
08:31
上高地帝国ホテルのロビーラウンジカフェ「グリンデルワルト」。
二階まで吹き抜けになっていて、その二階からはクマの毛皮が吊り下がっていた。迫力があるし、山岳リゾート感がある。「山岳リゾート感」ってなんだよ、とは思うが。
よく、こじんまりした温泉旅館に泊まるとごちゃっとしたロビーに鹿や鳥の剥製が飾ってあるものだ。しかし、随分年季が入っていて埃っぽく見えて、かっこいいという印象は受けない。
やっぱり、剥製を飾るというのは「広い空間」があってこそのものなんだろう。あと、剥製だと生々しいので、都会ぐらしの僕はギョッとする。このホテルみたいに毛皮だと、大丈夫だ。

グリンデルワルトの店内。
机はともかく、椅子がリパだ。重厚感があるし、幅広だし、座面のソファがかなり分厚い。
これ、毎日掃除機をかけるために椅子を動かしているはずだけど、かなりの重労働だ。ホテルマンは力仕事でもあるのだな。

こういうのを「映える」だなんて言葉で形容するのはチープだと思う。せっかくのしっとりした時間を、単なるギラギラした消費に転換しているようで。
本当なら、写真なんて撮らないほうがいいのだろう。SNSやブログにアップロードしないにしても、「撮る」という行為が今この時間を安っぽくしているように感じる。

08:40
今回は暖炉脇の席に座ってみた。
石で組まれた平らな暖炉で、まるでキャンプファイヤーでもやるかのようだ。で、そのまま火を焚くと煙がもくもくと出るので、石垣をすっぽり覆うサイズのメガホン型煙突が上から吊り下げられている。圧倒的な光景だ。これを見るだけでも数百円分の価値がある。
今は朝なので暖炉に火がくべられていないけれど、夜になったら火が灯るのだろう。いいなあ。でも帝国ホテルは一泊素泊まりで3万円近くしたような気がする。さすがに僕の財力でここに泊まるのは無理だ。

ホテルブレンド、と名前がつけられたホットコーヒーをいただく。
たっぷりのミルクと、粉砂糖も添えられている。「こんなにミルクが入っていても使い切れないですよ」と思うけれど、余らせるくらい予め用意するのがサービス精神なのだろう。
ちなみに、なんの変哲もないお冷でさえうまい。なので、コーヒーだってもともとの水がうまいんだから最高だ。

上高地GW3泊を終えた人の安堵の表情。
本はまだ読みかけなので、もう一泊でも二泊でも余力はある。防寒対策はコツがつかめたし。でも、今日中に東京に戻らなくちゃ。

ボーイさんに頼めば、何杯でもコーヒーのおかわりができるのがホテル喫茶の特徴だ。
正直言うと、他の客の応対をしたボーイさんが僕の横を通り過ぎる際にコーヒーカップを確認し、こちらから何も言わなくても「おかわりはいかがでしょうか?」と聞いてきてくれるのが嬉しい。だって、わんこそばじゃないんだから、こっちから「すいませーん、おかわりください」というのはちょっと恥ずかしいから。
でもこの時間は他にお客さんがおらず、お店を独占していたためにボーイさんを呼ぶ必要があった。まあ、これはしょうがない。
僕はいつもコーヒーをブラックで飲む。砂糖もミルクも入れない。しかし、二杯目、三杯目と飲むならば話は別だ。せっかくたっぷりのミルクを用意してくれたのだからたまにはミルクコーヒーも飲んでみたくなった。
飲んでみたら、まろやかな優しい味わいになっって、心地よかった。

09:17
コーヒー一杯だけどクレジットカード払いをさせてもらい、上高地帝国ホテルをあとにする。
明神の「かふぇ・ど・こいしょ」を愛してやまない僕だけど、まったく毛色の違うお店としてこのグリンデルワルトも今後お世話になりたい。

09:24
9時30分のバスに乗るので、急いでバスターミナルに戻る。
所要時間7分。バスターミナルの駐車場に戻ってきた。

10:48
バスに乗って新島々へ。新島々から電車で松本を目指す。
電車には「令和」と書かれたヘッドマークが取り付けられていた。ああそうか、2019年5月1日から元号が「平成」から「令和」になったのだった。僕は令和最初のキャンプを上高地でやっていたのだな。

11:26
松本駅に到着。
アルピコ交通のホームから改札に向かう途中の跨線橋に、「工芸の五月」と書かれたフラッグがたくさん取り付けられていた。あ、お土産で買った松本ブルワリーのビールの名前だ。
てっきりビールの名前かと思ったけど、イベントの名前だったのか、これ。
調べてみたら、毎年5月に民芸をはじめとする様々な工芸品に関する展示やワークショップなど、松本のあちこちで開催されているらしい。そのイベントにあわせて、松本ブルワリーがイベント名を冠したビールを醸しているというわけだ。
https://matsumoto-crafts-month.com
去年のGWに上高地を訪れたときは、このイベントについて全然気づかなかった。今年から大々的に宣伝をするようになったのかもしれない。
(つづく)
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