俺の引っ越し2013

【4軒目:駅徒歩2分の挑発的物件】

本日最後の物件。お店で探した限りでは、これが一番の有力候補となる。

これも癖がありすぎる物件なのだが、とにかく「駅から徒歩2分」という立地条件がすばらしかった。実際に現地に到着してみると、本当に大げさでもなんでもなく、駅から2分の場所だった。駅ロータリーを越えたらすぐだ。道中、飲食店に事欠かないし、これは町全体が自分の台所、と言ってもいいくらいだ。

外観だけ

ただしこの物件、11月末までまだ入居中なのだという。

内見するには、今住んでいる人が退去して、内装などのチェックをして必要ならば補修をしてからになる、という。なので、早くても12月頭、万が一壁紙の張り替えとかあればもっと後になる、と言われた。

「今お住まいの方は、まだ住み始めて数カ月なんですよ。だから、そんなに汚してはいないと思うのですぐに内見できるとは思うんですが」

と不動産屋は言う。えっ、数カ月で退出?なんで?幽霊でも出たか?

「さあ、理由はよくわからないですけど」

大丈夫かな?

間取り図

この物件の間取り図。

26.2平米、駅徒歩2分。これで賃料が共益費込みで66,000円というのはとても安い。しかも、敷金1カ月、礼金ゼロだ。何でこんなに安いのか、不動産屋に聞いてみたら

「一時期、この建物に空室がたくさん出たんですよ。それで大家さんはびびっちゃって、大幅に値下げしたんです。以前のこの価格は・・・ほら、これだったんですけど(現在よりも1万円以上高い値段)、今じゃこうなってるんです。その後、無事に部屋は埋まりましたけどね」

そういえば、この物件は僕が狙っている部屋以外にも空き部屋があった。駅から近いけど、何か人気が低くなる事情があるのかもしれない。注意しておかないと。

まだ入居中ということで、内見はできない。外見だけ見て、不動産屋に戻った。不動産屋であらためてこの物件の写真を見る。最近はパソコンにデジカメで撮影した写真を収納しておき、閲覧できるので便利なご時世だ。

洋室8.9畳、というのは確かに広そうだ。しかも真四角なので、自由度が高い。さっき見た変な形の部屋とは大違いだ。そしてこの家には独立洗面台が付いていて、便利だ。キッチンのコンロすぐ脇にあるという変な作りだけど。・・・って、あれれ?

「あれ?この物件、冷蔵庫ってどこに置くんですかね?」
「冷蔵庫、ですか・・・えーと」

不動産屋が写真を見返したり、間取り図を確認する。しかし、どうも冷蔵庫置き場はここにはないようだ。

「あ!ちょっと待ってください。流しの下に何かあるみたいですよ。ミニ冷蔵庫が備え付けになってるんじゃないですか?」

僕が写真の中から、気になるものを見つけた。

「あー、そうですね、これはミニ冷蔵庫っぽいですね」
「じゃあ、物を冷やすときはこれを使え、と。部屋に冷蔵庫を置くな、と」
「多分そういうことでしょうね」
「あのー、この物件の詳細な情報ってないんですか?これ、間取り図だけで、たとえばBSアンテナが付いているとかネット環境がどうとか、そういう情報が全くないんですけど」
「ある情報はこれだけです」
「えええ?」

そんないい加減な。

こんなんで不動産の仲介ってできるもんなんだな。賃貸契約書を作成するとなればもう少し細かい情報は載るのだろうけど・・・。

あと、もう一つ気になることがあった。洗濯機置き場がどうも小さいということだ。

「この洗濯機置き場、細長いし小さいですよね?これは図を作ったときの便宜上なのか、実際にこういう形なんですかね?」
「えーと?」

不動産屋、パソコンの写真を調べるが、肝心の洗濯機置き場に関する写真は撮影していなかった。

「私、ドラム式洗濯機を置きたいんですよ。あれってほぼ正方形なので、この形の洗濯機しか置けないというのはまずいんですよ。どうなってるかとても気になります」
「確かここ、図のとおりあんまり広くなかったと思いますよ。別の部屋にお住まいの方で、洗濯機がスペースに収まりきらなかったので漫画雑誌を置いてその上に洗濯機の脚を載せていた方がいました」

そう言って、不動産屋は間取り図の洗濯機置き場に、点線でスペースを書き足した。

えー?そんな野蛮な。洗濯機みたいにぐるぐる中が回転する機械は、水平に設置しないとすぐに異音を出して壊れるぞ。ジャンプかマガジンか知らないけど、そんなのを防水パンの外に置いて足場にするなんてありえないんだが。多分、取り付けの電気屋が「こんな状況では設置できない。保証対象外だ」って言って設置拒否すると思う。

これは要確認だな・・・。

なんか内見する前からダメ物件の予感がする。しかし、「駅徒歩2分」というのは強烈にわくわくさせられた。何しろ、雨の日でも走って帰れば傘がいらないんじゃないか、というような距離感だ。これまで過ごしてきたどの人生の中よりも刺激的な住環境であるのは間違いがない。洗濯機とか冷蔵庫なんてそれと比べればささいなことなのかもしれない。

このバランス感覚、内見しないことには判断がつかない。とにかく、内見させてもらうことにした。・・・ただし、12月に入ってから、だけど。

大丈夫か、おい。

もしこれで12月に入ってから内見して、「やっぱダメだ」となったときどうするんだ?そこから物件探しのやり直しをしていたら、今住んでいる家の契約満了日までに退去できなくなってしまう恐れがある。結構リスキーだ。そこまでこの物件にリスクをかけるほどのものではないのだが・・・でもやっぱり、「駅徒歩2分」はそれだけ僕にとっては魅力だった。しかも今借りている家よりも家賃が安いし。

「じゃあ、そういうとで。」

不動産屋が話をまとめる。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って。じゃあ、内見できるようになったら・・・」
「はい、ご連絡します」
「でも、僕の連絡先は?」
「ああ、さっきメモしたのがありますので」

適当にメモ紙に書きなぐったやつだぞ、それ。大事に保管してくれるんだろうか?なんか、信用できない。そのまま忘れ去られ、スルーされそうな予感が。

心配になりながら、この不動産屋を後にした。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください