綺麗事じゃ済まされないジビエ【鋸南町狩猟エコツアー】

本日のワークショップアジェンダ。

午前は1時間半の枠で、「農村が危ない!鳥獣害とは?」と題して千葉県農林総合技術センターの研究員を講師に座学。

午後は2時間半かけて横根地区のけもの道を歩き、あちこちに仕掛けてあるわなや、鳥獣被害の現場を視察する。

最後に、「意見交換会」の場が用意されている。

朝から晩まで、いたれりつくせりだ。

午前の講義用に用意された資料。

「へえ!」と感心したのが、「横根ワナ組合箱わな設置状況」という国土地理院1/25,000の地図だ。

この地図上に、42か所もの箱わなが仕掛けられていることがわかる。

横根地区は、写真のとおり山あいの小さな集落だ。その周辺だけでも、これだけ密集してわなが存在していることに驚いた。

「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」的にわなをしかけるわけにはいかない。なにせ、100キロを超える、重たくて巨大な箱わなだ。この数の多さは、それだけ被害に悩まされている証でもあり、人間と動物との戦いを視覚化したものだ。

こうやって正確に地図にわなをプロットできていることにも驚くが、毎日見回りをしなければならないわななので、プロットできて当然なのだろう。

箱わなだけでもこれだけの数なのだから、「わなワークショップ」で僕が作ったような「くくりわな」はさらに膨大な数、この周辺に埋められているのだろう。紛争エリアの地雷原のようだ。

ここまでやったらイノシシも鹿も一網打尽だろうと思いたいが、それでも害獣が減らないということは野生動物だってバカじゃないということだ。

すごい資料だった。千葉県が作っただけあって、県内のあちこちで研修用として用いているのだろう。わかりやすいし、内容が充実しているし、僕らみたいな素人でも「なるほど」と理解ができる。

イノシシや鹿の生態、習性、対策がグイグイ書いてあって唸るばかりだ。

僕はこの資料や講義で得た情報をこの記事で抜粋して書きたかった。あまりに知的好奇心が刺激され、「こういう世界があることに気づかないまま、コンクリートの中で生活してきた」ことに気付かされたからだ。

でも、あまりに素晴らしく膨大な情報量の資料をどうやって要約すればいいのかと思いとどまり、面倒になって、こうやって記事を書くまで3年近くが経ってしまった。僕が一連のワークショップの出来事を記事にするのに躊躇するくらい、密度の濃い内容だった。

会場の傍らには、ライフルが置いてあった。これがいわゆる猟銃なのか。そういえば、間近で見るのは人生で初めてだ。カラフルなベストを着用したハンターさんが山を歩いていて、肩にライフルをかついでいるのを遠目で見たことはあったけど。

ライフルって、てっきりストック部分が木でできているのだと思った。もちろんそういう銃もあるのだろうけど、こういう全身真っ黒なのはイメージしていなかった。まるで特殊部隊向けの装備みたいじゃん。

漫画「ゴルゴ13」がスナイパーライフル代わりに米軍がベトナム戦争で使っていたM16アサルトライフルを持っていて、「この銃で狙撃できるわけないじゃん」などと言われたものだけど、本気で狙撃しようと思うとこういう銃になる。M16はどちらかというと連射して相手を威圧するものであって、遠くからワンショットで仕留める銃ではない。

僕自身、サバイバルゲームを愛していた頃はこれに近いスナイパーライフルを使っていたものだ。スコープも装着していた。

しかし、それと比べて明らかに迫力が違う。静かな迫力、とでも言おうか。

そりゃそうだ、モデルガンはあくまでも樹脂製の銃身。でもこちらはれっきとした「殺傷兵器」なので、銃身が金属だ。

ちなみに時々モデルガンの銃身を金属に換装し、警察に見つかって逮捕される事案がある。趣味を延長しすぎて銃刀法違反にならないようにしなければならない。

驚き、もう一つ。

スコープがシャープ製だったこと。「目のつけどころが、SHARPでしょ。」というキャッチコピーがあったけど、本当に目のつけどころがシャープだった。

このスコープは「4×32」と書いてあるので、4倍の大きさでものを見ることができる。値段はいくらか知らないけれど、本気度の高いものなので安くはないはずだ。僕がモデルガンで使っていた同サイズのスコープでさえ、1万円程度の値段だった。

安いスコープだとレンズの性能が悪く、見える光景が薄暗く黄色っぽくなる。遠くのものを判別しづらくなるので、こういうのは透明度が高い、高級なレンズを使っているはずだ。

ここから午前中いっぱい、本当にまるまる1時間半かけてみっちりと座学。すごい。

途中、「イノシシがいかに繁殖してしまうか」ということを知ってもらうための動画として、監視カメラに捉えられたイノシシの親子の映像が映された。

どこかの農家か、農業試験場といった場所なんだけど、親イノシシのあとから出るわ出るわ、その数20匹近く。冗談でしょう?というくらい、ウリボーが画面に登場して走り回っていた。何家族か合同のピクニックなんだと思うが、こんな大量のピクニックがいらっしゃったら、そりゃあ農作物は一発でアウトだ。

一回で4~5匹程度子供を産むのがデフォ、毎年出産もデフォ、子供が死んだり捕獲されたら発奮して、年に二度出産するというオプション付き・・・ともなると、増える一方だ。これはどんどん捕まえていかないと。

お昼は、「わなワークショップ」のときと同じ、おいしい「地すべり米」を用いたお弁当をいただいた。おかずの種類が多く、手間暇がかかっているお弁当で恐縮してしまう。

午後、横根地区のわなを見て回る。

遠方からも目立つオレンジ色のベストを参加者全員が装着する。なるほど、確かにこれだと目立つ。うっかり銃で撃たれにくくなる。

町長いわく、鋸南町は日本最大規模の狩猟免許保持者数を誇るんだそうだ。それは知らなかった。

で、時々大勢の人を集め、山狩りをすることもあるという。ええ、この時代でもそういうの、まだあるのか。

「この山を今回は対象にするぞ」と掃討作戦が発動されると、ハンターたちが山を取り囲む。そして、山の反対側から「勢子(せこ)」と呼ばれる人たちが声を出したり音を鳴らしたりしながら山に登っていくと、警戒したイノシシが山のこっち側に逃げてくる。そこに待ち伏せしていた人間が銃で撃つ。

「そんなこといっても、山は広いじゃないですか。どこからイノシシや鹿が逃げてくるか、当たりがつけられませんよ」

と聞いてみたら、

「いくら野生動物だからといって、どこでも通るわけじゃないんです。けもの道がちゃんとあって、そこを通って逃げるんです」

だそうだ。そりゃそうか、びっくりしたといっても、足元が不安定な草むらに飛び込んだらイノシシだって動きづらい。

「でも、けもの道だっていくつもありますよね。空振りになることも?」
「ありますよ。一日中何も起きずに終わる、ということもあります」

大変だ。

講義を行っていた建物すぐ近くに、わながあった。

以前別のところで見たわなには米ぬかが餌として置いてあったが、ここはみかんが置いてあった。

以前見た箱わなとは形が少し違う。こちらの方がシンプルなので、手作りのわななのかもしれない。

(つづく)

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