上高地、COVID-19の間隙を突いて【徳沢キャンプ2020】

10:43
さきほど、新村橋という歩行者専用の吊り橋があったが、このあたりには何か所か車が渡渉するための橋が作られている。関係者専用の道なので、我々がこの橋を渡ることはできない。

ここまで辿り着こうとすると、上高地から2時間半以上歩かないといけない。にもかかわらず、こうやって車道がひょっこり目の前に現れると、「なんだ、まだ車が通行できる場所なのか・・・」とちょっと残念に感じてしまう。

この事象は上高地に限った話ではなく、登山ではよくあることだ。登山口から己の足でさんざん登ってきたのに、途中で林道に出会ったときのがっかりな気分は相当だ。その林道は一般の車や人が入れない、関係者限定の道であったとしてもだ。

ほら、そんなことを考えているうちに車が通り過ぎていくぞ。

車で行き来できる場所、ということは、僕の身に何か怪我や事故が降り掛かってきたとしても、ある程度安心できる場所ということでもある。一概にがっかりする話ではない。

10:46
梓川沿いの道はとてもよく整備されていてびっくりする。

単に草木を刈り取って道を作っただけでなく、砂利をまんべんなく敷き詰めてある。雨が降った際に地面がぬかるまないような配慮までされている。

登山道として考えれば、超一級の高規格道路だ。

見せつけるかのように、歩行者用の道のすぐ脇に作業用の車道が並走する。

「横尾まで公共交通機関があればいいのに」ということを登山者はよく口にする。バスは大げさだとしても、馬車くらいあっても良いのではないか、と言う。横尾までの道はご覧のとおりほぼ平坦で、ただひたすら梓川沿いをテクテクと歩くことになる。なので、素早く移動できる手段があれば僕だってぜひ使いたい。

とはいえ、それは「便利になった交通手段を、僕だけが独占する」という前提の発想だ。便利になったら、他の人も使おうとする。そうすると、これまで大正池~河童橋周辺にしかいなかった観光客が、横尾まで行こうとするだろう。それは僕が望むことではない。

今、こうして静かな山歩きができるのは、徒歩で片道3時間近くかけないとたどり着かないところにいるからだ。

10:58
朝からヘリコプターの音が聞こえる。遭難者の救助にあたっているのではないか、と心配になって空を見上げてみると、ヘリコプターが荷物をぶら下げている姿を見ることができた。どうやら、山小屋に荷揚げをやっている最中らしい。方向から推測すると、涸沢の山小屋だろう。

11:09
徳沢から1時間ちょっと歩いて、横尾に到着した。

木々の茂みの前方に横尾山荘が見えてきた。

そして、道路脇に設営されたテントも。

11時という中途半端な時間だけど、テントがいくつか設営されている。

純粋にキャンプを楽しむ人は、さすがにここまで不自由なところにやってこないはずだ。おそらく、この界隈の山や岩を登っているのだろう。キャンプ場は、がらんとしていて人の気配はなかった。

奥の建物が山小屋の「横尾山荘」で、手前の年季が入った建物が「横尾避難小屋」。

巨大な建物で迫力があるが、あくまでも冬季避難小屋なので今は中に入ることができない。

これだけの大きな建物を用意するくらい、冬にもこの界隈に登山客が大勢行き来するのだろう。

横尾の地図。

地図中央に横尾、谷に沿って左側に上高地。

横尾が本当に山奥にあることがわかる。そして、ここから屏風のように山がそそり立っていることもわかる。

ちなみに横尾から涸沢まで約3時間。上高地から涸沢カールを目指す際、今僕らがいる横尾がだいたい中間地点になる。しかし、中間地点といっても、これまで水平移動で楽をしてきた分、一気に垂直移動を要求されてハードワークになる。

僕は涸沢を訪れたことがないので、今回もできることなら涸沢に行ってみたかった。しかし、徳沢でさえ一般の人からするととんでもなく辺鄙なのに、そのさらに奥地で、体力的にもキツい場所にパートナーを誘うのは無理だった。

彼女が「涸沢に行きたいな」と思えるようになるまで、じっくりと時間をかけていくつもりだ。登山やアウトドアは怪我や体調不良の可能性が高くなるレジャーだ。だから、本人が「行きたい!自己責任でいい!」と思えなければ、行くべきではないし他人が誘うべきでもない。

おっと、そういえば我が家は来年に赤ちゃんがやってくるのだった。「いつかは、涸沢。」という計画は、これから先相当先にならないと実行できなそうだ。

登山道を遮るように設置された、立て看板。

「これより先は『登山エリア』です」と書かれていた。

同じような看板を昨日、小梨平で見た。小梨平の看板は、「これより先は『自然探勝エリア』です」と書かれていたので、この看板を設置した環境省は人々に対し、より警戒心を高めるよう促している。

こういう看板を設置しているのは、やっぱりごく少数ながらも準備不十分な観光客がここまでやってくるからだろう。

(つづく)

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