
07:02
牛ヶ岳に向かう木道を歩く。
お日柄に恵まれた絶景というのもさることながら、この周辺に誰一人としていないのが気持ちよすぎる。間違いなく、この先には誰もいない。
たった1人で、この笹に覆われた道を歩く。
これで標高が2,000メートル足らずなのだから、愉快だ。さすが豪雪地帯。一般的な森林限界なんて関係なく、樹林帯がなくなってしまう。
ただし、登山口が標高740メートルほどと低いため、山頂に辿り着くまでにそこそこの標高差を稼がないといけないのは事実だ。結局、絶景を見るためのしんどさは、他の高山と変わらない。

07:03
階段を登っていく。
巻機山が1,967メートル、牛ヶ岳が1,961メートル。
道中、だいたい標高30メートルほど下がって、30メートル登り直すことになる。
だから、登りといっても気が楽だ。

正面が牛ヶ岳。
本当に美しい景色だ。見渡す限り、笹野原。
なるほど、これは歩く価値がある。巻機山のピークハントをやって、慌ただしく下山するのはもったいない。この絶景は、そうあちこちで見られるものではない。

07:05
そして、振り返ってみたときの景色もすばらしい。
これまでニセ巻機から見てきた景色の裏側を見ることができるからだ。
巻機山は四方に裾野が広がる雄大な山容というより、案外細い稜線で成り立っている山だった。そのため、こうやって山頂から20分足らず歩くだけで、山を遠巻きに眺めることができる。ニセ巻機とは真逆の角度から。
「あれが巻機山山頂」と明確な場所はよくわからないのだけど、相変わらず割引岳のトンガリは目立つ。いい山だな、割引岳。

池塘の横を歩いていく。

池塘と、巻機山、そして割引岳。

牛ヶ岳の山頂直下。最後は少し登りが待っている。でも、ここも道が大変よく整備されていて、歩きながら恐縮してしまうほどだ。

07:09
牛ヶ岳山頂。
避難小屋から写真を撮ったりしながらゆっくり歩いて、約1時間。
山頂標識はない。地図と現場を見比べられる人だけ、ここが牛ヶ岳だとわかる。
相変わらず、ここでも倒れた標識が転がっている。

三角点があるから、間違いなくここが牛ヶ岳。
巻機山には三角点はなく、ここ牛ヶ岳と割引岳に三角点がある。
山頂標識がないのが、味わい深くて良い。静かな山歩きにふさわしい、静かな到達点だった。
三角点の柱石には、右から左に向けて「三等」と書かれていた。ずいぶん昔に設置されたものだとわかる。

写真を撮ったはいいが、その写真がどっちを向いて撮ったものなのか、わからなくなることがある。特に山頂付近で360度眺めがよいときは、なおさらだ。
これは東側を向いて撮影した写真・・・だったと思う。たぶん。
眼の前に1,896メートル峰、その背後に1,834メートル峰が見える。
美しい稜線だけど、そこに通じる道は見当たらなかった。牛ヶ岳山頂のすぐ脇からこの稜線は伸びているのだけど、実際に登山道の分岐はなかった。
ここから先、稜線を歩いていくとどんどん山深くなる。今でも十分山深いというのに、これ以上ないくらいの山奥に入っていくことになる。途中で小屋はないし、エスケープルートもない。
もの好きは世の中にいるので、ここを歩く人もいるのだろう。しかし、そんな人が少ないことは、登山道の痕跡が見当たらないことからも明らかだった。残雪期になら、歩く人がいるのかもしれない。
はるか遠くにちらっと見える、標高の高い山はどこだろう。平ヶ岳だろうか。
(つづく)

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