鉄砲の訓練所から目抜き通りを挟んで向かい側には、「甲胄忍者変身小屋」という看板を掲げる屋台があった。今年はいろいろ考えているなあ、さすが第30回記念大会だけある。
どうやら、ニンジャや武士の仮装をさせてくれるらしい。
すでに僕らはゼッケンも装着し、臨戦態勢だ。今から鎧を身にまとうというのは、ちょっと面倒くさい。そこで、僕らを代表しておやびんに「変身」してもらうことにした。彼女だけはレースに出走しないから、身軽だ。
とはいえ、肝心の変身する当人が、すでにコスプレ状態の格好になっている。みつばちハッチのような、というたとえをすると古くさいが、ハチのような黄色と黒の縞模様の服を全身に身にまとっている。すごいファッションセンスだが、案外これが白い雪面に映える。よくこの服を店頭で買おうと思ったものだ、とその大胆な決断力に驚かされる。
利用する人の名前を書く名簿の下に、スタッフ向けの注意事項があれこれ書いてあった。
どうやら甲胄、黒忍者、赤忍者のコスチュームがそれぞれ2セットずつあるらしいということ、30分間その格好で周囲を闊歩できること、そして「インバウンド対応企画なので外国人優先」ということはわかった。
幸い誰も利用者がいなかったので、生粋のジャパニーズのおやびんでも甲胄装備をさせてもらえた。
スタッフ二人がかりで、すね当てを装着中。おやびんはただ立ち尽くしてなすがままだ。
それにしても、「赤忍者」って何だろうな。くのいちを映像で描く際によく描かれる色だけど、実際にそんな忍者がいるわけがない。一体いつから「赤い忍者」が登場するようになったのだろう?時代劇ではいくらなんでも出てこないだろうから、TVのコント番組か何かだろうか?
なるほど、これは一人で装着するのは無理だ。何しろ身を守るための全身装備だ。セーターを着るかのように、スポッとかぶるわけにはいかない。
しばらく時間がかかったけど、無事装着完了。軍配も手渡され、すっかりご満悦のおやびん大将。
しかしこの装備だと、日本刀で切りつけられたらひとたまりもないな。胴体を切りつけようとしたならガードができるだろうけど、四股を狙われたらもうアウトだ。
それを思うと、西洋のガチャガチャした金属の甲胄というのはすごいよな。そこまで全身を覆い尽くすか!というくらい、身を包んでいる。あんなの、身軽な格好の敵に跳び蹴りを食らったらイチコロじゃないか?と思うが、西洋ではあの格好がベストな解だったのだろう。日本とは大違いだ。
そうこうしているうちに、村山統括軍師殿が場内視察をなさっているのを発見。呼び止めて、写真を撮らせてもらう。今日もこのひげ親父、いいキャラクターだ。
この茶色い鎧を装着している姿しか見たことがないのだけど、「十日町市の市議会議員」としての村山さんのオフィシャルサイトに行くと、当然「普通の格好をしている村山さん」を見ることができる。「あっ、普段から鎧をしているわけじゃないんだ」と当たり前すぎることに、驚いてしまう。
「お願いですから今年こそハワイに行かせてください」
と全員で懇願しておいた。
甲胄忍者変身小屋のすぐ隣が、よりによって警察官詰所になっていた。
「おまわりさん!この人、刀を持ってます!銃刀法違反です!」
と密告してみたら、ちゃんとおまわりさんはおやびんの刀を検分してくれた。「うん、これは大丈夫」とのこと。密告しておいてなんだが、身内から逮捕者が出なくて良かった。
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