疲れ果てて雪国【那須湯本】

宿を後にする

09:48
朝食後、部屋でだらけてみたり、ダメ押しで滝の湯にもう一度行って時間を過ごす。

大抵、こういう宿というのは朝食を食べ終わったらとっととチェックアウトするお客さんがいるものだ。宿としても、そういう人を見送ったらすばやく客室の片づけを始める。館内に響き渡る掃除機の音、廊下に出ればリネン類が積みあがっている。

こういうのを見ると、「早くチェックアウトしないと気まずい」という気がしてくる。チェックアウトは10時までに済ませればよい、ということはわかっているのだけど、それでもドキドキしてしまう。宿の人とすれ違ったときに、「まだご滞在ですか?」みたいな顔をされないか、不安だ。

不安、というのは大げさだとしても、10時が近づくにつれチキンレースの様相を呈してくるのは事実。しかし、こちらとしても療養で訪れているんだ、今日はこのあと帰宅するだけなんだし、ギリギリまでゆっくり過ごさせてもらうぜ。

帰る前に、トイレに行っておくことにする。

「あッ・・・!!!」

出ない。

まったく出ない。出る気配すらない。

ようやくこの期に及んで、事の重大さに気が付いた。意欲は十分にあるのに、門が開かない。いや、意欲がありすぎて門が対応できていない。

しまったぁぁぁぁ、この2泊3日、さんざんお風呂に入って汗をかいたけど、意識しての水分補給ってやってこなかった。その結果、凝縮された「どす黒い意欲」が今となって「おい、外に出せ!」と言っている。しかも強くて硬い意思を持って。

脂汗をかく。

今もし僕が60歳70歳だったら、確実にこめかみの血管が切れる、というくらいパワーブーストしてみたけど、駄目だ。

焦る。

時計を見る。まだ10時までは時間がある。よかった、ギリギリになって、チェックアウト間際にトイレに行かなくて。しかし、残る時間でどうにかなる気がしない。時間が経てば重力に従って落下するとは思えない。

ソワソワする。腰を浮かせたりする。再チャレンジするけど、どうにもならない。

むしろ状態が悪化してしまった。中途半端なところに「意欲」が引っかかってしまい、ものすごく切ない気持ちになる。「ああ^~」と思わず変な声をあげてしまう。トイレ周辺に誰もいないことを確認したのち、もう一度「ああ^~」。もう、声を出さないと切なくて切なくて。

浣腸でもやりたいが、そんな便利なものを持ち歩いているわけもないし、この近所に薬局があるわけでもない。気分としては割り箸でもいいから突っ込みたいくらいだ。でも、そんな割り箸すらないから切なすぎる。

結局、いったんズボンを上げて諦めて部屋に戻る。どうにもならないのならどうにもならないんだ、家に帰ってからあらためて対策を考えよう・・・というわけだ。しかし、「中途半端なところに引っかかった意欲」は僕の心をかき乱し、僕は檻に入れられたばかりの猛獣のように部屋の中をウロウロしてしまう。

こりゃー駄目だ、どうにもならん。

頭をかかえて、再度お手洗いに戻る。

そのあと嘆息と悶絶とが入り混じった時間を過ごし、ようやく体が楽になった。旅の最後の最後で何をやってるんだ。療養生活の打ち上げは、こんな儀式を経ないといけないのか。

へとへとになって宿を後にする。「怪我」をしないで済んだだけ良かった。

次回に向けての教訓だな、水分補給は徹底して行わないと。おなかがだぼんだぼんになるまで水を飲もう。そうでないと、また今日の二の舞だ。あれはもうイヤだ。
すべって歩きにくい道

足取りがふらつきながら、バス乗り場に向かう。

・・・ああ、足がふらつくのは、疲れきったからだけでなく、道路がガリガリになっているからだ。雪が積もった上に朝日を浴びて少し溶けて氷になっているので、滑るったらありゃしない。実際、通り過ぎた車が坂を登れず、ずるずると滑り落ちてガードレール激突、なんていう光景を目の当たりにした。どうやらまだノーマルタイヤだったらしい。

観光案内所

09:58
温泉神社の参道入り口にある、那須高原観光案内センターに向かう。別れ難きこの地からどうやって帰るか、についてはこの二泊三日の間ずっと考えていた。

  1. 那須塩原までバス、そこから新幹線
  2. 那須塩原までバス、そこから在来線
  3. 新宿行きの高速バス

(1)は一番最短で帰宅できる。那須湯本でのんびりしたとはいえ、やはり温泉疲れをしているはずだ。余計なことを考えずに帰宅し、家で落ち着いたほうがこれから先の日程楽だ。「平日をバーンと大胆に休む」ということをやらかした今回の療養旅だけど、明日がまだ平日であるということを忘れてはいかん。金曜日をどう乗り越えるか。しかし、新幹線を使うのでお値段は高い。平日温泉に行ってきました、という立場にしては不謹慎ではないのか?

(2)は往路と一緒。宇都宮で下車して、また餃子を食べに行ってもいいなあ、という気がしている。しかし、それはちょっと観光っ気があり、ストイックさに欠ける気がする。不謹慎っぽい。

(3)は、直行バスだ。これが一番安いし、乗り換えなく都心に到着できるので便利。しかし即決でこれにしていないのは、途中下車できる王子駅まで3時間、終着である新宿駅までは4時間近くかかるということだ。

今朝方まで「んー」と悩んでいたけど、結局(3)にした。乗り換えがないというのは便利である反面、するすると目的地に到着してしまい「ひっかかりがない」のがつまらないからだ。でも、そういう色気を出すのはよくない。おとなしく王子駅まで護送されることにしようと思う。

バスチケットを買う

10:10
高速バスは事前予約制なので、観光案内センターでバスのチケットを発券してもらう必要がある。パソコンを持参しているし、宿にはWi-Fi環境が完備されていたのでネット予約をすることは可能だったが、さすがにチケット発券ができる環境は那須湯本になかった。そのためには、コンビニが必要だからだ。

観光案内センターでチケット手配をお願いしたら、職員さんはパソコンでブラウザを立ち上げ、高速バスの予約サイト「高速バスネット」を立ち上げたのにはびっくりした。ありゃ、何か専用の端末とかサイトとかでガチャガチャ操作するんじゃないのか。

お会計は3,390円。通常価格が3,400円なので、窓口購入だと10円だけ安い。たった10円安いだけなら、もう定価販売にしちゃえよ・・・と思う。運行会社側としては、「頑張って!皆様のために!10円お値引き!」と思っているだろうけど、肝心の利用者からしたら「たった10円しか値引かないのか。ケチくせぇ」としか思わないという悲しきアンマッチ。

ちなみに高速バスネットで直接決裁すると、3,220円で購入することができる。今目の前で高速バスネットで決裁されてるんですけどー!3,390円なんですけどー!・・・その差額170円は、観光案内センターの手数料ということなのだろう。チケットのプリントアウトに関するお金もかかるし。すいませんどうもありがとうございます。

足湯

新宿駅東口行きのバスが出発するのは10:30。それまでの間、温泉神社参道入り口にある足湯に浸かることにした。名前を「こんばいろの湯」という。

足湯にしては立派な建物がお出迎え。中に誰もいないことを確認のうえ、お邪魔する。足湯って、他に誰かいたら気まずい雰囲気になることがあるんだよな。

足湯には誰もいなかった

湯船は入り口の左右に分かれて二カ所ある。白濁してよい感じのお湯。

あまり奥に陣取ると、脱出する際に難儀する。足が濡れているので、床を湿らさないように気をつけないといけないからだ。

足湯の張り紙

「こんばいろ」というのは、この地方で「カタクリ」のことを指すらしい。では、ここの人は「片栗粉」のことを「こんばいろ粉」と呼ぶのか?と思ったが、さすがにそれは片栗粉のままだろう。

源泉は、鹿の湯源泉ではなく奥の沢噴気泉なんだそうだ。那須湯本って結構いろいろな源泉があるのだな。

足湯に浸かる

足湯に浸かる。

足湯堪能中

10:12
風呂に入っていると、全身の血の巡りがよくなるので「肌が赤くなった」実感を感じにくい。しかし、足湯だとお湯に浸かったところだけが赤くなる。「おお、血が巡ってる巡ってる」と手を叩いて喜ぶ。なんか健康になった気がするので。気のせいだけど。



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