疲れ果てて雪国【那須湯本】

温泉神社鳥居

12:34
バス停すぐのところにあるのが、温泉神社の鳥居。地面が雪で白く埋もれ、鳥居自体も白いのであたり一面モノクロの世界だ。

温泉神社自体には何度も訪れたことがあるし、特に目新しさはない。こんな寒い時期だからあえて今行く必要はあるまい・・・と、思っていた。しかし、やっぱり那須湯本に訪れておきながら、温泉神社さんにごあいさつしておかないのは失礼だと思ったし、療養をやってるなら、ほら、なんか悲壮感があったほうがいいじゃん?神社に朝晩とおまいりして、「早くよくなりますように」っていうポーズ、とりたいじゃん?だから行ってみることにした。

おいお前いい加減にしろよ、ポーズのために神社行ってるんじゃねーよ。

人気のない温泉神社

12:36
ポーズというのは冗談として、この鳥居から先まっすぐ伸びている白と黒の世界に魅了されたのが真相だ。辺りには誰もいない。そして、以前ここを訪れた人の足跡も消えてしまうほどの新雪。そこを、わっさわっさと歩いて除雪していく我が頼もしき二本足。

写真だけ見ると、ひたすら寒くてわびしい光景だろうが、実際はかなり楽しい空間だ。少なくとも、普段雪になじみがない都会暮らしの人ならば。

ここまで自分で好きにできる新雪があるとなると、もうこの際だから五体投地しながら前進していこうか、と真剣に考えてしまう。そのほうがご利益ありそうだし。・・・って待て、五体投地はチベット仏教のやり方だ。神道でそれをやっても、神様は「バカじゃねーの」くらいにしか思ってもらえずご利益がないと思う。やめとけ。

温泉神社を歩く

12:37
ひたすら白と黒の世界。そういえば自分も黒いジャンパー、濃い色のデニムを履いている。この光景に溶け込んでいるかのようだ。このまま生命のスープに溶け込んで「おめでとう」と言われたい。

石段

12:38
「ハハハ!早くこっちにおいでよ!」
「もー、おかでんさんたら!待って!」

いや、なんでもないです。単に写真にそういうキャプションをつけてみたくなった40歳独身男性既婚暦ゼロ。それもこれもこういう雪の世界にいるからです。

冗談はさておき、こういう世界の中を歩くというのはセラピーとしてとても良いと思った。生い茂る草木とか人ごみ、といった情報が全くない。自然の中にいるものの、かなりそぎ落とされた情報の中を歩く。脳が疲れない散歩だ。単に情報量が少ない場所を歩くのならすぐに飽きるだろうけど、ここは「適度に」情報がある。だから飽きない。それがいい。

また、差し込むような冷気が身を包み、「自分と、そうでない外部」との境界線をきっちりと認識できるのもいい。生きている証、というか。

鳥居

12:39
温泉神社の参道はとても長い。目の前に鳥居があるので、そこにたどり着いたらもう本殿・・・かと思ったら、またその先まで参道は続く。

温泉神社本殿

12:41
ようやく温泉神社の本殿到着。雪が積もった屋根はいかにも日本の冬といった風情で、なんだか一足早く「あけましておめでとう」と言いたくなる。

温泉神社のh条札

12:42
温泉神社の看板。・・・いや、「看板」という表現はさすがにまずいか、ええーと、なんていうのがいいのかな。宛名ラベルじゃないし、額縁でもないし。まあ、とりあえず「表札」?それも違うけど。

ここには「延喜式内」という字がバーンと誇らしげに書いてある。今から1,000年以上前に編さんされた神道のお作法などをまとめた「延喜式」に記載されている由緒正しい神社ですよ、ということだ。そりゃー、源平合戦の那須与一が祈願したという言い伝えが残っているくらいだ。その当時は既に知られた場所だったんだろう。

日本の神社って、「嘘だろ?」という時代から脈々と続いているところが結構あるよな。まだ大和朝廷が日本を平定していないだろ、というときに創建されていたりする。あなどれんなー。平安時代なんて、この那須の地といったら都からするとド辺境だったはずなのに、よくぞまあと思う。新幹線とか車があったわけでもないというのに。明治時代くらいまでは、湯治に行く・・・なんてのはそれそのものが決死の覚悟だ。時間も、お金も、体力も必要だからだ。湯治場に行くだけで一週間とかかかってたら、それまでに成仏しちまう。ヤバくなる前に湯治に行くという割りきりが必要だ。

人気なし

12:44
本殿から今歩いてきた参道を振り返る。相変わらず、誰もいない。静かに時が過ぎる。

このままここでじっとしていてもいいな、と思った。

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