上高地、COVID-19の間隙を突いて【徳沢キャンプ2020】

徳沢園のみちくさ食堂は僕らキャンパーにとっては生命線となる。特に飲み物はそうだ。

小梨平からここまで自力で飲み物を運び上げても良いのだが、重たいし荷物がかさばる。また、いくらここが標高1,500メートルだからといって、常温でビールが飲み頃の冷たさになることはない。ぬるいものはぬるい。

そんなわけで、僕はみちくさ食堂でノンアルコールビールを飲む。高い、とわかっていても。

このお店で売られているノンアルコールビールは、サントリーの「オールフリー」だ。何故か、瓶で売っている。瓶なんて扱いが面倒なのに、なぜこのみちくさ食堂はわざわざ瓶製品を扱っているのか、謎だ。また、僕みたいに「風情よりも安く飲みたい」と思っている人からすると、「瓶じゃなくて缶だったらもっと安くなるはずなのに」と思う。

おそらく、ビールやノンアルコールビールは徳沢園に宿泊しているお客さんが利用するレストランと共通在庫なのだろう。宿のレストランで、缶ビールというのは風情に欠ける。なんとなく、レストランなら瓶でビールを提供してほしい、と考えるのが客の心理だ。だから、このみちのく食堂も瓶のビールを採用しているのだろう。

飲み物のお値段はご覧の通り。オールフリーは500円。

あれっ、以前は400円だった気がする。100円、値上がったのか。高くなったなぁ。

ノンアルコールビールは、所詮「ビールもどき」の飲み物だ。飲んだからといって酔うわけはないので、最初の一杯が美味しくても二口目、三口目と飲んでいるうちに「一体俺は何を飲んでいるんだ?」と我に返ってくる。本物のビールは、最初の一杯が最高だし、二口目、三口目はアルコールが体を巡ってきてますますご機嫌になるのとは大違いだ。

なので、値段が高いノンアルコールビールというのは、「買うのをやめようかな」と真剣に悩む値段設定だ。おそらくこれから先も値段はどんどん上がっていくだろうが、どこまで僕の購買意欲が価格設定についていけるかどうか、ずいぶん怪しい。

ちなみにビールは700円。ノンアルコールビールよりも高いとはいえ、200円の差だ。おかしい、「ビールは値段のだいたい半分くらいが酒税」と言われているので、ノンアルコールビールはビールの半額くらいでもおかしくないのに。

結局、ノンアルコールビール500円、ビール700円という値付けの大半は、ここまでの輸送費であり、手間賃であり、徳沢というエクセレントな土地で売るということに対するプレミアム価格ということだ。都会部と同じ論理で流通小売価格が設定されるわけじゃない。

「外来夕食のご予約は17:00までとなります」という札が掲げられていた。

僕らのような、テント泊の人に対するメッセージだ。自炊しないでみちくさ食堂に夕食を託す場合、17時までに予約を入れる必要がある。

ならば早速夕食の予約を入れよう。カレー2つ、おでんを1つ頼んだ。

おでんを2つにしなかったのは、小梨平で買った冷凍ソーセージを持参しているのでそれを茹でて食べるつもりだからだ。

15:56
まだテントを設営していないのだけれど、どうせテント設営なんてチョロいので後回しにして、徳沢到着を祝って乾杯をすることにした。

昔、オートキャンプをやっていたころは、幕営地に到着したらテント設営に大忙しだったものだ。テントを組み立てるのに時間がかかるだけでなく、その他の荷物がとても多く、それらを運んだり組み立てたり、設営場所を微調整したりと慌ただしかった。それはそれで楽しかったけど、大変なのは事実だ。

一方、今僕らがやっているキャンプは、なにしろテントが小さい。テントが小さいと、あれもこれも荷物を持ち込むことが事実上不可能になる。なので、必然的にフットワークが軽いキャンプになる。

フットワークが軽いキャンプを目指した結果小さいテントに行き着くのではなく、順番はその逆だ。

大きいテントは、快適な空間が得られてとても良い。しかし、大きなテントに甘えてしまうと、どんどん荷物が増えていく。その結果、キャンプ用品一式を背中で背負うのは無理だということになる。

16:17
テントを設営する。

モンベルの「ステラリッジテント」は設営が簡単なので、ほら、妊婦でもしゃがんだ状態で設営ができる。(決して推奨しているわけではありません)

明日はこのテントを畳み、僕らは小梨平に移動する。オートキャンプをやっていたときは、一泊で場所を移動するとなったら「えー、面倒だなぁ」と感じただろう。なにせ、タープやら炭火コンロやら、荷物がとても多いから。でも、今回の僕らは荷物が少ないので平気だ。

あと、テントが濡れたままでも気にすることなく後片付けし、ザックに詰め込むことができるというのは昔と大違いだ。

昔、アワレみ隊が使っていたような5人くらいが寝泊まり可能なテントは、とにかくデカくて重たかった。設営と撤収に時間がかかるのは当然として、重さは10キロ以上あるし、夜露で濡れているとテントが膨張し、収納袋に格納するのが二人がかりの作業となった。そしてそれを帰宅後干さないとカビが生えてしまうのだが、僕が自宅でそのテントを広げてしまうと、折りたたむ場所が家の中のどこにもなかった。六畳間1つくらいの平たい空間が必要だからだ。

テントが小さくなる、ということはキャンプ終了後のメンテナンスが容易になる、ということでもある。今は帰宅したその日のうちにテントを風呂場で洗っている。それだけでなく、テントを風呂場に吊るし、浴室乾燥機で乾かしている。小さいテントならではだ。

16:25
テント設営完了。

キャンプ用の寝具は一人分しか持っていないので、徳沢園でマットレスと毛布をレンタルした。

「この際だから、いしのキャンプ用寝具を買おう」と上高地に来る前、僕は彼女に提案したのだけど、いしは「今後家庭環境が変わるし、買わなくてもいいですよ」といってやんわり拒否した。

来年になれば、我が家に赤ちゃんがやってくる。さすがに赤ちゃんと一緒にキャンプというのは無理なので、こういうアウトドアは当分お預けになりそうだ。またキャンプをしよう!という話になるのは早くても数年後なのかもしれない。そうなると、寝袋を今買う必要はない、というわけだ。

いしに僕がこれまで使ってきたマットレスと寝袋を渡し、僕は借りてきたマットレスと毛布、そして家から持参したシュラフカバーを被って寝ることになった。

テント設営後、のんびり過ごす。

今晩はあと夕ご飯を食べて寝るだけだ。食事の準備も洗い物もない。徳沢ヒュッテの外来入浴もない。本当に、時間が空いている。こういう時間はなかなか日常生活では手に入らないので、とても貴重だし嬉しい。

自宅で「今日はもう何もしないぞ!」と思っても、ついあれこれ気になってしまう。しかし、この徳沢の地にいると、できることが少ないので心底のんびりできる。これが素晴らしい。

明日も大して予定がない、というのも精神のゆとりを与えてくれている。明日は、小梨平に移動してケビンに一泊する予定になっている。それ以外に何もない。電車の時刻を気にしなくても良いし、飯の心配もしなくていい。

のんびり過ごす時間を確保するのは、僕もいしも久しぶりだ。さてどうやって過ごそう?ということで、まずはチーズちくわをシェアして食べる。

なにかを食べるという行為は、一番手っ取り早い暇つぶしだ。

16:52
お互い、読書タイムということで黙読が始まった。

活字を読む時間や余裕がなかなか取れていない二人なので、こういう時間は貴重でありがたい。

僕は、「バッタを倒しにアフリカへ」という本を持ってきているので、それを読む。

著:前野 ウルド 浩太郎
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うん、快適。じっとしていれば肌寒い気温だけど、テントの中に入ってしまうとせっかくのキャンプの風情が楽しめない。空が暗くなるまでの間、テントの外で読書を続ける。

(つづく)

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