10:53
しばらく歩くと、商店や土産物屋が並ぶゾーンにやってきた。
小笠原で特徴的なのが、「ぎょさん」と呼ばれるゴムぞうりが大量に売られていることだ。ビーチサンダルではなく、見た目はトイレのゴムぞうり。確かに、暖かい島だし浜辺もあることだからサンダルで日常生活を送るのは快適だろう。しかし、なぜに「ぎょさん」という名前なのか、謎だ。
東京からサンダルは持参していたので、この「小笠原名物・ぎょさん」の購入は見送り、そのかわり食品スーパーを覗いてみることにした。ここには、JAが運営するお店と一般のお店、2軒が向かい合わせで存在する。
片方の店の店頭には、「お買い得情報」としてキャベツやキューリの値段が列記されていた。「4/30入港便」と書かれてあるところが、面白い。そうか、食料品の大半もおがさわら丸で運ばれてくるわけだな。
おがさわら丸で、人も、物も、食料も運ぶ。まさに生命線となる船だ。そして、排出されたゴミもまた船で持ち帰られる。・・・無人島に食料担いでキャンプに行くような感覚だ。島での生活は大変なんだな、と実感させられる張り紙だ。
10:53
でもどっこい、小笠原にだって地元独特の食べ物くらいありまさぁ、ってわけで店頭に飾ってあるのがアカウミガメの甲羅。
「小笠原唯一の『亀刺』生で食べられる店 小笠原へ来て『亀刺』を食わずに何をかいわんや!!」
と挑発的な売り言葉まで書いてある。
「おい、ウミガメって食べていい生き物なんか?」
「さあ?天然記念物じゃなかったか?」
「アオウミガメは食べちゃダメで、赤いのは食べてもいいのかしら?」
全く判らない。ウミガメの産卵シーンとかTVや雑誌でよく見かけて、「ウミガメを大切にしよう」的キャンペーンはさんざんみてきたので、こうやって「食い物」として売られている事にものすごく驚きを感じる。
そもそも、アワレみ隊は第一回目の神島キャンプの時にアカウミガメにテントを襲撃され、あわやテントをひっくりかえされそうになるという「因縁浅からぬ仲」。
そのときは、「邪険に扱ったら動物愛護の観点からマズいのではないか」と、及び腰でアカウミガメの暴挙を見守るしかなかったわけだが、1,000kmも離れるとこうも扱いが違うものなのか。
10:53
なにしろこれだもんなー。「新亀あります」だって。
じゃあ、古亀というのもあるのか、と聞きたくなるが、要するに魚屋さんで「鮮魚」と言っているのと一緒なんだろう。「新鮮な亀肉、あるよー」ってPRなんだろうな。
「おー」
こういう光景を見るにつけ、25時間かけたなあ、という感じがして、大変に旅情を感じさせてよろしい。
10:55
店内に侵入してあれこれ見てみる。
「あっ、これは!」
しぶちょおが、メカジキのパックに張ってあった値札ラベルを見て叫んだ。何やら、ラベルには船の絵が描かれている。おが丸・・・ではなさそうだ。
「これ、テクノスーパーライナーだ」
「ああ・・・これが・・・」
きっと小笠原の人達はTSLの就航を心待ちにしていたんだろう。で、このお店も期待感の表れとしてこんなラベルを作ったんだけど・・・結果は就航できず・・・うーん、心中お察し申し上げます。
10:55
何やら怪しい肉が詰まったパックがあったので見てみると、これが例の「新亀」ってぇやつだった。
亀肉ってこんな色をしているのか。なんだか内臓肉詰め合わせ、って感じだ。というか、そうとうデカいパックだ。この島の人、一体どれだけ亀を消費する気だ?
「あれ。小笠原近海青ウミガメ、って書いてある」
「なんと。青ウミガメも食べて良かったんだ」
「本州でこれやると、絶対動物愛護団体から猛抗議されるぞ」
小笠原は貴重なカメも豊かに生息する、豊潤な海なのだろう。きっと。
ちなみに1kgのパックで2,780円。高いとみるか、安いとみるか微妙な価格設定だなあ。
10:56
ただこちらの価格設定には断固として高いといわざるをえない。
レトルトカメカレー1袋880円。
小笠原みやげとして友達にどっきりさせるには最適な一品だが、ちょっとこれは高すぎて手が出ない。2人前くらいはありそうだが・・・。
10:57
このあたりはカジキがよく採れるらしい。
どうだ、とばかりに誇らしげにカジキのお頭がにらみを利かせていた。ただし、長くとがった鼻っぱしらは折られていたが。
これ、どうするんだろう。単なる飾りだろうか。
「カマの部分って煮付けるとたまらなくおいしいんだよね」
なんていったって、こんなデカいカマをゆでる鍋なんて家庭には無いし、載せられるお皿だってありゃしない。
10:59
11時近くになったので、ぼちぼち飲食店がランチ営業をオープンさせる時間になってきた。
優柔不断かついろいろ吟味した上で「これぞ島の名物」を食べたいおかでんとしては、時間をかけてお店を選びたかった。しかし、ばばろあが
「ここでええじゃん。もう開いとるし」
とあっけなくお店を選んでしまった。
「あー、待て。もう少し店を調べてからの方が・・・」
「ええじゃん。ここ観光地で?どこで食っても一緒じゃろうが」
「イヤあのですね、そうはいってもまだははじま丸の出航までには時間があるわけでして、もう少しあちこち」
とぐちぐち言ってるうちに、ばばろあはそのまま店の中に入っていってしまった。あー。
10:59
クレヨン、というお店だった。夜はバーになるようだ。
「牛焼肉定食」というありふれたメニューで油断させておいて、「カメ煮・カメ刺定食」なんてのがさりげなく書かれているのが大いにくせ者だ。しかも、沖縄名物であるはずのタコライスまで置いてある。何だか不思議な無国籍料理店の風情。
後で聞いた話だが、マリンレジャー系店舗を営んでいる人で、沖縄から小笠原に転進してきた人が結構いるらしい。また、小笠原はもともとハワイからの移民も居たため、白人がそこそこ居住している。そんなわけで、タコライスというメニューが置いてあるようだ。
11:08
しぶちょおは、「島寿司とおそば(1,200円)」に単品でカメ刺しを注文。
カメ刺し、単品で600円くらいしただろうか。結構高い。
出てきた小鉢は、何とも見たことがない、怪しい赤い肉だった。四つ足動物の肉に見えるが、これがカメか。
11:12
しばらくして、おかでんが注文した「カメ煮・カメ刺し定食(1,200円)」が届けられた。
しぶちょおがめざとく気づく。
「あっ、この定食のかめ刺し、僕の単品カメ刺しよりも量が多い!」
確かに言われてみれば、量が倍くらい違う。それで、定食セット価格1,200円はお得としかいいようがない・・・というか、何だかおかしい。
しぶちょおが「これちょっとおかしくないです?」と店員さんを呼び止めて確認したところ、「あっ、すいません、単品のカメ刺しと定食のカメ刺しを間違えてました」とおかでんのトレイからたっぷりのカメ刺しが没収されてしまった。ああ。
しかししぶちょおは抗議した甲斐があったというものだ。やっぱり、「おかしい!」と思ったらすぐに店員に確認すべきだな、と思った。
11:13
で、そのしぶちょおの「島寿司とおそば」定食。
島寿司といえば、八丈島観光名所完全制圧企画の時に食べたものだ。漬けにした刺身、甘いシャリ、わさびの代わりに辛子を使うという特徴は相変わらず。
島寿司が食べられるのは、日本でも八丈島、小笠原諸島、沖縄の大東島の三カ所しかない。すなわち、八丈島移民が各島の開拓に寄与したというわけだ。
その三カ所のうち、二カ所目の島寿司を口にしたしぶちょおはご満悦だった。
11:14
とはいってもわれわれも、八丈島名物ウミガメを食べないことにははじまらない。
さあて、まずこれは・・・ウミガメの煮物か。
11:14
ウミガメの肉。何だかね、くにくにしていて、まさに内臓肉を食べている感じ。コラーゲンたっぷり、だかなんだかしらんが、海の生き物を食べている感じってのはあまりしない。
ばばろあが「うー、生臭い。もう少し生姜がきいてるといいんだけど・・・」と生臭さに閉口しつつ、煮込みを食べていた。おかでんはこれくらいの生臭さは平気だが、確かに見た目も、味も少々グロテスクだ。頻繁に食べたい食材ではない。
先ほど1キロで売られていた肉もそうだったが、部位関係なくぶつ切りにされたものだった。だから、この煮物の小鉢も、いろいろな食感の肉が入っていて、それはそれで面白かった。
11:14
竜田揚げもあった。
お皿に1個だけ、というのが少々寂しいが、これは臭みも特に感じず美味・・・だったかな?
11:15
もちろん「小笠原到着記念」ということで、一人ビールを飲む。
実は、先ほどからまだ頭がグラグラした感じがぬぐい去れていなかった。いわゆる「丘揺れ」というやつだ。丸1日、船の中で揺れていたので、しっかりした地面に地に足をつけても、揺れて感じるのだった。
これは残り二人も同意見で、「何だかフラフラするなあ」とぼやいていた。こればっかりはアルコールを飲んでも治らず、この日の夜まで丘揺れは続いた。
11:16
食事中のわたくしたち。
小笠原という、東京・竹芝からわざわざ1日がかりで物資を運んでいる場所にもかかわらず、飲んでいる麦酒がドイツのレーベンブロイというのが何とも不思議な組み合わせだ。
11:37
食後、ビジターセンターに向かう。
先ほどまでは開店していなかったその名もずばり「島寿司」が開店し、暖簾がぶらさがっっていた。
カメの存在を知らなかったので、本当はここで「日本三大島寿司(といっても3カ所にしか存在しない)」の一つ、小笠原島寿司を食らうのが当初おかでんのもくろみだった。
しかし、11時時点でまだ開店していなかったので残念賞。
11:38
あれ。営業時間は午前10時からだった。既に営業してたのか。完全に見落としてた。
それはともかく、ここにはカメ寿司ってのがあるんだな。1,500円なり。あの肉を使って寿司にするって、結構シュールだと思うんだが、どんな感じなんだろう。
このお店は、島寿司のお持ち帰りができることで有名。帰りのおが丸で、間食や夕食がわりに仕入れていくのに最適だ。島寿司、食べそびれちゃったので、帰りにはここでお寿司を包んで貰うことに決めた。
11:40
小笠原村の役場。
さすがに小さい。田舎の小学校みたいだ。
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