なんとかぐるっととうきび畑の周囲をネットで覆った。ぐるっと取り囲んだ杭とネットは、一本だけ地面深く刺していない。必用に応じてその杭を動かし、人間様が中に入るためだ。動物を締め出しただけでなく、人間まで締め出されてしまったら農業をやっている意味がない。
ネットの高さは、大人の胸くらいだった。さすがに四足動物なら、走り高跳びの選手みたいにこのネットをするりと飛び越えてくるのは無理だろう。
とうきびが鳥の餌食にならないのは幸いだった。空からの攻撃も想定して守るとなると、いったいどんな城郭をこしらえればよいのやら。それを考えると、果樹園というのは大変なんだろうなと思う。
しかし、これで終わりではない。ネットは風を受けてそよそよとたなびいている。これではいくらでも隙間ができるし、隙間ができれば動物たちの格好の玄関になる。
そこで運び込まれた、ビニール袋いっぱいの青い器具。なんだこれ?
ちくわを半分に切ったような樹脂製品。これを「パッカー」という。
ネットを巻き込みながらパッカーを杭に噛ませると、ネットがピシッと引き締まるというわけだ。
つくづく、農業ってのは初期投資がかかるものだな。「土地と、種さえあればできる」という原始的な行為だけど、ちゃんと収穫しようとすると手間がものすごくかかるしお金もかかる。ネットは200メートル以上用意しているだろうし、杭だってかなりの数になる。パッカーだって多い。これらをイチからそろえるとなると、げっそりする出費になる。「まずは漁船が必用になります」という漁業と比べるとそれでも初期投資は少ないのかもしれないが、いずれにせよ大変なことだ。
それを思うとスーパーとかで売られている野菜って安いものだな、と思う。ちゃんと儲かっているのだろうか、と心配になる。
パッカーを杭にはめる。
なるほど、かっちりはめてみるとわかるが、このネットは上に向かってオーバーハングするようになるんだな。これで動物の侵入をより防ぐというわけか。
しかし、ピンとネットを張ってみたら、どうも地面の部分が心もとない。正面から動物が突撃してきたら、ネットで防ぐことはできる。しかし、こずるい動物は、地面とネットの隙間にすぐに気がつくだろう。地面を掘って隙間を作り、そこからまんまと畑内部に侵入するのは明らかだった。
というわけで、ネットが地面に垂れ下がってあまっている部分に、土をかぶせて重しとした。これも、掘り返されたら一巻の終わりだが、そこまで動物が賢いのか、それともこれで人間様が逃げ切れるのか、勝負だ。
「ほら、こっちにまだ土があんまりかかっていない」
などと相互チェックをしながら、とうきび畑ぐるり一周のネットに土をかぶせて回った。入念に作業をやって、無事完了。
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