圧巻の山、圧倒する虫【巻機山】

17:55
いよいよ外にいるのを断念し、避難小屋の中へ退避する。

日没まではまだ時間があるが、寒くなってきたのと、なにより虫の猛攻に耐えかねて撤退だ。

こりゃひどい。本当に虫が多い。

18:13
トイレを済ませたあと、自転車を漕ぐ。暇なので、規定回数より多めにグルグル。

外のベンチでは、まだ飲み水用のお湯を沸かしている。だから中と外を行き来しており、モスキートネットは被ったままだ。

短パンに履き替えたのは、屋内でリラックスするため。僕は普段の生活でも、屋外から帰れば必ず室内着に着替える習慣がある。家ではジャージか短パンだ。

山でも同じで、荷物が増えるとわかっていても短パンを持ってきてしまう。

誰もいないなら下着だけでもいいのだろうが、今回は誰か来るかもしれないので短パンにしている。

妻のいしと付き合い始めた頃、僕が帰宅後すぐに着替えるのを見て、彼女は驚いていた。彼女には「着替える」という文化があまりなく、室内でもデニムのまま平気なタイプだったのだ。

今では僕に倣って、彼女も家に帰ると室内着に着替えるようになった。

18:14
まるで夕食後の「もう寝るだけ」といった風情だが、実はまだ何も食べていない。湯沸かしも雑務もすべて終わって、ようやく暇を持て余してから夕食に取りかかるつもりだ。

なにせネットも繋がらない山の中。暇を楽しまないともったいない。早寝だけはしたくない。

18:23
湯沸かしが一段落し、ベンチの荷物を小屋内に運び込んだ。これで屋外活動は終了。

ちょうどガスが晴れたので、最後に自然を背景に記念撮影を一枚。

あいにく、僕はおしっこを我慢する少年のような内股姿勢になっている。短パンのせいで足に虫がダイレクトに寄ってくるのだ。

カメラ目線は死守しつつ、「早く撮影終われッ」と内心で叫んでいた。

18:54
ようやく日没。

虫が怖くて小屋に引っ込んでいたが、日没の瞬間を見たくて外を出たり入ったりしていた。

いよいよ日が沈む。

避難小屋の中は洞窟のように暗く、何もない。長居して楽しい場所ではないので、外で時間をつぶす。

18:55
日没で黒く沈んでいく巻機山。

18:57
ようやく夕食開始。

ウレタンマットを敷き、その上に寝袋を広げる。いつでも寝られる体制だ。外が明るいうちに準備しておかないと、真っ暗になってからでは何もできない。

便利な山小屋に慣れている身には、暗いのが当たり前の避難小屋は少し落ち着かない。

19:13
あらためて夕食。

今度は「クラウスターラー」というノンアルコールビールを開ける。

19:16
暗闇の中で一人食事。

寂しさはない。むしろ、この絶景を独り占めできたことに深くじんわりと感謝していた。快く送り出してくれた妻、そしてこの地球そのものに。

写真で見るとわびしく映るが、心の中は満たされていた。

そんな気持ちにさせてくれるのが、巻機山だ。

19:54
一人の山メシは、あっという間に終わる。

そのあと明日の準備を少しして、20時を機に寝ることにした。

その前に、最後に外の様子を確認する。

驚いた。まだ明るさが残っている。白夜か?と思うほどだ。

カメラで撮影したせいで多少誇張されているが、西の空は確かにまだ明るかった。

6月18日って、こんなに暗くなるのが遅いのか。全然知らなかった。

都会で暮らしていると、西の空に日が沈むという実感が薄い。ビルの陰に太陽が隠れるだけの世界だった。だから、こんな当たり前のことさえ新鮮に感じる。

(つづく)

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