11:12
横尾山荘脇のトイレ。
横尾山荘そのものが立派だが、トイレもかなり立派。これまで歩いてきた小梨平、明神、徳沢の公衆トイレよりも大きくて立派だ。
しかし、そんなトイレだが扉がぴったりと冬の雪囲いで閉じられていて、中に入れなくなっていた。隣の建物のトイレを使ってくれ、と矢印が扉に貼ってある。
COVID-19がまだ沈静化していない時期ということもあり、トイレの規模を縮小している。横尾を行き交う人が例年よりも少ないということもあるし、トイレ掃除の手間を簡略化したいのだろう。
横尾山荘全景。
この建物の右側に、先程見たトイレ、そしてさらに右に冬季小屋がある。だからかなり広い。
横尾山荘には大浴場があるらしい。ここで一泊して、ゆっくりと風呂を楽しむというのも楽しいひとときだ。
ただし、横尾はあくまでも槍ヶ岳や涸沢の通過点という要素が強い。特に景色が良いというわけでもないし、レストランでの飲食が充実しているということもない。大きな山小屋ではあるが、存在は地味だ。
横尾山荘。
建物の中は薄暗く、人の気配がない。
「食堂休止中」という張り紙がガラス窓に貼ってあった。なるほど、だから人の気配がないのか。
時間的に、今からこの宿に泊まるためにチェックインする客はいない。だから、小屋の周辺には人の気配がほとんどない。
ここは、徳沢とうってかわって観光客がほとんどいない。ガチ登山の人たちの世界だ。僕らのように、「単に散歩に来ました。今日はこのあと上高地に戻ります」というような暇人はほとんどいない。
そもそも、上高地でこんな暇なことをしようとすると、自宅から上高地への行き来する移動時間を含めて相当な余暇を確保しないといけない。誰でもできる芸当じゃない。僕らは、幸いなことに今回それだけの時間を確保できたので今こうして横尾にいる。
「来年になると、赤ちゃんが家族の一員になっているから上高地は無理だろうねー」とお互い話し合っているところだ。
横尾山荘から涸沢方面を見たところにある、屏風岩。絶壁だ。あの向こう側はるか先に、涸沢がある。
横尾から涸沢を目指す人が通る、横尾大橋。
僕はこの橋の向こうを歩いたことがない。いつか歩いて涸沢を目指したい、と思っているが、涸沢がひどく混雑するという話をさんざん聞くので、それを恐れてなかなか行く気になれない。結婚して子どもができるというイベントが僕の身に降ってきたこともあり、ますます涸沢は遠のきそうな気がする。
そんな憧れの横尾大橋を、とりあえず渡ってみる。
橋から下を見下ろすと、河原のところがキャンプ場になっていた。
これからテントを組み立てようとする人が一人、どのようにテントを建てようかと思案している。11時にここでテントを立てて、これから一体何をして過ごすのだろう?純粋にキャンプを楽しみに来たのか、それとも周囲の山を目指すのか。
純粋にキャンプを楽しむにしては、この横尾という土地はストイックだ。徳沢や小梨平でテントを張ったほうが、食材の調達は便利だし楽だ。
今テントを張ろうとしている人が何を目的としているのか、装備品から類推しようとしたがよくわからなかった。
横尾大橋の柱にくくりつけてあった注意書き。
涸沢方面への登山者へ
午後2時以降の入山は控えてください。
標準的なコースタイムだと、横尾から涸沢までは3時間の道のりだ。つまり、14時以降にここから涸沢を目指すと、到着する頃には夏場でも薄暗くなってくる。ましてや、体力不足が露見したとか、足をくじいたといったアクシデントがあったら、もっと到着が遅くなる。
14時までに横尾に着いていようとすると、遅くとも11時には上高地を出発していないといけない。つまり、公共交通機関を利用して、東京早朝発で上高地に行き、そこから涸沢を目指そうとすると1日では到着できないことになる。なぜなら、公共交通機関で11時前に上高地に着く便がないからだ。
東京から涸沢を目指すなら、夜行バス「さわやか信州号」に乗って前日夜から上高地を目指すか、それとも上高地や松本といった場所に前泊する必要がある。有名な場所だけど、かなり遠い。
横尾大橋。
いいなあ。いつかここをちゃんとした登山装備であるきたい。
横尾大橋での記念撮影。
いしは徳沢から手ぶらでここまでやってきた。パーカーのポケットにスマホをはじめとする小物を突っ込んでいるので、腹回りが膨らんでいる。そのシルエットを見て、三井住友銀行のますこっとキャラクター「ミドすけ」に似てるな、と思ったが口にするのはやめておいた。
11:28
横尾大橋から見た、梓川の下流。
徳沢、明神あたりで見た梓川とは全く雰囲気が違う。
そしてこっちは梓川の上流を見た景色。石のサイズが大きい。そして川の水位がとても低い。こんな浅い川なのに、河原の石が大きいのは、ひとたび雨が降ると上流からゴロンゴロンと勢いよく石が転がってくるからだろう。
(つづく)
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