地上の楽園を普段使い【小梨平ソロキャンプ2019】

2018年GW、世にあふれるザラザラした情報の渦から逃げ出したくて、僕は上高地に逃げた。

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3泊4日を上高地で過ごし、その間「適度な情報量、適度な楽しみ、適度な運動、適度な選択肢の少なさ、規則正しさ、そして一度上高地に入ったら、そうやすやすと下界には下りられないという覚悟と決心」を味わった。これは僕の気持ちを多いに落ち着かせ、そして深く達成感を味わうことができた。

読み捨てられるネット記事のように、最近では旅行という体験さえも消費される。旅行をすれば心が動き、記憶に残り、豊かな人生だったな・・・と死ぬ間際に思えるか?というと、そんなことはない。観光地に行く程度では、もはや経験を消費しているだけ、と感じるようになってきた。経験は「積む」ものであって、「消費する」ものではないのに、不思議な感覚だ。

その点、上高地はよかった。小梨平キャンプ場にテントを張ってソロキャンプ、という体験がワクワクさせられるし、深夜は氷点下まで気温が下がるという身の危険を感じるシチュエーションも「今、生きている。」という実感をビシビシ感じて楽しかった。

そんなわけで、1年後の2019年も、ソロキャンプで上高地を目指すことにした。前回同様、3泊4日の行程を予定している。気分次第で、長くしても短くしてもいい。

今年もGWにしたのは、まとまった休みが取りやすいからという仕事上の都合だけでなく、上高地にまだ人が少ないという理由が大きい。混雑したキャンプ場はイヤだ。人が少ない時期を狙っていきたい。

そして、新緑芽吹く4月末~5月だからこその美しさがこの地域にはある。夜の寒さをも面白く感じられる人であれば、GWの上高地訪問をおすすめする。ただし、氷点下-5度くらいまで余裕で耐えられる寝具の持参が必須になるけれど。

2019年05月02日(木) 1日目

6:33
上野駅新幹線ホーム、朝6時半。北陸新幹線の到着を待つ。

1年前の上高地行きは中央本線・特急あずさに乗って松本に入り、そこからアルピコ交通上高地線で新島々、バスに乗り換えて上高地・・・というルートだった。

今年は別のルートだ。一旦北陸新幹線で長野駅に行き、そこから高速バス「さわやか信州号」の長野~上高地線、通称「せせらぎ号」に乗って上高地バスターミナルに直接乗り付けることを狙っている。

長野経由だと随分距離が遠くなるイメージだけど、そこはさすが新幹線、在来線特急の比じゃないスピードでかっ飛ばすので、時間短縮効果が素晴らしい。所要時間はむしろ長野経由の方が短いくらいだ。これは首都圏のどこに自宅があるか次第、という要素もあるけれど、僕の場合はそうだ。

ただし、新幹線に乗るので松本ルートよりお値段は高くなる。その点は覚悟だ。

2年連続上高地キャンプ、いや、その前の2017年には焼岳登山の際に上高地を訪れているので3年連続だ。だから、せめて昨年のキャンプとは違うルートで上高地に入ろうと思った。ただそれだけの理由で新幹線を選んだ。

今回、荷物はスーツケース+25リットルのザックという構成で挑む。

昨年は38リットルザック+25リットルザックという構成だったけど、キャンプ用品一式を詰めるには随分不自由だった。登山用ザックは縦長の形をしているため、荷物の出し入れがしづらい。それが不満だったので、今回はスーツケースにしてみた、というわけだ。これだと、バカッと蓋が開いて、物の出し入れがしやすい。狭いテントの中だ、整理整頓は大事。

山奥でキャンプをやるのにスーツケースをゴロゴロ転がすなんて!と思うが、これは我ながらナイスアイディアだと思った。何しろ、新幹線で長野、そこからバスで上高地直行。乗り換えだのなんだのでゴトゴトすることが少ない。そして上高地のバスターミナルから小梨平キャンプ場までは徒歩で10分もかからない。しかも、河童橋まではとてもよく整備された砂利道で、河童橋からキャンプ場までも広くて安定した道だ。少々ぬかるんでいても大丈夫なはずだ。これが小梨平キャンプ場の特異な点だ。大自然なのに、便利の良さは格別。

ただし、前日夜になってこの考えが甘いということに気づいた。荷物、入らねぇぇぇ。改めて、登山ザックの拡張性というものを思い知らされた。

登山用のザックは、中に荷物が入らなければ横にくくりつけたり、ザックの上や下にくくりつけることができる。人が寝るためのマットレスなんてかさばるものは、ザック外部にくくりつけるに限る。そして、買い物袋に荷物を入れて、ザックからぶら下げることもできる。とにかく拡張性が素晴らしい。

一方、スーツケースにはそんな機能がない。ゴムバンドを用意するなど創意工夫で拡張性確保の余地はあるけれど、前日夜になってできることは限られた。あとはウンウン唸りながら、無理やり荷物を押し込むだけだ。

今回のキャンプに向けて、数ヶ月前からあれこれ思案していることがあった。寝袋をどうしよう?ということだ。2018年キャンプで、自分が持っている寝袋では氷点下4度で寝続けるのが厳しいことを思い知った。いっそのこと、ダウンのシュラフを買ってもいい、と思ったので検討を開始していた。

しかし、お店に行って実物を見ると相当でかい。アルパイン仕様ということでこれでも軽量コンパクトにまとめたのだと思うけど、だとしてもぎょっとするくらい寝袋が大きい。さすがに氷点下でも余裕な寝袋となると、重さはともかくサイズはどうにもならないらしい。

こんな寝袋を買うと、ザックのサイズを大きくしないといけなくなる。たぶん、僕が持っている25リットルザックは寝袋専用ザックになってしまう。それは困る。・・・じゃあ、大きなザックを買うか?50リットルとか、60リットルくらいの容量のやつ。

そう考え出すと、出費がきりがない。さすがに気が引けて、それだけの買い物をするのは諦めた。今後、どれほど「氷点下キャンプ」をやるかどうか見込みが立たないからだ。

結局、寝袋は昨年と同じものを使い続けることにした。快適な温度6度、限界の温度が0度という、上高地のGWにしては貧弱な装備を。

そのかわり、昨年よりも上高地入りの日程を少し遅らせて、GW後半にした。少しでも温かいほうが助かる、と心底思っているからだ。

でも、その程度では寒さはしのげない。そこで、今回の寒さ対策は3つ考えている。

  1. キャンプ場の受付で、毛布を借りる
  2. 力強い熱を発する、ハクキンカイロを購入して持参
  3. それでも寒い場合に備え、レインウェアを着込む

毛布のレンタルがあることは昨年から知っていたのだけれど、お金をケチったというよりも「自分が寝る支度くらいはせめて自己解決しなくちゃ」というプライドがあったから借りようとしなかった。でも今年は違う、われ堂々とレンタルす。

毛布なんて自宅にあるんだけれど、これを持参するとなると重いし、かさばる。レンタルする意味はある。

そして、何よりも心強いのがハクキンカイロの存在だ。

時系列が変だけど、こちらの記事にハクキンカイロのことを書いている。

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この記事だけ読むと、五十肩対策で肩を温めるためにハクキンカイロを買ったかのように読める。でも実際は上高地キャンプのために買ったものだ。

ハクキンカイロの迫力ある熱は、必ずや寝袋の中を温めてくれるだろう。むしろ、やけどを負わないように気をつけないといけないくらいだ。使い捨てカイロとはレベルが全然違う。

最後に、レインウェアを着込む・・・という案だけど、昨年は銀マットで体をぐるぐる巻きにしたら保温がきいてよかった一方、結露した水滴が顔にしたたり落ちてそれで目が覚めた経験による。レインウェアのフードを頭にすっぽりかぶれば、少しは水滴対策になるのではないか?という発想だ。

夜露をしのぐためのテントの中で、自分由来の結露で濡れるのを恐れてレインウェアを着る。変な話だけど、眠れればいいんだ。どうせテントの中は誰にも見られないんだし。

あと、最終手段として、キャンプ場の受付では湯たんぽのレンタルもある。これも悪くないんだけど、湯たんぽは明け方になるにつれてどんどんぬるくなる。一方、外気は明け方直前がもっとも寒い。どこまで僕を熟睡させてくれるのか確証が持てないので、想定には入れていない。そもそも、ただでさえ狭くて寝心地が悪い寝袋の中に、湯たんぽという巨大な異物を入れるのは嫌だ。

06:41
まあそんなわけで、これからの旅を楽しんでいきまっしょい、ということでドライゼロで乾杯。

療養生活という名目で、3ヶ月前に甲府1泊をした。

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このあとも体重が減り続けることになる。その経緯は↑の記事に詳しい。

結局、2019年11月に体重は下げ止まったけど、そのときが72キロ。1年で19キロも痩せたことになる。無茶苦茶だ。

ちなみに12月に僕は結婚したので、そこに向けてドタバタしていたのが痩せた原因だと思う。まあ、痩せた姿で結婚式の記念写真を撮影できたのでよかった。

08:13
長野駅到着。1時間40分くらいで東京から長野に着いてしまうので、あっという間だ。

東海道新幹線だと、「ひたすら続く静岡県」というエリアがあるので、名古屋についた頃は「ああ、旅をしたなぁ」という気になる。しかし、北陸新幹線で長野に着くと、道中に埼玉県やら群馬県やら、田園風景やら山岳エリアやら変化に富んでいるので「あれっ、もう?」という感じがする。

ひとまず、朝ごはんを食べる。

駅改札を出てすぐのところ、コンコースに「ナカジマ会館」という立ち食い蕎麦店があるので、そこでぱぱっと食べていくことにした。

てっきりこの食事記録は「蕎麦喰い人種行動観察」コーナーで書いていると思ったのだけど・・・調べてみたら、忘れていた。

今回はイベント豊富な旅行だったので、旅行後の後片付けやら写真の整理やらに気を取られ、蕎麦の記事を書きわすれたらしい。

信州きのこそばを食べる。

うん、朝に汁ものを食べると活力がでるな。ダメ押しで、卓上の七味をかけて辛くしてもう一発活力をひねり出す。

08:24
長野駅東口。ここに高速バスのりばがある。

ちょうど目の前で、アルピコバスが出発していったので肝を冷やした。やばい、上高地行きのバスの時間を勘違いして、乗りそびれたか!?と。

どうやらあれは白馬行きのバスで、僕とは無縁だったようだ。

前回、ここでバスに乗り遅れた経験があるので、それが思い出された。

 改めて長野駅東口。広大なロータリーを誇っている。そのため、バスのりばは横一列で事足りる。方面別に島式のバスのりばがずらずらと並ぶことはない。

08:26
おっと、今まで知らなかったけど、東口ロータリーのところにも立ち食い蕎麦のお店があるんだな。「水芭蕉」という名前なのか。この時間でもやっている。

メニューを見ると、かけそば370円から。

全部のメニューに「(特上)」という記述がある。なるほど確かに。東京都心の立ち食い蕎麦店でも、かけそばで370円はしない。それだけ材質にこだわっているということだろう。

石臼挽き信州そば、とか信州鹿肉そば、といった「おっ?」と気になるメニューもある。今度長野駅を利用する機会があったら、ここで食べてみよう。

(つづく)

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