混沌の温泉場【万座温泉日進館】

歌とトークのショーを楽しんだあと、5分かけて部屋に戻る。

このまま余韻に浸りながら就寝、でもよかった。いやむしろそうするべきだろう。何を今更・・・。

でも、男にはやりのこしたことがある。いや、別に「男には」なんて大上段に振りかぶらなくてもいいんだけど、どうにも気がかりがある。

まだ入っていないお風呂が、二カ所もあるということだ。なんてこった、この宿は僕たちを寝かせてくれないぞ?

まず、館内にある「万天の湯」。そして建物外にある露天風呂。

露天風呂は明日の朝に行くとして、万天の湯には今晩中に行っておきたい。なにせ、移動に時間がやたらとかかるのがこの宿だ。ひょい、と気軽にひとっ風呂浴びるというわけにはいかない。

「というわけで、万天の湯に行きます」

と連れに伝えたが、連れは「いってらっしゃい」と手を振って部屋に留まった。わざわざ遠くのお風呂にまで遠征する気にはなれなかったらしい。そりゃそうか、特別な源泉です、というわけではないし。

「意を決して万天の湯を目指す」という形容表現がちょうど良いくらい、遠い場所にある。

なにせ、フロントや食堂があるところを扇の要部分だとすると、左端の末端に我々の部屋があって、右端の末端に万天の湯があるという有様だ。水平移動だけでなく、垂直移動もある。想定所要時間、10分。

最近じゃ、都心の不動産でも「駅から徒歩10分以上の物件」は資産価値が下がると言われている。人々は、10分も歩きたくないよ、と思っている。そんな距離を、湯船を求めて館内をてくてく歩く。

道中にあった、日進館の鳥瞰図。

建物を横から描いている。そのおかげで「ゆけむり館」のいびつな形がよくわかる。

ちなみに玄関があるのは、Cの字型に連なっている建物群の右上、へんな屋根の形をしたところだ。

絵の手前に描かれている建物群は、元「日進館」で、今はもう取り壊されてしまっているもの。ここに「鉄湯」と「ラジウム泉」があった。

そこからひな壇状にタテに連なっている建物全体が、今晩僕らが泊まっている「ゆけむり館」ということになる。道理で道がわかりにくいわけだ。こんな形状じゃあ、ややこしくて当然だ。

なお、この絵は若干タテが圧縮して描かれていると思う。実際はもっと高低差があるはずだ。

本館2階部分。

明らかに、湯けむり館と比べてグレードの違いを感じる。廊下のカーペットひとつとっても全然違うし、部屋の扉も違う。

なによりも、フロントから近いというのはこの宿では贅沢なことだ。エレベーターで移動できるので、バリアフリーでもあるし。ほら、部屋の入口に車椅子が置いてある。実際、そういうお客さんがいらっしゃってるんだ。

ゆけむり館に泊まれるのは、むしろ五体満足だからこそ、と言える。まだ健康だからこそ利用できる、と感謝しなければいけない。本館に泊まるのなんて、足腰が弱くなってからで十分。

泉堅ショーが開催されていたロビーを見下ろす。

まだ堅様自らが、会場の撤収を陣頭指揮していらっしゃるのが見えた。

準備中、ということで立ち入りはできないけど大広間。本館の3階にある。

「おおー、ここが大広間かー」

意味もなく感動する。旅館の探検って、楽しいよな。だからなんなんだ、というものであっても、なんか楽しい。

目指す「万天の湯」は遙か彼方だ。

時々、案内看板が出ていないと心細くなるくらい、遠い。なんなんだこの旅館は。

タテに建てよう、という発想がなく、横にずるずると長く伸びている。建築条例かなにかがあって、高いビルは建てられないのかもしれない。

横に長いだけでなく、山の高低差に沿って這うように建物が建っているので、余計ややこしい。

「湯けむり館の1階」に僕らの部屋があって、3階まで上がって、そこから歩いて行くと「本館の1階」。本館の2階がフロントで、本館の4階まで上がって、連絡通路で万天の湯がある建物へと向かっていく。

途中、「世界子供絵画展」なる子供の絵が陳列されたエリアを通過。ますますややこしい。

これなんか、素敵でシビレ上がる分岐。

正面にエレベーターがあってフロア移動があるのはともかく、左右・・・どころか、左側には2方向の分岐があって、実質ここが「五叉路」になっている。

しかもここは「4F」と表示が出ているのに、左右の客室案内表示は500番台の部屋。

あれこれ細かく考えるだけ無駄だ、とにかく自分が行きたいところだけに意識を集中させるべきだ。

ちなみに万天の湯は、正面のエレベーターに乗れ、と書いてある。

「東別館」「南別館」「湯房」と3つの建物がまだあるらしい。部屋番号は600番台、700番台、800番台と続く。そして、「G551~558」という表記も。G?それはいったいなんの部屋だ?VIPルームみたいなものだろうか?

何か意味があって、この階段写真を撮影したはず。でも何故なのか、忘れちゃった。

今一体ここはどこなんだろう。600番台の部屋がある廊下を歩いている。南別館を歩いているはずだ。

ようやく「万天の湯」の明かりが見えてきたのでほっとしたけど、それはまだ途中経過に過ぎなかった。

まだ先があるんかー!

廊下が「くの字」に曲がって、その突き当たりにまた「万天の湯」の明かりが見える。遠い。本当に遠い。

どうやらここから先が、新しい建物「湯房」ということになるらしい。その最果てに、「万天の湯」がある。

ようやく本当に到着。部屋から10分以上かかることは覚悟していたけど、まさかその通りになるとは。

ヒノキ造りの湯船に浸かって、疲れを癒やす。

風呂に入るために疲れる、というのは変な話だけど、まあいいや。

入浴後、また10分かけて建物の端から端まで大移動。今日はこれにておしまい。おやすみなさい。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください