06:04
展望台周辺の探索が終わったところで、さっきから気になっているアンテナ群を見に行くことにした。
途中、子供の遠足でお弁当を広げるには最適ですね、という芝生の広場が広がっていたたので気になっていたのだが、看板を見て納得。
立ち入り禁止
防衛庁管理用地につき関係者以外の立ち入りを禁止する
父島基地分遣隊長
ここは自衛隊のレーダー基地として使われているようだ。奥には、戦時中のものと思われるコンクリートの建物が見える。当時も通信基地だったのだろうか?
06:09
先ほどの施設とは別のもう一カ所、夜明山展望台に向かう途中に巨大パラボラアンテナがあった。帰り道がてら、今度はそちらに向かってみる。
「国立天文台」と書かれている。おや、天文台でしたか。
それにしても、略称は「VERA」と言うんだな。「なんだか靴べらみたいで安っぽいな」「ベラでっぴん」と言われたい放題。
06:10
間近で見たアンテナ。でかい!上を向いているのでアンテナっぽくは見えない。「水道水として使うため、雨水を貯めているんですよ」と言われても信じちゃう・・・わけないな。とにかく見慣れない光景なので、ひたすら怪しく見えてしまう。
なんとたとえれば良いのか・・・ああそうだ、「○○スタジアム」なんていうサッカーなどの競技場をそのままえいやっと持ち上げました、ってカンジ?
無理だ、そんなのでこの迫力は伝わらない。ますます知らない人には理解不能になる。言葉では無理なので写真を見て判断してくれい。
で、この上を向いて知らんぷりしているキノコ野郎、一体何をやってるのかというと、ご丁寧にアンテナ周囲を取り囲む立ち入り禁止フェンス沿いに解説看板が立っているのであった。親切・・・といっていいのかな、この場合は?
「銀河系の精密立体地図を作るVERA計画」
なんだそうで。同様のアンテナが岩手、沖縄、鹿児島にもあって、それぞれの情報を比較しあい、地球の公転も加味することでクェーサー(強力な電波を発し、光は発していない星のこと)の測定を行うんだという。
素晴らしい。宇宙=NASAの構図があったけど、日本もやるじゃん、とあらためて見直した。
「で、やっぱり雨が降った後ってあのアンテナの中には大量の水がたまるよな。やっぱりアンテナを傾けて、じゃーって雨水をこぼすのかなあ?」
「馬鹿いえ、どこかに栓があって、そこを開けると雨水が流れるように作られているんだよ」
全然違う事にしか興味が無いわれわれであった。
06:20
宇宙に思いを馳せたら、地球なんてとってもちっぽけに感じられてきた。
ましてや、島の山を我が物顔で横行している野生羊なんて。
展望台で、親子の羊が海を眺めていた。こいつら、観光しとるぞ。
宇宙の広さに感銘したわれわれはがぜん妨害してやりたくなり、ばばろあとおかでんの2名で「ひょー」と叫びながら親子羊を追いかけていった。意味不明。動物虐待・・・ではないか。虐待する前に逃げられたから。
柵の向こうは断崖絶壁、さあもう逃げられまいと思ったら、器用に崖をひょいひょいと降りていった。くそ、こうなると人間様はどうにもならない。
ああ、やっぱり宇宙は広くて、地球や人間の存在ってちっぽけだ。あらためてそう思った。
「一ノ谷の合戦における鵯越(ひよどりごえ)を思い出すな、源平合戦の。羊でも駆け下りたくらいだから、われわれ人間も大量の軍勢をもってしてこの坂を下ることくらいは」
「やめとけ、全員海に落ちて死ぬだけだ。この先に敵はいない」
「あ、そりゃそうか」
06:21
羊親子が居なくなった展望台から東の空を臨む。雲が多いが、雨は降らずに済みそうな気配。まずは一安心だ。
幻想的な雲と光のバランスに、一同写真撮影タイム。
06:24
「なんやこれは。ちょっと待った、ストップ」
ばばろあからストップがかかり、車は途中何もないところで停車した。道路脇に明らかに人工物と思われる穴が岩肌に開いていたからだ。
「よく気づくなあ」「何を言うとるんや、こんなに目立つ穴なんてそうないで」なんて会話をしながら、慎重に穴の入り口に忍び寄る。
「ここは大蔵省の管轄ではないのだな」「何も書かれていないな、その気になれば目立つ場所なのに立ち入り禁止にすらなっていない」
不思議だ。「注文のない料理店」のように、われわれをおびき寄せているのではないか?
06:24
比較的広い間口だったが、中もそのまま広かった。奥行きはそれほど無いし、岩盤はしっかりしているようなので崩落のおそれはなさそうだ。
「?ここは何だ?探照灯を格納していたにしては、ちょっと違うような」
06:25
「ばばろあ、これがなんだかわかるか?」
「いやー、わからん。何じゃろうか?ここに高圧タンクみたいなんがあるんじゃけど、これが何かさえわからん」
06:25
結局正体不明のまま、この壕を後にした。奥行きがあまりないことを考えると、地下基地的な使われ方はされていなかったようだが・・・?
「奥が深いなあ、違った意味で」
06:36
長崎展望台、という場所に行ってみることにした。父島のお隣、兄島の景色がよく見えるということだ。
途中、「←釣浜分岐点」という看板があって道が分岐していた。それを見たばばろあ、「この道に沿って、あちこちに高射砲が設置されていたらしいんよ。これはぜひ行かにゃならんじゃろ」と言い出したので、渾身の力で却下
しぶちょおは「僕はいいよ、車先に到着地点に回しておくから」なんて言ってる。あ、巻き添えを食らうのは僕ですかそうですか。あらためてとどめの一撃で却下。
06:37
兄島瀬戸を挟んで、兄島。兄貴なだけあって、非常に大きい。これが無人島なのだからなんだか惜しい気がするが、砂浜や適度な入り江が存在しないので、上陸するだけで相当難儀しそうだ。ちょっと人が住むには辛い。平野部もない。戦時中までは人が住んでいた記録が残っているが、さすがに今あらためてここに住もうという人はいないだろう。
そんな場所だからこそ、「兄島に空港建設を」という話になるのだろうが、この山肌を削って平地の空港ですか?ものすごい大規模土木工事だ。ゼネコンは儲かるかもしれないが、物資輸送や工事要員派遣だけでも莫大な日数とコストがかかる。事実上無理だろうな。
無理といえば、兄島からここ、父島までロープウェイで結ぶという話があるわけだが、いやー微妙に距離がありすぎ。ちょっと強風が吹いたらすぐ運行休止になるって、これじゃ。何もない兄島空港ロビーで、「天候不順のためロープウェイは現在運休しております」というアナウンスで途方に暮れる観光客、ってなんとも残酷だ。
06:43
車を運転中、のうのうと道路を横切る羊の親子が居た。害獣駆除班を勝手に名乗るわれわれは、クラクションを鳴らして「じゃまだ」と警告した。あわせて実働部隊のばばろあとおかでんが車から飛び出して追いかけようとしたら、親子そろって器用に土砂崩れ防止用の防護ネットをするすると登っていった。さすが野性動物、これは人間様には真似ができない。
「くそう、引き分けってところだな」
何が引き分けなのかは自分でもわからん。
06:55
「あともう一カ所くらいは朝食前に見ておきたいのぅ」というばばろあの要望に従って車は右往左往したが、途中目的地をロストすること何度か。「あれっ、行き止まりだ」
1/25,000の地図と、ざっくりした戦跡案内本では網羅しきれないらしい。
07:00
8時半には小笠原の旅最後のイベントである「戦跡ツアー半日コース」が開始となる。まだ朝食を食べていないし、荷造りも終わっていない。そろそろ時間が押し迫ってきた。
まだ戦跡にこだわるばばろあであったが、最後は強引に「観光地に行くぞ。小港海岸がきれいだということなので、そこに行きます」と宣言。車を小湊海岸に向かわせた。
海岸沿いに駐車場はないので、少し手前に駐車して歩くことになる。歩きながら周囲の風景を眺めていると、やはりここは小笠原、植生が違うので「日本のようで、日本ではない」光景が不思議だ。写真では判りにくいが、その場に目隠しをして連れてこられたら、ものすごく違和感を感じるはずだ。「あれ・・・?ここ、日本?」と首をかしげるだろう。
07:05
小港海岸到着。
父島で一番大きな砂浜だという。売店やトイレもある。
07:05
昨日シーカヤックを行ったコペペ海岸とは岬を挟んだお隣さんの位置関係にある。父島という絶海の孤島(孤島といっても、列島になっているわけだが)に大きくて波がおだやかな砂浜があるというのはちょっと意外だ。
徒歩でジョン/ジニービーチまで行くぞーという人はここから行軍開始。片道2時間、往復4時間。お疲れさまです、ハイ。現地滞在時間を考えると、半日どころか一日がかりになるので、それなりの装備と覚悟を。途中自販機なんて当然無いんだから。
ただ、われわれはシーカヤックで楽してこれらビーチに到達したわけだが、苦労して歩き抜いた人はその絶景を前にして「人生観が変わった」と思うらしい。やはり苦労しないと得られるものは少ないってことだ。
07:08
とりあえず広大な小港海岸で記念撮影を。
青い海、足下に広がる白い砂浜。ああ、別天地だ。癒される。ずっとここで半日くらい過ごしていたい。
・・・と思うんだが、もう習性になってしまったんですね、壁をチェックするということが。
「あ、ほらあそこに穴が。あれも射撃用だな」
断崖絶壁を見ると、やはりここは入り江だけあって、何カ所にも「わざとらしい、人工的な四角い穴」があいているのがわかる。
「こっちの岩肌にあるということは、十字射撃をするためにはこっちの岩肌にも・・・あ、ほらあった」
なんだか微妙にばばろあに醸されている気がしてきた。
「しかしどうやってあんなところに穴を開けたんかねえ。裏から掘り進んでいったんだろうけど、相当深いぞあれは」
崖の上から掘るにしては深すぎるし、崖の反対側からくりぬいていったとしても、結構な距離がありそうだ。まさか正面の壁をよじ登って中に入ったわけではあるまい。
しかし、そんな会話をしているそばから、野生羊どもがひょいひょいとその崖をよじ登っていった。羊って案外たくましいんだな。
「ひょっとしてあの壕、羊たちの住居になってるんじゃないか?」
「あり得るな、それ」
07:10
小港海岸に通じる舗装道路の終着点にあるバス停。くじらがこちらを「何だ、おまえ」という顔で見つめつつ、潮を吹いて威嚇している。・・・ように見えた。なかなかおもしろいデザインだ。
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