上高地、COVID-19の間隙を突いて【徳沢キャンプ2020】

徳沢園の正面から見て、玄関右側の建物。

二階建てで、赤い屋根の優雅な建物。冬は雪に覆われる場所なので、屋根がとても大きい。

一方で、一階にはテラスがあり、そこにはビーチパラソルのような日差し避けの傘が設置されている。

この空間で時間を過ごすことができるなら、とても気持ちが安らぐだろう。なにせ上高地まで歩いて2時間かかる場所なので、「よし、今はただひたすらこの空間を満喫しよう」という覚悟ができる。それが何よりの癒やしだ。

都会のガチャガチャした喧騒の重力に引っ張られることなく、マイペースで過ごせるこの世界はとても快適だ。

徳沢園の隣には、日本大学医学部徳沢診療所がある。徳沢園とは独立した建物だ。

7月中旬から8月中旬の間だけオープンしている診療所なので、今は閉まっている。

メジャーな山には、このような診療所が多く存在する。しかし、開設期間がとても短いため、僕はこの手の診療所が患者を受け入れている様子をほとんど見たことがない。あまのじゃくな性格の僕は、いつも登山のハイシーズンを避けて山に登っているからだ。

診療所の前のスペースには、徳沢園が設置した常設テントが並んでいる。黄色く、お団子のように丸いフォルムのテントは遠くからでもとても目立つ。まるで気象観測所のアンテナのようだ。「なんだろう?」とテント泊の人たちが次々と様子を見に来ていた。

これはノースフェイスの「ジオドーム」というテントで、大人でさえテントの中でまっすぐ立つことができる特殊な構造になっている。僕はこのテントにびっくりしたので、思わずいしをテントの横に立たせて「人間と、テントの対比」の写真を撮ってしまったくらいだ。それくらい、珍しい形をしている。

一般的に、背が高いテントは強風にあおられて倒れないように、地面に向けて張り綱がたくさん張ってあるものだ。しかも、テント周辺の広範囲に渡ってその張り綱が張り巡らさている。このため、夜間など視界が悪いときはうっかりその綱に足を引っ掛けてしまう危険性がある。

一方、このジオドームは張り綱が雲の糸のように周囲に広がることなく、コンパクトにまとまっている。どうやってこのテントが自立しているのか、不思議だ。宇宙人のテクノロジーによって作られたのか?と疑ってしまう。

徳沢園に併設されている、外来客も受け入れている「みちくさ食堂」に入ってみよう。

15:47
ただいまの気温は18度。

この程度なら、寒さのせいで夜、眠れないことはなさそうだ。

マスクが売られていた。「ヤマノマスク」という名前がついているカラフルなものだ。

これまでは売っていなかった。これはCOVID-19が流行った2020年以降の新商品だろう。山でわざわざマスクを着用する、という概念なんてこれまでなかったからだ。

そういえば、今日登山道を歩いていて、登山道に落ちているゴミ、落とし物で目立ったのが「マスク」だった。不織布のマスクが、ところどころ登山道上に落ちていた。これはうっかり落としてしまったものだろう。2020年ならではの光景だ。

みちくさ食堂の中。

テーブルの上には、アクリルパネルが設置されている。アクリルパネルは十字に組み立てられており、一人分のスペースがとても狭い。

このアクリルパネルがどれほど感染防止に効果があるのか、大変に怪しい。しかし、「やらないよりマシ」という考えで、日本中にアクリルパネルが設置されている。

みちくさ食堂のカウンター。

ソフトクリーム450円、コーヒーソフト500円。

そして壁に掲げられた食事メニュー。

夕食がこのメニューの中から選べると良いのだけど、残念ながら食事メニューは14時がラストオーダーだ。

そのかわり、キャンプをする人はカレーライスとおでんを予約しておけば、夕方に受け取ることができる。

「山の手作りカレー」が950円、「おでん(7種)」が650円。結構割高なので、キャンプをする人は自炊をした方が安くつく。ただ、自炊装備を自宅から持参すると、荷物が増えてしまう。今回はいしがそれを嫌がったので、食事は現地調達にしている。

「自炊はキャンプの楽しみ」だと僕は思っているのだけど、同行者、しかも妊婦に「荷物が増える」と言われると返す言葉がない。

(つづく)

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