トイレを覗き込んでみる。
トイレって、「入口に対して垂直に便座があるか、水平にあるか」の2パターンがある。僕はいままで、扉を開けたら正面に便座があるという家にしか住んだことがない。だからだろうか、このように「扉を開けたら、90度横に向いた形で便座が設置されている」形態のトイレは、なんか「おおお」と思ってしまう。こっちの方が高級感あるように感じてしまう。理由は特にない。単に横向きの方が経験が浅いからだ。
恐らく、男性にとっての利便性という点では、「扉を開けたら正面に便座」の方がよいのだろう。すぐそのまま用をたせる。逆に女性の場合は、必ず着座するので、トイレの中で180度ターンを強いられる「正面便座」よりも90度ターンで済む「横向き便座」の方が楽だったりする・・・のだろうか?女性の意見が聞いてみたい。
壁面に、ガラス製の細い棚が取り付けられていた。
「おおおお」
と思わず声を上げてこのギミックに感嘆の意を表した。
いかんな、こういう「小細工」にばっかりさっきから反応してる。もっとビシッと、本筋のところで物件を見極めないといけないのに。
でも、こういうところに気が回してある物件というのは、総じて良い物件だと思う。オーナーなり工務店なりが良心的だしあれこれ考えているのだろう。
早くも、「この棚の上には何を置こうか?」ということを妄想してしまう。
リビングに移動する。8.4畳あり結構広い。
この物件にはベランダがなく、出窓になっている。出窓の下には引き戸があり、ちょっとした物を格納することができる。出窓の手前にはつり革のような形をした棒が2本ぶら下がっている。おそらく、物干し竿をここに通せ、ということなのだろう。
「こんなところに物干し竿を吊したら、邪魔でしょうがないですよ」
と僕が愚痴ると、担当者は
「そのための浴室乾燥ですよ」
とにっこり応じた。なるほど、そういうことか。つまり、この物件の場合、原則晴れの日も雨の日も浴室乾燥を使う、というライフスタイルになるわけだな。電気代はどれくらいかかるのだろうか。
この物件には玄関モニターが付いていた。不審者や押し売りの人がやってきてもこれで居留守を使うことができる。・・・といっても、玄関まで目と鼻の先にリビングがある1Kだ。居留守を使うのも楽じゃない。
居留守といえば、大学時代に住んでいた家は本当にセールスマンの来訪が多かった。こっちも居留守で対抗していたのだが、夏場、暑かったので玄関扉につっかえ棒をはさみ、チェーンロックをかけて隙間風を取り入れたいたときは根比べになった。
ピンポーン「いるんですよね?いなきゃ、チェーンロックかけられないですもんね。すいませーん、ちょっといいですかー」ピンポーンピンポーン。
こっちは昼寝の最中だったのだが、針のむしろ状態で息を潜めてじっとしていた。なにしろ当時住んでいた家は玄関先からリビングまで仕切りがなかった。なんとかして部屋の中をのぞき込んだら、タオルケットを頭までかぶってびびりまくっている僕の姿を発見することができただろう。そうならないように、ひたすら身動き一つせず我慢だった。
「もし見つかったらなんて言い訳しようか?寝てました、気づきませんでしたって開き直るか」
なんてびくびくしていたものだ。結局根比べは5分以上続いたけど、最後は根負けしてセールスマンは去って行った。それでも、しばらくは家の前で待ち伏せされているんじゃないかと思い、その日はずっと部屋が暗くなっても明かりをつけずにじっとしていた。
話を戻すと、この玄関モニター、「アイホン」と書かれている。この名称が既に日本では登録されていたので、「iPhone」は日本では「アイフォン」と名乗っている。本来なら、「アイホン」と名乗りたかったらしい。
押し入れ。引き戸にするほどの幅はないので、観音開きになっている。クローゼットと思わせておいて、開けてみたら押し入れだった、という作り。
奥行きは比較的あるけど、これはゴルフクラブ、置けないよね。もう埃が積もってるし、ゴルフクラブは捨てようかな。
ベランダがない物件ということは、現在の家でベランダ占拠中であるキャンプ用品の行き場がなくなる、ということだ。この押し入れに格納か・・・ちょっと厳しいかなあ・・・。アワレみ隊のキャンプ用品は、昔は「人力で運ぶ」事を前提にしていたのであまりかさばらなかった。しかし、オートキャンプ化し、しかもキャンプ頻度が下がると、どんどん「もっと快適に。もっと楽しく」ということを道具で実現するようになっていった。そのせいで今や荷物は相当なボリュームに。押し入れに入るかなあ・・・。入らなかったら部屋の中に置くしかないのだが、それはなんとも冴えない話だ。部屋が物置化する。
リビングから玄関を見たところ。ざっとこの家はこんな感じ。
コンセントの位置、特にテレビ用の同軸ケーブルの口の場所で、この部屋がどのように使われることを想定しているかがわかる。担当者と二人で推理ゲームをする。
「えーと、テレビはこっちに置くんでしょうね。では、机とかソファとかはこっち」
「ベッドは窓に沿っては置けないですね。そうすると、窓の下の物入れが使えなくなる」
「ということはベッドはここしか置き場がない」
ある程度想定が出来たところで、ムムムっとその空間での生活を妄想してみる。
うーん。どうなんだろ。やっぱりよくわからない。
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