(このお店にあるもの、全部もってこい」とばかりに、メニューに書かれていたシフォンケーキとクレームブリュレを頼む。いずれも800円。
シフォンケーキはどんな低反発枕よりも低反発なふわふわ具合で。でもその柔らかさを補強するかのように、マーマレードが乗っかっていてシャンとした味わいになっている。どっちも、美味しい。
クレームブリュレは、お皿のすみっこに残ったガリガリをどこまでスプーンでこそげ落とすか、自分の執着心が試される食べ物。もちろん、可能な限りガリガリする。
コーヒーは濁りのない軽やかな味わいで、窓の外の景色との調和が感じられる。水が良すぎて、コーヒーも必然的に相当うまい。
「こんな山奥でくつろいでいる自分ってすごい」と自己陶酔していて、だから何を飲み食いしても評価が高くなっているのかもしれない。だとしても、今この瞬間が最高なのには変わりないので、舞台装置としてのカフェ・ド・コイショが最高であるのはまぎれもない事実だ。
おっと。カフェスペースから宿泊スペースにつながる扉に、「当館のお手洗いはご宿泊者専用です」と書いてあった。
コロナ、世知辛い。
たとえカフェ利用客であったとしても、宿のトイレは使わせない対応となっているとは。
飲食店で「トイレはありません」というのはちょっと珍しいが、ここは都会じゃないのだから仕方がない。ちなみにトイレは、この建物を出て1、2分程度のところに穂高神社奥宮があり、そこに公衆トイレがある。カフェ利用客が我慢できずに失禁する、ということはない距離感だ。
14:40
ケーキを食べ、大満足でカフェ・ド・コイショを後にする。
そういえば僕ら、まだお昼ごはんを食べていないんだった。朝ごはんを徳沢園で食べて以降、アイスクリームとケーキしか食べていない。
歩いてすぐの場所にある、嘉門次小屋に向かう。
嘉門次小屋はいつもなら観光客が大賑わいの場所だ。上高地からてくてく歩いてきた観光客が、一旦この明神をゴールにしてその達成を祝うためにこのお店で休憩するからだ。
しかし、この日はガラガラ。こんな空いている嘉門次小屋は、(冬季休業中に訪れたときを除いて)初めて見た。それもそのはず、コロナで人の往来が少ないのだから。
お陰で、大人気の囲炉裏席もご覧の状況。僕ら以外、いない。
そして、名物のイワナも、いつもなら囲炉裏をぐるっと取り囲むように並べられあぶられているのだが、この日は全然並べられていなかった。これだけお客さんが少ないのだから、どんどん魚を焼いていたら干物になってしまう。
イワナが焼き上がるまで時間がかかるので、囲炉裏でゆっくりと時間を過ごす。
天井を見上げると、梁や天井裏がすすで黒光りしていた。すごい迫力だ。
メニュー類。このお店は自動食券機が導入されているのだが、すすで色褪せたメニューが味わい深い。
イワナ塩鮭1,100円。単品でいただく。
お昼ごはんに相当する食事なので、定食(+600円)にしても良かったのだが、あともうちょっとしたら夕ご飯の時間になる。ここでわざわざお腹いっぱいになるよりも、小梨平に着いてから自炊でお腹いっぱい食べたほうが良いと判断した。
今晩はケビンで自炊泊だ。自炊の良いところは、胃袋の求めに応じて、好きなだけ増量も減量もできる、ということだ。今日はどうしようかな、ガツンと食べようか、それともガツンと飲もうか?
(つづく)
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