混沌の温泉場【万座温泉日進館】

朝食後、部屋に戻る途中の窓から見えた光景。

「あー、なるほど、これは・・・」

と思わず声がでてしまった。

手前の建物がゆけむり館、そして丘の上にある建物が、朝イチで入浴した露天風呂「極楽湯」。

本来は直通の通路があるはずだったのに、通行止めになっていた場所だ。

どういうこっちゃ?と思ったら、真実はこれ。確かに階段の残骸はあるけれど、手すりはないし、段が抜け落ちてしまっているところもある。

もう「成すに任せる」状態になっているので、たぶん復旧させる予定はないのだろう。ゆけむり館がお安い値段で提供されているのは、こういうところのコストカットの賜物でもあるのだろう。

昔のゆけむり館なら、日進館にある「鉄湯」「ラジウム湯」にアクセスは便利だったし、露天風呂極楽湯へも行きやすかった。決して「へんぴな場所」ではなかった。しかしそれが、今や「宿の遙か彼方にある場所」になってしまった。でもその分お安いですよ、というわけだ。まあ、それでいいと思う。訳ありでも、安い部屋が用意されているというのは、むしろありがたい。均一のサービス、均一のクオリティというのは、むしろきゅうくつだ。

9時過ぎにチェックアウトする。

今日は志賀高原をドライブし、小布施あたりを散策してから帰宅しようと思っている。万座温泉から南下していったら、先月訪れたばっかりの新鹿沢温泉に行き着いてしまう。

あわせて読みたい
まるでお寺!神秘的な宿に泊まる【新鹿沢温泉】 「温泉療養シリーズ」と称して、月に一度は温泉に行って「あーーーー」と湯船でうなり声を上げる時間を設定してきた。しかし、さすがに毎月毎月というわけにもいかず、...

二ヶ月連続で同じ場所はテンションが上がらないので、敢えて別の方向へ。

まずは、万座温泉の象徴とも言える場所、「空吹」を見に行く。今日も相変わらず煙を噴いている。

普段ならのんきな景色だ。でも、このすぐ近くの草津白根山のお釜周辺1kmが立ち入り禁止エリアになっている状態なので、油断はならない。温泉というのは、当たり前だけど火山あってこその財産だ。火山噴火なしで、適当に煙を噴いたりする程度でガス抜き完了・・・とはならないものかね。

ならないんだろうな、鹿児島県の桜島なんて、あれだけ噴煙をバンバン噴き上げ続けてもまだ腹の虫がおさまっていないっぽいし。人間が考えるスケールと違いすぎる。

噴火するエネルギーがあるんだったら、もっと温泉をバンバン出せよ!・・・と思うが、そんなに都合良く温泉なんて出るかー!というのは大自然の摂理なのだろう。また、バンバン温泉が出たら出たで、それが川に流れこんで川の魚が死に絶える、なんてことにもなる。

なんだよ、結局「今ぐらいがちょうどいい」っていうぬるま湯な結論かよ。

志賀高原をドライブする。

風光明媚で、これぞドライブのためにある道だ。長野県は、美ヶ原にしろ、志賀高原にしろ、乗鞍高原にしろ、「ずるい!素晴らしすぎる!」という道が多いから困る。

万座温泉の南東に、「小串鉱山跡」という場所がある。本当はここに行ってみたかった。悪路の毛無峠を越えた先にある、昔の硫黄鉱山跡だ。もちろん、今は廃墟になっている。

興味を持った人は、一度ネット検索して調べてみてほしい。荒涼とした大地、果てしない山奥。そんな場所に、ぽつりぽつりと人工建造物が残されていて、不気味でもあり、不思議でもある。全盛期は、ここに数千人が暮らしていたというから驚きだ。

ただし、このあたりは天気が崩れやすい土地柄なのに加え、既に道は途絶えてしまっている。迷いやすい場所で、下手に探検をすると遭難する可能性もあると聞く。そんなこともあって、毛無峠から先は立ち入り禁止という看板が出ている。

この毛無峠の看板が、ネットでネタにされる「グンマー」発祥の地だ。ネット、とくに5ちゃんねる界隈では、群馬県というのは未開の地で野蛮であるという設定にされ「グンマー」と呼ばれるのだが、その原因が毛無峠にある。

というのも、毛無峠には「群馬県」という県境標識とともに、「この先危険につき関係者以外立入禁止」という警告看板が掲げられているからだ。小串鉱山跡が危険であることを知らない人がこの写真を見ると、「群馬=危険」であるという印象を持つし、看板背後に見える荒涼とした大地は、いかにも未開の地っぽく見える。

そんなわけで、僕はいつかここに行ってみたい、と思っている。しかし、小串鉱山跡にもし潜入できたとしても・・・このサイトで記事するのは無理だ。「立入禁止」エリアに入りました、というレポートをwebに載っけることが、このご時世なら許されないだろうから。

せめて、Googleマップで、航空写真モードで小串鉱山界隈を見てほしい。このあたりだけ、はげ山になっているのがわかる。硫黄鉱山の場合、精製工場から出る煙が強酸性のため、周囲の土壌を汚染して植物を枯らしてしまう。その名残が未だに残っているというわけだ。

小串鉱山跡界隈が荒涼としている一方で、志賀高原界隈もなかなかなものだ。つるっ禿とまではいかないけど、高い樹木が生えていない。奥に見えるのが、草津白根山のお釜の一部。

標高が高いこと、風が吹くこと、そして火山のために植物があまり生えていない。でもその結果、ドライブが楽しくてしょうがない、開放的な景色が得られるのだから嬉しい。

・・・のはずなんだけど、「うおおお!絶景!一旦車停車!」とかいって、すぐに車を停めて、下りて写真を撮っているのでドライブどころじゃない。

草津白根山の西から北に回り込むような形で、道路は走っている。

火山の影響があるので今は無理だけど、こういう土地をトレイルすると絶対に楽しいと思う。お釜の東北側に、「芳ヶ平ヒュッテ」という施設もあるようだし、道はあるようだ。

あと、熟練者に連れて行って貰えるなら、野湯もこのあたりにはあるようだ。いつか行ってみたい。

志賀高原のなかで一番高い山、横手山の中腹にある「のぞき」に立ち寄る。

ここにやってくる観光客は、100人中100人が「のぞき、だって。クスクス」とその名前を話題にして笑っているはずだ。僕もそう。前にも訪れたことがある場所だけど、毎度同じリアクションをしてしまう。

そんなのぞきにある、お店・・・のぞき喫茶、と表現したらお店の人に怒られるだろうな。

ここの面白いのは、たけのこ汁があるということだ。ちょっと珍しい。なんとなく旅情を感じる。いや、何がどう旅情なんだか、さっぱりわからないけど。

志賀高原は標高が高いので、当然竹は生えていない。おそらく、「根曲がり竹」と呼ばれるササの一種のことなんだと思う。

気にはなるけど、先ほど宿で朝ご飯をグイグイ食べたばっかりだ。お腹が全く空かないので、一旦ここはパス。一旦、というか永久の別れな気がする。なにせ、腹が全然減らないんだよ!

食欲だけでなく、当然物欲もなくなっている。

なので、お店の中をフラーリフラリと歩いて、おしまい。

のぞきをのぞきと言わしめているゆえん、それは志賀高原の眺めがとても良いからだ・・・と思う。

でも、それだったら「大展望」とか他にも名前のつけようがあっただろうに。「のぞき」という名前だと、隙間からチラッと見る、というイメージだし、なにしろエッチな響きがある。

あっ、敢えてそういうセンセーショナルな地名にして、観光客を呼び寄せているのかもしれない。だとしたら、まんまとはめられたのかもッ!?

どうであれ、眺めは良いのです眺めが。山がぴょこぴょこ飛び出ていて、アップダウンある光景は見ていて楽しい。

熊ノ湯温泉あたりをズーム。おお、のぞいている感がちょっと出てきた。

超望遠レンズを使えば、この界隈の宿泊施設の露天風呂をのぞくことができるのかもしれない。

いや、無理だ、天体望遠鏡でも使う気か?

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください