早速風呂場に行ってみる。もちろん温泉や大浴場は好きだ。あらゆる旅行において旅行の最大の楽しみ、といっても過言ではない。しかし、今回のように「どろんこで畑仕事をやった後の風呂」というシチュエーションをいざ知ってしまうと、これまでの入浴体験がいかにショボかったか、ということに気がつく。野良仕事後の風呂、最高やで!
登山のあとの風呂、というのも同じように泥んこになっているので快感だ。しかし、往々にして「日焼けした肌が痛い」とか「靴ずれした足がひりひりする」といった物理的問題に加え、「縦に細長いザックの奥底から衣類を引っ張り出し、汚れた服をまたザックの奥に押し込むプロセスが面倒くせぇ」といった問題もある。風呂に集中しづらい。
その点、ちゃんと自室があって、荷物を置いて、一息しっかりつくことができて、体がヘロヘロになるほどは疲労しておらず、今日はまさに風呂日和。
男性専用のカプセルホテル併設の風呂というだけあって、スペースがゆったりしている気がする。
同性愛者の巣窟だとか、男ならではの汚さとかくささといったものは皆無。新しい施設なのだろうか、全体的にとてもきれいだ。
このホテルは、風呂の脱衣所の隣がランドリーとなっている。2時間200円を払えば、ここにおいてある洗濯機、乾燥機だけでなくアイロン、ズボンプレッサーも使うことができた。
野良仕事で汚れた迷彩服を洗ってみたが、これは便利だ。東京から持参する衣類の数を減らすことができる。汗をかいて汚れる仕事をするため、今回は一泊二日とはいえそれなりの衣類を持ち込んでいた。しかし洗濯ができるとなれば、ぐっとその数を減らすことができる。ありがたい。
ただし、2時間で衣類を洗って、乾燥まで完了させるのはさすがに無理だった。大型のコインランドリーにあるような大出力の乾燥機ではなかったからだ。生乾きのまま自室に持って帰ることになった。自室のクローゼットは風通しが悪いので、衣服が雑巾臭くならないかやや心配ではあった。
こういうランドリーの場合、洗濯機と同じ数の乾燥機だったら、絶対に乾燥機で渋滞が発生してしまう。洗濯が30分程度で終わるのに対し、乾燥は2時間以上かかるものだからだ。
自分の衣類が、「邪魔だコラァ」とばかりに床にぶちまけられ、ほかの人の衣類に乾燥機を乗っ取られていないか心配。そのため、何度もランドリー室にやってきては状況を確認することになった。
ランドリー室往復を繰り返しながら、階下の7階も探検してみる。いわゆる普通のカプセルホテル状態になっている5階より下も探検してみたかったのだが、自分が宿泊しているフロア以外には立ち入ってはいかん、と階段のドアに書いてあったのでやめておいた。なので僕が出入りできるのは、自室がある6階、共用スペースがある7階、フロントとランドリー、風呂がある8階だ。
7階のフロアマップ。
ラウンジ、マッサージ店、食堂があるらしい。
驚いた。ラウンジ、とされているところは漫画喫茶状態になっていた。壁一面に書架が設置されており、漫画がぎっしりだ。そして、フロア内にはテレビ付きのリクライニングチェアが設置されており、館内着を着用した人たちが漫画を読みふけっていた。
食堂から飲み物を調達することもできるようで、一杯飲みながらの人もいる。
この部屋も、寝室があるフロア同様に静かで、窓がなくて重たい空気だ。ずっしりとした雰囲気がある。様子を見たら、そーっとこの場を去る。
ラウンジを出たところには、マッサージ屋があった。
ふーん、マッサージか・・・。
最初は興味なく店頭のタリフなんぞを眺めていたのだが、だんだんその気になってきてしまった。「農作業で疲れた体を癒すにはマッサージはいいんじゃないか?」と。
いくら机と椅子が完備されている自室とはいえ、長居して快適な場所ではない。そして、一人ぼっちでの宿泊だ。部屋にこもっているよりも、外に出ていたい。かといって、館内着を着てくつろいでしまったし、乾燥機に突っ込んでいる衣類も気になる。今更すすきのに突撃する余裕がない。
だったら、マッサージというのもいいかもね。
いかん、どんどん「マッサージ、やるー!」という方向に頭が傾いていっている。
結局その気持ちに抗うことができず、タリフを物欲しげにガン見したまま店頭に立ち尽くしていた僕を見かねた店員さんが「いかがですか?」と店の奥から出てきた。その言葉、待ってましたァァァァ!売られた喧嘩は買うしか!とばかりに、マッサージをお願いした。
「1時間お願いするのはちょっと贅沢すぎるから、40分にしよう。それだったらまあ、いいんじゃないか」
なんて適当な理由をつけつつ。
風呂に入り、汚れた衣類を洗い、マッサージを受けて「もう今日は心残りがない」状態になったおかでん。放心状態で自室に戻り狭いスペースに体を押し込みつつコーラをぐいっと。
コメント