
06:45
前方にケルンが見えてきた。どうやら、あれが巻機山の真の山頂らしい。
真の山頂ってなんだよ、とは思いつつ、それでもあのケルンに辿り着くまでは「登った!」という達成感はない。

06:46
山頂直前。
僕は登山のとき、山頂手前からの撮影を好む。というのも、山頂で「ここが山頂です」と撮っても、写るのは標識と周囲の風景だけで、登った山そのものの姿は映らないからだ。
それでは物足りないので、山頂の少し前から、山のフィナーレを収めるように撮るようにしている。そのほうが「ここまで頑張ったんだ」という記憶が残る。
それに、山頂にはたいてい人が多い。ときどき標識の前に座り込んで動かない人もいる。
できるだけ人を写したくない僕としては、遠景から撮るほうが安全だと思っている。

06:47
巻機山山頂到着。
驚いた。登山道の真上にケルンが置かれているだけの、あっけない場所だった。噂どおり標識は一切ない。どうやら、標識を立てた人は先ほどの御機屋こそ山頂と考えているようだ。
ケルンの前で記念撮影をする。
本当は自分が写らない写真にしたかったが、それだとただの「通りすがりのケルン」になってしまう。仕方なく、にこやかな顔を横に添えた。
そうでもしないと締まりが悪い山頂。それが巻機山だ。
しかしそんな山頂だからこそ、この山の優美なシルエットが引き立つ。
写真の奥に見えるのがニセ巻機。あいつが邪魔をして、下界から本物の巻機山が見えないというのも、まるで計算された演出のようだ。

06:52
つくづく感心するのが、さりげない山頂を越えると、何事もなかったように広がる湿原と木道だ。
こんなに控えめな山頂、日本百名山でも珍しい。
リフトで行ける車山(霧ヶ峰)や、山頂が少し地味な天城山などもあるが、それでももう少し山頂らしい演出がある。
いや、これは皮肉ではない。こうして主張しない山頂だからこそ、どこか神々しさが漂う。
天女が機織りをしていたという伝説も、今なら信じられる気がする。
「高天原はここにあった」と言いたくなるほどの静けさだ。

06:52
池塘を楽しめる山歩き。会津駒ヶ岳でも山頂の先に池塘エリアが待っているが、それとよく似ている。

06:54
木道の分岐点が見えてきた。
おっ?こんなところで分岐?

押し倒された標識が何本も倒れている。
撤去せずに新しいのを建ててはまた倒れ…を繰り返しているのだろう。どれほど雪にやられているんだ。
奥にまだ立っている標識があり、「朝日岳方面縦走路」と読めた。

木道が稜線に向かって伸びている。
この道を進めば、谷川連峰の一つ・朝日岳にたどり着く。

道は整備されているように見えるし、山も雄大で草原歩きのようだ。見た目は最高の縦走ルートだ。
だが地図には「悪路」とある。今見えている部分こそ整っているが、この先は歩く人が減って道が不明瞭になるのだろう。
ちなみに、この稜線が新潟県と群馬県の県境だ。左が群馬、右が新潟。境界線を歩くというのも、なかなか気分がいい。

06:57
南への縦走路を見送り、北の牛ヶ岳方面へ向き直る。
東の稜線が雄大に伸びていて、また歩きたくなるような美しさだ。
よく見ると、写真右奥に湖がちらっと見える。
あれは群馬県の最深部、奥利根湖だ。
(つづく)

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