小笠原遠征

バナナ荘外観

08:16

8時過ぎに、シーカヤックツアーのお迎え車がやってきた。「ブルースカイビッグホース」という名前の1日シーカヤックツアーに申込をしてあった。1日、お弁当付で7,500円。

ブルースカイビッグホース

車で案内されたところはバナナ荘から数軒隣の建物だった。なんだ、ご近所だったんだ。

まさかここからカヤック引っ張り出して、共勝丸の横から海にダーイブ!ってわけではないと思うので、何をするんかと思ったら、まず住所氏名年齢などの記入。ああそうか、何かあったら保険かけとかないとまずいからな。

既に到着して準備をしている人たちを見て少しビビる。ダイビング大好きです!なカンジのウェットスーツばりばりの人や、趣味はビーチバレーですみたいな海好き野郎・娘が集結したってカンジ。僕ら、どう見ても場違いな印象なんですけど。やっぱり戦跡めぐりやってる姿が一番似合ってるのか。トホホ・・・。

この建物、ツアー開催中は「閉店」となっているが、ツアー終了後は小笠原をイメージしたアクセサリーやシャツなどを売る「ナラーニ(ハワイ語で「天国にいるような心地よさ」の意)」を営業している。変わった二毛作営業スタイル。ちなみにナイトジャングルツアーもここでは主催しているようで、シーカヤックとナイトジャングル、両方のツアーに参加者がいたらこのお店の営業時間は一体どうなるんだろうと気になる。

シーカヤック

09:08

さすがに岸壁からダーイブってことはなく、全員を車に便乗させてコペペ海岸というところに向かった。

肝心のシーカヤックがどこにもないが、と思ったら、海岸手前の車道終端のガードレールに紐で何艘もくくりつけてあった。都心でこんなことやっていたら強制撤去モノだが、やっぱり離島だからこれくらいの「私的利用」は全然オッケー、というわけだ。

09:18

コペペ海岸。

コペペ海岸

うわあ・・・きれいな海岸だなあ。母島の海岸よりも、より一層きれいに見える。遠浅の海、白い砂、そして青い海、穏やかな波。母島の場合、南崎をはじめとして湾が平べったいので、結構波が強かった。しかし、ここだともう泳ぎ放題やり放題だ。

GWだというのに、砂浜はわれわれの貸切状態というシチュエーションも素晴らしい。

シーカヤックを運ぶ

09:18

「男性の人は特に手伝ってねー」と、インストラクターの治郎さんの指示に従って、車道から波打ち際までシーカヤックを運ぶ。二人で前後を持ち、えっちらおっちらと運ぶ。

思ったよりも重い。FRP製なので本来は軽いはずだが、二人乗りということで大きいし、なかなかの重量だ。

「というより、これがシーカヤックなのか」

三人とも、頭に思い描いていた「カヤック像」と違っているのできょとんとしてしまった。

てっきり、ポリネシアの人とかが使っているような、船本体の横に並行する位置で大きな浮きがついていて、安定航行を可能にしている船なのかと思っていた。あっ、あれはカヤックではなくてカヌーか。

おかでん自身は湖でのカヤック経験があり、他の隊員2名と比べて一日の長があるぜフフフンと思っていたのだが、このシーカヤックの形状を見て途端に不安になってしまった。これ、木の葉みたいな形じゃないスか。波が来たらすぐにひっくり返りそうなんスが大丈夫なんスか。

全ての言葉に「で」が抜けてしまい、「スか。」という言葉を連発。それまでの自信、一気に喪失。

いや、そもそもカヤックって、クローズドデッキのタイプで、胴体まですっぽりと船体の中に納めるコックピットタイプのものかと思ってました。で、スプレースカートでコックピット内に水が入ってこないようにする、っていう。でもそれって、「川や湖用のカヤック」であって、われわれがこれからしようとしている「シーカヤック」って全然違うものだったんですな。

なんつーか・・・バナナボート?これあまりに喫水域が高すぎる。ちょっとした波ですぐに浸水すること間違いない。「貴重品は防水袋に入れてくださいねー」と治郎さんとアシスタントのあさちゃんが丁寧に防水方法を教えてくれるんだけど、いやちょっと待ってください、僕からデジカメ取り上げたらただの人デスヨ?これは決死の覚悟で、濡れないことを八百万の神に祈りながら抱きしめつつパドリングしなければならなくなってしまった。怖い。

濡れて壊れた、ならまだ良いが、デジカメが海に沈んじゃいましたーってなったらもう目もあてられない。ここまでさんざん撮ってきた写真が全て小笠原に沈む、というのはあまりに悲しすぎる。まあ、そうはいっても、ここまでの写真って半分近くがおが丸の光景のような気がしなくもないが。

「ええいオウンリスクよ」と、一人悲しくリスクを背負いつつ、デジカメをズボン(もちろん非防水)にしまい込んだ。

中山峠

09:19

これから、ジョンビーチ及びジニービーチに向かうという。両方とも、父島の南端に位置する砂浜で、徒歩で行こうとすると目の前の峠を乗り越え、時には浜を、時には山を2時間20分ほど歩いてようやく到着できるんだそうな。

それだけの価値があるほどの美しいビーチだというし、行った人は「価値観が変わった」といって東京都心に戻るのを嫌がる人さえいたと聞く。そんな素晴らしい場所だが、われわれはシーカヤックなのですいすいと水面を回り込んで案外簡単に行けるんだとか。

それよりも何よりも、ジニービーチの正面に位置する南島に上陸できるのかどうかということだが、なーんか治郎さん、あさちゃんの雰囲気を見る限り行く気がハナからなさげな予感。あのあたりは潮流が早いので、天候、参加メンバーの技量や年齢などを見極めないと南島には行けないらしい。

あっ、そういえばこのツアー、70歳をはるかに越えているというハッスルおじいちゃんが居たぞ。小笠原に来るだけでも相当凄いが、さらにシーカヤックやろうってんだから相当なおてんば親父だ。とはいっても体力的にはキツいだろうし、そういう面子であることもあって「南島は無理かしらん」という雰囲気になってるのかもしれない。何とか行けないものかね、南島。

パドリングのやりかたをひととおり習う

09:25

まあ、まずは自分自身が足を引っ張らない事が最優先だ。激しく華麗なテクをここで身につけたら、ひょっとしたら南島への道も開けるかもしれない。

まずは基礎練習、ということでパドリングのやりかたをひととおり習う。

二人一組のカヤックなので、ペアのパドリングがちゃんとそろうよう、息を合わせないといけない。ご覧の通り、ばばろあとしぶちょおはまだ全然合っていない状態。

海に出る

10:19

「じゃあとりあえず湾内でちょっと練習してみましょう」ということで、めいめい海へと繰り出す。

ばばろあとしぶちょおがペアを組んだので、おかでんは一人取り残された。このため、アシスタントのあさちゃんとペアを組むことになった。

パドルをこぐと、おお、そんなに力をいれないでもすいすいと前へと進んでいく。これは面白い。

・・・んだけど、これはワタクシの絶妙なパドルさばきによるものなのか、後ろに控えている熟練者のあさちゃんによるものなのか、全然わからん。

恐れた通り、ちゃぷちゃぷ波でもどんどん船の中に海水が入ってくるんですけどー。ただ、不安定な外見の割には不思議と揺れず、暴れず、大人しい乗り物だった。まあ、海用に作ったカヤックのことだ、少々の波で転覆危機一髪、なんて作りになっているわけが無いのだが。ただ、そうとは分かっていても、最初のころはあんまり横を見る余裕は無かった。横を向いた瞬間、転覆するんじゃないかっていう恐怖が常につきまとっていたからだ。何しろこちとら、80kgの体重がある。身長もそこそこあり、重心だって高い。横向いたてひっくり返ったらどうしよう、なんてことが頭にチラホラと。

外海に出る

10:19

まあまずはこの湾内でじっくり練習だな、と思っていたら、集合場所に指定されていたブイのところに全艇そろったところで、治郎さんが「じゃあこのまま先に行きましょう。ジニービーチへまずは行きます!」なんて言う。おい、もう外海出ちゃうんですか?

あ、あのですね、僕らライフジャケット着てないし、前後の艇の間隔がもう既に相当開いちゃってるし、治郎さんもあさちゃんも(実際は全員の動きを常にチェックしてるんだろうけど)マイペースだし、ホントにこれ大丈夫なんでしょうか。

外海にでると、波が結構出てくる。ところどころ、潮流が早いところがあるので、その手前にくると治郎さんが「ここから右には行っちゃ駄目ですよー、流されますよー」とか「ここは潮の流れと逆流しますので、頑張って漕いで!」なんてアドバイスがある。

逆に言うと、その程度(といっては治郎さんたちに失礼だが)のアドバイスでも初心者が乗れてしまうのがシーカヤックの素晴らしさ、ということなんだろう。

慣れてくると、パドルに力を込めなくてもぐいぐいと前に進むようになってきた。水かきをするタイミングや角度が重要ってことだ。随分周囲を見る余裕も出てきたぞ。アブねぇ、と思いつつも、ズボンのポケットからデジカメを取り出して撮影。すでにズボンは波で濡れてきており、デジカメピンチ。あんまりむちゃしちゃ駄目だ。

楽しく漕いでいるうちに、目の前数メートルのところにひょっこりと何かが姿を現した。あっ、と思ったらすぐに消えたが、あれはイルカの背びれだった。すげー、目の前でイルカの背びれ見ちゃったよ。

後で考えたら「背びれだけかい」という気もするが、それでも間近に、真正面にイルカが居たってのがなんだかえらくうれしかったな。

10:22

ジニービーチ上陸大作戦。

ジニービーチ上陸大作戦

ここら辺は潮の流れが複雑なので、先に上陸した治郎さんのいるポイントからでないと上陸が難しいらしい。あと、波打ち際は「寄せる波」と「引く波」の両方があるので、気を付けないと波打ち際で引き潮に引っ張られて転倒してずぶぬれになることもあるそうで。

先に無事上陸したおかでんは、しぶちょお・ばばろあペアの上陸の様子を窺う。シーカヤックに限らず、カヌーなどの二人乗りの船はみなそうだが、後ろの操舵者が重要、さあ、ちゃんと上陸でイルカ。

今まさに上陸しているところ

10:29

今まさに上陸しているところ。この状態ですぐに飛び降りて、カヤックを引きずって陸に上げるのが正解。

しかし、飛び降りるタイミングを逃してしまい、引き潮に引っ張られ見事二人は転覆してしまっていた。ああ。

10:35

ジニービーチ到着。父島で一番美しい浜辺と言われているところだ。

ジニービーチ

歩いてきたら2時間20分、汗まみれ泥まみれになってようやく到着のところが、われわれだと1時間もかからず、快適に到着できてしまった。いやー歩いてきた人には申し訳ないですな、って感じ。

奥に南島が見える。果たしてあそこまで行くことはできるのだろうか?距離からするとそれほど大したことはないのだが・・・

波と格闘するばばろあ

10:36

先ほど上陸失敗したにっくき波と格闘するばばろあ。

このあたり、シュノーケリングするのも最適。ちょっと潜れば見慣れない黄色やら青色やら、水槽に入っていそうな熱帯魚がたくさん泳いでいる。大きい魚ものっそりと底の方を動いている。ああ、モリがあれば魚を突きたい。

カラフルなシーカヤック

11:08

白い砂浜と、カラフルなシーカヤックと、青い海、そして青い空。いいなあ。

確かにここは地上の楽園だ。わざわざ時間をかけて来る価値、大ありだ。

パドル

11:09

やたらとジニービーチでゆっくりとした自由時間を確保しているので、治郎さんに聞いてみた。「南島には今日は行かないんですか?」と。

そうしたら、今日は潮の流れが速いこと、また南島周辺は特に潮の流れが複雑で、近寄るのは難しいこと、さらに、上陸可能地点が島の反対側(要するにこっちから見えていない、向こう側)になるので、思った以上に距離があるという理由で今日は行かない、とのこと。むー。

シーカヤックで南島というのは現実的にはちょっと難しいのかもしれない。南島に本当に行きたいのであれば、南島に行くことを専門的に謳っている、遊覧観光ツアーなどに申し込んだ方が確実だろうな。

残念じゃのう、といいつつ立てかけられたパドルの横で黄昏れるばばろあ。

日本ですよ

11:09

外国じゃありませんよ。日本ですよ。

しかも、沖縄じゃなくて東京ですからね。

一人自然を眺めるおかでん

11:11

一人自然を眺めるおかでん。

何か悟りを開けるのではないかと期待したが、「今日のお昼は何が出てくるんだろう?」という事ばっかり考えてしまい、煩悩の世界から抜け出せなかった。

砂粒は白く、粒子が細かい

11:14

砂粒は白く、粒子が細かい。

そして、ところどころ白い石が混ざっている。石灰岩だろうか。

岩礁の形は面白い

11:19

このあたりの岩礁の形は面白い。

巻き貝のような形をしていたり、恐竜の背中のような形をしていたり。砂浜のすぐ眼前にこうやって岩礁がごろごろ並んでいるという光景も珍しい。

南島は海底から隆起した珊瑚の固まりだという話だが、それと同じような事情でこういう光景を生み出しているのだろう。

お弁当の配給

11:44

さあお昼だお昼だ。

シュノーケリングで魚をスゲー眺めてやっていたのをいったん中断し、陸にあがってお弁当の配給をうける。

お弁

11:45

これがツアーが用意してくれたお弁当。さすがに魚をスゲー見た後に魚料理が入っていたらちょっと気分が悪いし、カメ料理が入っていたら仰天だが、そんなことはなく、唐揚げ、玉子焼き、おむすび、煮物の組み合わせだった。

コンパクトかつシンプルだけど、大変においしかった。雰囲気がそう感じさせるっていうのもあるんだろうけど、実際味付けボリュームともに程良く、しぶちょおばばろあも絶賛していた。

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