
12:50
温泉神社を後にし、バス停まで戻ってきた。そろそろお昼ごはんにしようと思う。
バス停脇に足湯があるので、そこでいったん体を温めてもいいかな?と思っていた。しかし、先客がいたのでやめた。人見知りをするほうではないのだけど、会話の糸口を探りながらぼそぼそとしゃべるのは面倒だったからだ。
バス停界隈にはお店があると思ったが、蕎麦屋は定休日だったし、その他に食べられそうなお店は見つからなかった。そういう色気がない温泉地をあえて療養先として選んだのだから当然といえば当然だが、さてどうしたものか。コンビニがあるなら、そこでちゃちゃっと適当に買い物して、部屋で食べたっていい。しかしコンビニすらない。いいぞ、本当に何もないじゃないか。俺の療養先選択眼にはずれはなかった。

しかしこのまま昼ごはん抜きというのは感心しない。かといってバスに乗ってどこかの施設まで高飛びするのは駄目だ。そこで、消去法的にバス停すぐ近くにあったハンバーガーのお店に入ることになった。「OPEN」の看板が心強い。
宿では夕食が18時から強制的に始まってしまう。そのために、自己解決となるお昼ご飯だってきっちり昼飯時に食べないといけない。ダラダラと過ごして、お昼は14時とか15時というわけにはいかんのだよ。こういう強制力が働くので、温泉旅館療養というのはすばらしい。

12:51
ハンバーガーを売っているというのはあらかじめ知っていたのだが、入り口の値段を見てびびった。「クアトロチーズバーガー」が1,780円と書いてある。おおう、桁が一つ違うぞ。「4種チーズのぜいたくバーガー」と銘打たれているが、まさにその通りだと思った。「4種のチーズが入っているから」ぜいたくなのではない。お値段そのものがぜいたくなのだ。

ハンバーガーを中心に、サイドメニューがあるお店だ。いきなりこういう洋風なお店が温泉地にあることに驚くが、那須高原そのものが洋風にかぶれた気配がある場所なので、その延長線だと思えば別におかしくはない。
外はこれだけの雪だ、しかも平日昼。お客さんなんて来るわけがない。こういうところで飲食店に限らず客商売をやるというのはかなり大変だ。そりゃあ、射的とかスマートボールとか、そういういわゆる一般的な温泉街が形成されないわけだ。温泉地としての歴史が長くても、温泉宿の数がそれなりにあっても、これだけ冬に雪が降っちゃあ商売にならん。
それはともかく、一体何を食べるんだよ。メニューを今ざっと見たけど、「ぜいたく」なバーガーしかないぞ。納豆定食480円とか、そんなのはないぞ。

あー、えーとー、何を頼もうか。
あの、すいません、温泉療養中なんで「ハンバーガー」って気分じゃないんスよね。賄いかなにか、ないっすか?
なんて言えるわけもなく、あうー、と呻きつつ「HUTTEハンバーガー」を注文。1,580円。店名が冠してあるのだからはずれはあるまい。

12:54
店内は当然のように僕以外のお客さんがいない。快適な空間。

テーブルの上に置いてあった、「おいしさへのこだわり」と書かれた紙。
ここのハンバーガーに使われているパティは、「A5ランクの那須黒毛和牛」が100%使われているのだそうだ。道理で!お値段が高いわけだ、そのお金を惜しみなく牛肉に使っとる。
でもこうなってくると、札束を食べているのか、牛肉を食べているのかわからなくなるな。
いや安心しろ、「札束」と形容するほどお前は金を払っていない。せいぜい、夏目漱石さんお一人さまだけだ。それは「束」とは言わぬ。

おいしい食べ方指南もあった。
まずハンバーガーのデカさにびっくりして、その後バーガーを潰してかじりついて、味の変化を付けたければケチャップやマスタードをお好みでどうぞ、というわけだ。
一応「手で食べる」ハンバーガーなんだな。ナイフとフォークが添えられていて、お皿に盛られているやつかと思った。雑誌などでその手のハンバーガーは見たことがあるけど、実際には食べたことがない。「お高くとまりやがって!」と仮想敵とみなしている。
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