圧巻の山、圧倒する虫【巻機山】

2023年06月19日(月) 2日目

05:38
2日めの朝が来た。

巻機山の稜線の向こうから、朝日がすっと顔を出す。今日はどうやら一日いい天気になりそうだ。

この絶景の中を、青空の下でのびのびと歩けると思うと、それだけで気分が上がる。

これまで何度も絶景トレイルを歩いてきたけれど、雨やガスで「山頂に着いただけ」で終わった山も少なくない。あのとき、もしかしたら腰を抜かすほどの景色を見逃していたのかもしれない。

もし僕が百名山を短期間で踏破できたら、次は「悪天候で登りきれなかった山をもう一度登る旅」をしてみたいと思っている。けれどそれは、体力と年齢の綱引きだ。

60歳までに百名山を登りきり、65歳までに登り直しの課題を片付ける。そのあとは、年齢に合わせてゆるやかに山と付き合うつもりだ。山で遭難したら、家族が悲しむどころじゃすまない。

05:40
起きたらまず、お湯を沸かす。

昨日のうちに汲んでおいた水を、ジェットボイルにかける。

結局この避難小屋では、ハイドレーションに補充するほどの水は確保できなかった。夕食の湯を沸かすのがやっとだった。

ジェットボイルは頼もしいほど早い。ただ、冷ます時間がなかったのと、広口のジェットボイルから狭いハイドレーションに移す方法がなくて断念。次からはろうとを持ってこよう。教訓だ。

05:46
コーヒーの粉を持ってきていたので、フレンチプレスで淹れる。

もちろん自家焙煎。ホンジュラスの豆。おかでん特製だ。

荷物が増えると分かっていても、避難小屋泊でテンションが上がっていたし、何より水の質を信用していなかった。

濁り水をそのまま飲むのは、いくら煮沸しても抵抗がある。ならばコーヒーにしてしまえ、という発想だ。色も匂いも味も、ぜんぶコーヒーの勝ち。

結果として、現地の水は驚くほど澄んでいて拍子抜けしたけど、まぁそれはそれでいい。

本日の朝ごはん。

モンベルのビビンバリゾッタ。

モンベルはウェアだけじゃなく、食料まで自社ブランドで展開している。直営店に行くと、山に関するものが何でも揃うから、つい余計な買い物をしてしまう。

気づけば、服もギアも食料もモンベル。頭の先から胃袋の中までモンベル尽くしだ。

06:09
アタックザックは持ってきていないので、山頂まではそのままのザックで行く。

荷物を軽くするため、寝袋やマットなどは小屋のそばに置いていく。

大丈夫。ここに泥棒が来るほど物好きな人はいない。登山口から数時間かかる場所だし、夜明けに入山したとしても、僕が戻る頃にようやくたどり着くくらいだ。

06:09
2日めの登山スタート。

笹の中に細い道が続き、尾根へ向かって伸びている。

そういえば、この時間帯は虫がまったくいない。夜の冷え込みで静まっているのか、まだ寝ているのか分からないが、とにかく快適だ。

昨日の夕暮れも、虫さえいなければ完璧だったのになぁ。

06:11
小屋の近くに、笹が刈られたスペースがある。

テン場のように見えるが、巻機山は全域で幕営禁止。だからここもテントは張れない。たぶん資材置き場だろう。

06:12
景色はいいけど、道はまっすぐで息が上がる。見た目よりずっときつい。

一晩しっかり休んだ僕には余裕があるが、山麓から日帰りで登ってきた人には、ここが最後の試練になりそうだ。

ただ、道は本当によい。単に笹を刈り取っただけの道ではなく、わざわざ石を敷き詰めて道を整備してくれている。感謝の気持ちで、一歩一歩前に進む。

06:14
振り返ると、避難小屋が小さく見える。左にはニセ巻機。

06:17
よく整備された木道を歩く。

幅が狭いので、すれ違うときはちょっと気を使う。でも今は誰もいない。完全に山を独り占め中だ。

この「山を独り占めしてる感」は初めてで、ちょっとした優越感すらある。いずれ麓から人が登ってくるだろうが、今は確実に僕ひとり。巻機山周辺に泊まれるのは、僕がいた避難小屋だけだから。

正面には、穏やかな巻機山の山頂。まるで霧ヶ峰のあたりみたいに、のびやかで気持ちがいい。

(つづく)

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