
草津温泉のすぐ手前に、「楽泉園」という老人ホームか温泉療養所のような施設がある。これまでも、車で横を通り過ぎるたびにその存在は知っていたのだけど、緑の奥深くに存在する施設なので、その建物などは見たことがない。特に大きな看板が出ているわけではないので、外来患者歓迎!というわけではなさそうだ。
そんな施設の傍らに、「重監房資料館」という施設がある。
先月、新鹿沢温泉に一泊した際に立ち寄った中之条で、この資料館のリーフレットをもらった。ハンセン病患者が隔離されていた施設の跡地ということらしい。建物は現存せず、礎石だけが残されているようだ。
リーフレットの写真の迫力に圧倒され、強く印象に残った。なので、今回訪れてみることにした。
地図通りにたどり着いてみると、そこは深い緑。そして、砂利道だった。
本当にここだろうか?わざわざリーフレットがあるくらいだから、ちゃんとした道路があるような場所だと思っていたので、にわかには信じられなかった。
でも、確かに案内看板が出ている。

狐に化かされたんじゃなかろうか、なんて思いながらも、車一台しか走れない砂利道をしばらく進む。

その先には、急に立派な建物が建っていたのでさらにびっくりした。そして、ここは道路が舗装されている。
これが、目指していた「重監房資料館」。
なんのことはない、舗装されている道路は別にあって、僕らはその道路を通らずにやってきた、ということだった。・・・ただし、正確に言うと、舗装されている道路には、一般車両は立ち入りができないのだけど。

今更になって、「楽泉園」がハンセン病(元)患者の住居施設である、ということがわかった。
昔はハンセン病は隔離されることが法律で義務づけられ、伝染する病ではないかという嘘のために嫌われ、差別の対象だった。既にそういう問題は解消され、今やハンセン病だった人達は日常生活に溶け込んで生活しているのだと思った・・・・のだが、現実はまだ、こうやって集団生活をしているのだった。
僕らは何も知っていなかった。知ろうとしていなかった。
隔離を義務づける法律がなくなったことで、患者さんたちの社会復帰は可能なのかもしれない。しかし、長年隔離され続けてきて、今更社会には戻れない、という事情もある。さらに、最近の日本ではハンセン病を発症する人はほとんどおらず、結果的にここは高齢になった方々が住んでいるのだろう。
園内地図を見ると、「立ち入り禁止エリア」や「許可を得た団体のみ立ち入り可エリア」と細かくエリアが分かれている。僕らが今いる重監房資料館は、それら楽泉園の端の端に位置している。なるほど、施設の縁を移動したので、砂利道だったんだ。園内はちゃんと舗装されている。
こうやって細かくゾーニングされているところを見ても、未だに差別に強く警戒していることがわかる。

ここから先は、2016年に「アワレみ隊OnTheFacebook」に書いた文章をそのまま転記する。
重監房資料館。 草津温泉のはずれにハンセン病患者を収容する施設があり、さらにその一角には「反抗的な態度をとる患者を強制収容するため」の、「重監房」という建物があったのだという。
いまや建物の基礎部分だけが残っていて、往時をしのぶことができる・・・と、以前中之条市の博物館を訪れた際に見かけた資料館パンフレットで知った。
パンフレットの写真だと、森の中にコンクリート製の建物の跡が残っているだけのようだ。せいぜい5分もあれば見終わるものだ、と軽い気持ちで現地を目指した。
案内看板に導かれて、森の中を車で進む。舗装すらされていない細い道。
目の前に現れたのは、立派な建物だった。ギャップに驚く。
中に入ると、会議室に通され、「まずは20分ビデオを見ていただきます」と職員さんから告げられ、意表をつかれた。予想と違う。森の中の建物跡、じゃないのか。
20分、我々二人だけのためにみっちりとビデオが上映された。
そこで、重監房の歴史、そしてハンセン病患者がこれまで受けてきた差別や苦しみについて学んだ。 知らないことばかりだった。もうハンセン病とその差別問題いうのは過去の話だと思っていたけど。
この資料館の隣一帯には現在もハンセン病(元)患者らが住む「草津楽泉園」がある。 この施設は通りから奥まった、見えない場所にある。てっきり、温泉療法によってリウマチや皮膚病を治療するための病院なのだと思っていたが、古くからあるハンセン病患者の療養施設だということは今回初めて知った。
昔は、ハンセン病患者はこのような施設に強制収容が法制化されていたという。
草津楽泉園はゾーニングがされていて、外来者は立ち入り禁止のエリア、人権学習などで訪れる団体は入ることができるエリア、そして重監房資料館のように(一応は)誰でも入れるエリア、とわかれている。心無い人が施設敷地内に入り問題を起こさないようにするためだろう。

20分のビデオ上映の後、場所を移して、昭和20年前後に実在した「重監房」の1/1復元建物前でさらに8分ほどのビデオ上映。さらにみっちりと学ぶ。
「重監房」では、明かり取り用の窓しかないような狭い部屋に「反抗的」とされた患者を押し込め、その過酷な環境のために数十人もが命を失ったという。

復元模型を眺めたり、実際に1/1スケールで一部分を再現したものの中に入ってみると、その異様さに唖然とさせられる。言葉が出ない。

差別というのはここまで人間を悪くさせるのか。重監房の凶悪な形状に、ただただ「うーん」としかいいようがなかった。 資料館にしろ、展示内容にしろ、上映されるビデオにしろ、人権啓発のためにかなりしっかりと予算がつけられているようだ。
その分、身に迫る迫力があり、「人権とは何か?」ということを心底考える機会となった。

草津温泉を訪れる機会があれば、立ち寄ってみるとよいかもしれない。ただし、後で知ったことだが、実はここは個人訪問者も事前予約が原則だったようだ(僕らは飛び込みだったけど、快く受け入れてもらえた)。また、冬は団体のみの受付となり、個人は受け付けていない。

転載は以上。
この1/1スケールの重監房の重々しさを見てほしい。8つの独房があって、それぞれが高いコンクリートの壁で仕切られ、完全に独立した状態になっている。

小さな、食事を差し入れるための小窓が開いているだけの独居房。
草津の冬はとても寒いので、冬の間に凍死する人が後を絶たなかったそうだ。

差別に関する話なので、うまく説明する語彙力が僕には乏しい。なので、これは施設に予約を入れて、一度見に行ってほしい。草津温泉のすぐ近くだ。映像と実物大模型で、非常にリアルに当時のことを学ぶことができる。
資料館の立ち去り際、楽泉園の様子がチラリと見えた。平屋建ての住居が並んでいるようだった。
ここから先は、立ち入り禁止。まだここに、見えない境界線が存在する。
すごく重たい話だったけど、これまで見えていなかったものが見えたので、ありがたい体験だった。
(つづく)
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