楽しい。そして、碁盤目状に街があるよりも、一本道で細長い方が楽しい。その点ここはそれを満たしている。適度にお土産物屋や飲食店がるのも嬉しいし。
我々がまず目指したのは、共同浴場である「鷹の湯」。宿にはちゃんと内湯があるし、この共同浴場と同じ源泉を使っている。でも、やっぱり共同浴場がある温泉地の場合、共同浴場にはお邪魔したくなるんだよな。風情があるし、その温泉の雰囲気、というのをもっともよく知ることができるから。
加水循環されているお湯だが、やっぱり気持ちがよい。露天風呂で雪見風呂としゃれこみつつ、お湯を楽しむ。・・・雪見風呂、といっても、真っ白過ぎて遠近感が全くつかめず、ただ単に白いものを眺めているだけ、という有様だったけど。
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