さて、これで内見は全て終了した。
飛び抜けてこれがいい!というのがあったわけではなかった。かといって、これ以上続けてもきりがない気もしていた。
内見を進めるうちに、自分の中でぼんやりしていた「住まいに対する条件」というのがくっきりしてくると思っていた。しかし、最後までそういうことはなかった。
結局、どの物件も一長一短で、そこをどう使いこなすかは自分のセンス次第だと思ったからだ。
11帖の1R。ロフト付き。カウンターキッチンの物件、最寄り駅徒歩1分。いろいろあったけど、さてどうしよう。
最後の内見が終わったところで、担当者とその場で床に座り込んで絞り込みを始めた。
「すいません、まだ決め切れていないんで、少しおつきあい頂いてもいいですか?」
「いいですよ、おかでんさんがどのような判断をされたのか興味がありますし」
そこで、床一面に間取り図を広げ、一つ一つ消去法で選んでいった。
「これは無いと思うんですよ。やっぱりあそこがこうだから・・・」
「ああ、やっぱりそうでしたか。おかでんさんならこの家を選ぶかな、と思ったんですが」
「いや、さすがにこのじゃじゃ馬は乗りこなせそうにないので」
と、選んでいき、最終的に一つを選んだ。実はこれまでの記事には紹介していない、別のもう一つの物件だ。
担当者も、
「トータル的にはこれが一番いいですね」
と太鼓判を押してくれた。
最後は「まだ内見できていない、駅徒歩2分の謎物件(4軒目の物件)」との1対1の対決となるのだが、もういいやあそこは。今住んでいる人の退去待ちで不動産屋から連絡がくることになっているけど、どうも信用できないんだよなあの不動産屋。連絡を待っている間に刻一刻と状況は変わっていくし、待つだけ無駄っぽい。
だめ押しで担当者にこう告げた。
「まだ僕の心は決め切れていないんですが、もしこの物件(最後まで候補として残った物件)で、家賃が月額1,000円安くなるなら、即決します。今日、契約の段取りを進めていいです」
すると、担当者は
「わかりました。では先方の不動産会社に連絡取ります」
とその場で電話をかけてくれた。
「・・・この物件ですけど、1,000円安くなりますか?」
おい、ずばり聞くなよ。値引きってのは交渉だろ。いきなり聞いて、向こうもはいそうですかとはいかないだろ。電話のやりとりを聞きながら、呆れる。
慌てて、横から担当者に入れ知恵する。
「これまでの家には10年間住んだ実績があるので、これから先長い契約が期待できますよ」
「他にも候補があって、正直悩んでいるんです。値段さえ折り合いが付けばすぐ契約するって言ってますよ」
「大企業に勤めていて、安定した収入がありますよ(誇張表現含む)」
しかしそういう入れ知恵が活かされるまでもなく、1,000円引きそのものはOKとなった。なんだよそれ。あっけないな。だったら2,000円で交渉しても良かったのかもしれない。
月額1,000円引き、というのを落としどころとするなら、最初は2,000円引きの交渉をするべきだ。で、妥協点として1,000円引きにする。そういう交渉術をこの担当者は知らないし、多分そういう回りくどいことはやらない業界なのだろう。
しかし、逆に向こうから条件が提示された。
「契約は来週までにして欲しい」
と。ええ?来週?家電製品を買うんじゃないんだぞ、賃貸契約なんていう大きな人生のイベントを、そんなにやすやすとやれというのか。
こちらは、12月末の引っ越しを想定していて、それに向けて11月頭から引っ越し先の検討を進めてきた。で、今は11月24日。一週間後の契約ともなれば、想定から1カ月も早くなってしまう。そんなに早く準備なんてできるかー。
12月末契約に出来ないか?と担当者を経由して押し返してみたけど、どんなに頑張っても2週間後の契約が限界だという。1カ月も空き室を放置するわけにはいかないらしい。そりゃまあ、そうだけどさあ。
結局、この日では結論がでず、翌日まで粘った結果2週間後に契約ということで落ち着いた。
「引っ越しをその日までにしなければいけない、というわけではないです。契約をするということです」
担当者に言われてようやく理解した。ああそうか、引っ越しは12月末のままでもいいのか。でも、お金が発生する賃貸契約は早くしろよ、というわけだ。
ちなみに今住んでいる家は、不動産屋が大家と相談し、入居ぎりぎりまで契約を先送りしてくれた。このときも引っ越し予定の1カ月以上前に物件を調べていたのだが、不動産屋から「随分早いですね」と言われたのを思い出した。
早いって言われても、引っ越しするとなると大ごとだ。1カ月前には物件を固めておきたいと思うのが当然だと思う。そもそも、現住所の退去一ヶ月前には不動産屋に退去予告をしないといけないのだし。
・・・
結局、「内見待ちの物件」については、12月に入っても不動産屋から連絡はなかった。やっぱり、「信用できない」という直感は当たった。この物件の内見をずっと待ちぼうけしなくて本当に良かった。連絡が来ない!って慌てて物件探しを再開していたら、ろくでもない結果になったところだった。
不動産業界は、貸す側に有利で、借りる側からすれば不満が残る慣習が多い。物件を仲介する不動産屋の対応も納得がいかないことが多い。その不信感が今回ますます募った。
しかも、さらにおまけの話がある。
今回、2回も内見がドタキャンされてしまった、優良物件。「法人契約をするという客が現れたので、そこと契約する」という理由で、タッチの差で僕はこの素敵な物件を取り逃した。しかし、数日後、また不動産仲介サイトにこの物件が掲載されたのだった。
一体どういうことだ?
「見せ玉」としての物件だったとしか、思えない。「内見待ちの物件」について連絡をよこさないやら、見せ玉をwebに掲載するやら、一体何やってるのこの不動産屋。
それだけではない。この見せ玉物件、僕が一連の内見でお世話になった不動産屋が今回もweb掲載をしている。
地元の不動産屋(内見待ちの物件について、連絡をよこさなかった失礼な店)とどういう繋がりでこの不動産屋がweb掲載を請け負っているのか関係は不明。
見せ玉物件が再度web掲載されているだけでも十分に僕を苛立たせたが、その掲載担当者名が僕の内見に同行してくれた担当者だったこともしみじみ残念だった。よりによって、アンタか!
その掲載があったのは、まだ僕が新居の契約を締結する前。既に内々の手続きは進めていたので、今更話をひっくり返す気はないけど、せめて一報は欲しかった。「後日談」という形で、担当者から話が欲しかった。まだ、その担当者とは事務連絡をしている最中だったわけだし。
まあそれは無理か。見せ玉の片棒担いでいるんだし。もし「見せ玉」が濡れ衣で、本当に物件が空いていたんだとしたら、僕が「やっぱこれまでの契約話はご破算!」と言い出しかねないから、言わなかったんだろう。
所詮その程度の関係性ってことだ。
さすがに、二日がかりで何時間もマンツーマンで行動を共にし、物件を見て、一緒になって悩むと、情がわいてくる。若い女性担当者だから、というわけではない。自分のこれまでとこれからについていろいろ相談に乗ってくれた、親友のようなものだった。
で、あっけなくこういうところで「いや、単なるお仕事ですから。」と放置される現実。がっかりさせられた。
これが現実なんだな。そういえば、生命保険会社の外交員にも、腹を割って相談とかしていたあげく、契約締結後は放置プレイにされたばっかりだった。
少しは学べ、俺。
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