圧巻の山、圧倒する虫【巻機山】

金属プレートがはめ込まれた石碑があった。

読むと、東京農工大学探検部によるもので、おそらく部員であった人が遭難死したことを記録に残すために建てたものらしい。

07:21
ここから折り返し。牛ヶ岳山頂を経由して、巻機山に戻る。

正面に奥利根湖が見える。

とんでもない山奥なのだけど、1/25,000地図で見ると、奥利根湖から派生する沢のあちこちにきちんと名前が付いている。沢登りをする人や釣り師の通称ではなく、国土地理院が正式に認めた地名になっているのが興味深い。

こういう山奥でも、人の手が入っているということだ。

名前は独特で、「一バンテ沢」「二バンテ沢」・・・と続いて「五バンテ沢」まである。他にも「ハモン沢」「東ゴンボリ沢」など、地図を眺めているだけで楽しい。

巻機山から牛ヶ岳に向かう道はずいぶんご機嫌な道だった。でも、その逆、牛ヶ岳から巻機山に向かう道はもっとご機嫌な道だった。

どうだこの景色。

6月ならではの、残雪を眺めながらのトレイルは楽しい。

「ああ、地面近くはずいぶん雪が溶けているな。1週間後にはどこまで溶けているかな」と気にしながら歩く。

07:25
巻機山方面。

07:26
それにしても、この山のあらゆる標識や人工物がなぎ倒されているのはすごい光景だ。

登山道と自然を区切るためにロープを張る鉄柱が、ぐにゃりと折れ曲がっていた。

おい、なにがあったんだ?

街中なら除雪車に押された雪の圧で潰れることもあるが、ここではそんなことは起きない。

太い鉄がこれほど曲がるのは、台風や豪雨の仕業ではない。消去法で考えると雪の重みしかあり得ないが、太平洋側の都会暮らししか知らない僕には、雪がどうやって鉄を捻じ曲げるのかまったく想像がつかない。

07:34
谷川岳方面へ向かう稜線との分岐。

笹と、名前も知らない草が生い茂る地帯。1年のうち数ヶ月を雪に埋もれて過ごすというのに、よく生きていられるものだ。生きるって一体なんなんだ。

残雪の向こう側に、先ほど横を通り過ぎた織姫の池、そしてその先に割引岳。

07:36
前方からいきなり人が現れたので、思わず声が出た。

えっ、もう人が来た?早い!

もちろん今日の朝、登山口から入山した人だ。避難小屋に泊まったのは僕だけだから。7時半でもう山頂にいるなんて、どれだけ早く登山を始めたんだろう。朝3時?それでもこの時間に山頂というのは、かなりのハイペースだ。

早い人は早い。もう僕がこの山を独り占めする時間は終わりを告げた。

それでも、半日以上も独占できたのだから、思い残すことはない。

(つづく)

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