俺の引っ越し2013

【5軒目:某駅徒歩2分の物件】

大本命物件を直前でかっさらわれた空虚感を感じつつも、全く新たな物件の内見に旅立つ。

前回4軒を内見した場所も全く土地勘がなかったが、今回もそう。本当にこんなところに住むのかよ、と内見予定の物件の間取り図を手に苦笑してしまう。勤め先がある場所とは縁もゆかりもない土地だ。どうやって通勤すればいいのか、とっさに思いつかないくらいの場所ばかり。なかなかつわもの揃いだわ、これは。

内見は、てっきり一人で現地に赴くのだと思っていた。物件を直接扱っている不動産屋に出頭して、そこの担当者と一緒に物件を見に行くのだろう、と考えていたからだ。しかし、物件探しをしてくれた担当者が自分の荷物を手に、「ではいってきまーす」とオフィスの同僚にあいさつをしたのを見て、びっくりした。あ、僕をエスコートするんだ。

でもそれは当たり前か。ネット検索のお手伝いだけじゃ、商売にならない。しっかり客に物件を掴ませ、成約させないと。でも、この担当者は物件について事前知識がないどころか、物件周辺の情報すら持っていない。・・・まあ、問題ないか。むしろ、「不動産のプロだけどこの物件については詳しくないんです」ってくらいの距離感の方が、随時適切なアドバイスをしてくれそうだ。

移動しながら、このよくわからない不動産屋について担当者に聞いてみた。一体どういうビジネスモデルなんだ、と。すると、「仲介手数料でビジネスをしています」という。それだけ?「はい、それだけです」

薄利多売だ、と思う。1件成約しても、僕が探しているレベルの物件だとせいぜい7万円程度だ。1日に何件も成約、というわけにはいかないので、実は「多売」とはいえない。パソコンとネット環境があればできる仲介業とはいえ、おいしいビジネスとはいいがたい。大変だなあ、と思う。しかも今日なんか、日が暮れてからの時間で5軒の内見だ。一体仕事が終わるのは何時になるというのか。

「いえ、いつものことですから。全然余裕ですよ」

と担当者はけろりとしている。聞くと、22時まで働くは当たり前、実際は終電近くまで平気で仕事をしているのだという。昼間は客に物件を紹介したり、内見のアテンドをしないといけないので、その他諸々の仕事は夜が更けてから、という構造になっているらしい。で、「夜遅くまで働いて当然」なので「夜でも内見に出かけるのは余裕」なわけだ。実際、その担当者と同行中に電話が入り、

「22時にお客さんがオフィスにやってくることになりました。契約書を持ってくるってことで」

ということだった。22時でもまだ来る客拒まず、というのはすごい。

でもそうなると、本来夜にやるべきデスクワークの行き場がなくなるわけで、結果的に休日返上、ということになる。

そりゃ大変だ。地場の不動産屋は定時になればきっちりシャッターを下ろしてるし、しっかり盆暮れは休んでるというのに。同じ不動産業でもいろいろあるのだな。

遊ぶ暇なんてないでしょう、って聞いたら、「ないですねー、たまの休みは寝てます」とけろりと言っていた。本人はモチベーション高く仕事に取り組んでいるようだし、まあいいか。あれこれ外野が心配するのは余計なお世話だ。

移動は電車だった。不動産屋の内見といえば車がお決まりだけど、この不動産屋は車を持っていない。仲介する範囲が広大なため、車での移動は逆に面倒なのだろう。でも、駅から徒歩20分とか、遠い物件に行く場合は大変だ。見知らぬ客と、愛想笑いを浮かべながら雑談をしつつ歩いていかないといけない。コミュニケーション能力が足りないと、間が持たずイヤーな空気になる。

ちなみに、電車賃は不動産屋が出してくれた。移動の都度、自動券売機できっぷを2枚買い、領収書を受け取っていた。

さて、本日の内見1軒目は、最寄り駅から徒歩2分の場所にある、という。出た!徒歩2分!探せばあるものだな、駅に近いけれど僕でも手が出せる物件が。

駅前にマンションが立っている駅は珍しくないが、単身者向けの1Kや1Rのアパートがあるというのは都心部ではごく限られている・・・と思っていた。

こういうのは、「○○駅周辺の物件に限定!」とせず、幅広く網羅的にネットで物件を探しまくった成果だ。この駅には全く愛着も知識もないが、大抵の場所は住めば都だと思う。たぶん。

物件#05間取り図

物件は68,000円、共益費2,000円。敷金礼金1ヶ月ずつ。24.60平米の1K。鉄骨2階建ての2階で、築17年。25平米以上を確保できれば随分嬉しかったが、さすがに徒歩2分物件でこの値段なら贅沢は言うな、ということなんだろう。

物件を不動産屋で見繕ってもらった際、この物件を発見したスタッフは

「これ、徒歩2分ですよ。ワクワクしませんか?」

と自信たっぷりだった。確かにワクワクする。不動産屋にはあらかじめ「現時点で候補に挙がっている『駅徒歩2分』の物件(物件#04)を上回るワクワクを探してくれ」と伝えてあった。駅から遠くてもかまわないが、「徒歩2分」を上回るサムシングを見つけてくれよ、というわけだ。で、実際に徒歩2分を見つけてきたのだから、これは十分に検討する価値があるというもんだ。

飲み屋や焼肉屋など、雑然とした店が並ぶ通りを抜けていく。道は何度も掘り返したのかボコボコしていて、ちょっと家までの道がイイカンジではない。でもそんなことは些細なことなんだろう、と思いながら物件を目指す。こんないかがわしい土地も、考えようによっては「ワクワク」なのかもしれない。どのような要素を「ワクワク」とみなすかは、本当に難しい。考え出すときりがない。

あれ?地元の不動産屋に立ち寄らないの?でも鍵はどうするんだ?今、まっすぐ物件に向かって歩いている。不動産屋があらかじめ鍵を開け放ってくれているのだろうか?でもそんなこと、やるだろうか?ちょっと考えられないんだが。

物件前で不動産屋が待ち構えているのかと思ったが、それもなし。

物件#05外観

「えーと、たぶんこれですね」

と担当者にある一軒の建物を指さされ、本当に我々二人だけの内見ということを悟った。「たぶん」という言葉を使うあたり、ふわっとしていて面白い。若い女性ということもあって、担当者がプロとアマの狭間っぽい。

じゃあ鍵はどうするの、と思って担当者の様子を見ていたら、メモを見ながら部屋の玄関先にある電力計周辺をゴソゴソいじりはじめた。しばらくすると、「あ、あった」といってパイプのところにくくりつけてある「何か」を手に取った。それは、南京錠の形をしたセキュリティボックスだった。

4桁だったか5桁だったかの数字を内見アポ取りの際に先方不動産屋から聞きだしてあったらしく、数字をあわせたら南京錠が開いた。するとパイプからセキュリティボックスが外れ、中から鍵が出てきた。なるほど、そういうことか!

夜になっての内見じゃ、地元の不動産屋はイヤだろうなと思ったけど、こういうやり方で他の不動産屋に内見を任せていたとは。初めて知った。

この後見て回った物件全てが同様のやり方を採用しており、この業界ではごく一般的な方法らしい。ただし、先方からの場所指定が曖昧で、我々二人が現地で宝探しをするかのようにセキュリティボックスをあちこち探す羽目になることが何度かあった。油断ならない。

さてこの物件だが、1階部分まるごと駐車場になっていた。そして2階が住居だった。2階建ての賃貸物件としてはちょっと変わった作り。

階段の幅も重要

二階に続く階段。なぜか黄色く塗ってある。滑落注意、ということで警告しているのだろうか。

今回の物件探しにおいて、階段の形や幅というのも気にするようにしている。家電製品の運び込みの際、階段が狭くて部屋まで到達できず残念、という事例がよくあるからだ。

今回、「冷蔵庫を買い換えよう!」とか「洗濯機をドラム式にするんだ!」と家電製品をほぼ全面リニューアルするつもりで、早くもどれを買おうかカタログとか価格.comなどをあれこれ見ている。そんな時、必ず警告として出てくるのが「階段や玄関に突っかかる可能性があるから、ちゃんと採寸しとけよ」というものだった。まあ、巨大家電を買う予定はないのでさほど神経質にならなくてもよいとは思うが、意識はしておくべきだ。単身者向けの物件、特に古い建物ともなれば、案外階段が狭い。で、踊り場も狭い。幅は問題なくても、踊り場で折り返しができませんでした、なんてのはイヤなので、今回は「踊り場がない階段の物件だったら、少し評価UP」と思っている。そんな枝葉末節なところで、物件選びが決定されることはないと思うけど。

結局、引っ越しについて頭の整理がついていないので、枝葉末節ばかりが気になって、「引っ越しをする上で絶対に外せない条件」は全然考えていないという本末転倒っぷり。

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