24時間温熱をくらえ【四万温泉】

積善館外観

14:00
フロント脇に、積善館の全景写真が飾ってあった。

なるほど、こうやって見るとこの宿がどうなっているのかがよくわかる。

谷底・・・というと表現が大げさだが、今いる川のたもとが最下層であり、本館がある。そこから山の斜面にそってひな壇式に建物が増築されており、本館の一段上が山荘、そしてそのさらに上が「佳松亭」。

佳松亭をこしらえたところで需要と供給が一致したからか、そこから先の増築はないようだ。これ以上増やしたら、バベルの塔みたいに神の怒りを買うと思ったのかもしれない。

「土砂崩れが起きたら、ドミノ倒しのように建物が倒れるな」と不謹慎なことを考えてしまった。でもそんなことをうっかり口にしてはいかん。

この旅館内を移動するだけでもちょっとした運動だ。高低差があるし、横移動もある。それぞれの建物には浴室があるので、今度はこっちの浴室に行こう、その次はあっちの浴室に行こうなんてやっていたらかなり歩くことになりそうだ。やあ困ったな、「探検しがいがある宿」というのは嬉しいけど、この前の那須湯本温泉療養のときのように「ただただ、ひたすら風呂。」とはいかない。随分ワクワクさせられる旅になってしまった。もっとストイックでありたかったのだけど。

「じゃあお前、行動範囲を本館に限定だな。それ以外には一切足を踏み入れること禁止」ってことにする手もあるのだが、そんな禁欲的なことをやったらムラムラして夜眠れなくなりそうだ。しょうがない、探検しまくろう。もう今回はそれでいいや。

浴衣

14:05
カウンター横に浴衣が並んである。自分のサイズに合わせて持っていってくれ、とフロントで指示された。むしろこういう方がありがたい。嬉しい配慮だと思う。僕は身長178センチで、今どきさほど珍しくないサイズだ。それでも、温泉旅館の浴衣においてはサイズが合わないことが多く、すねを丸出し状態で旅館内外を闊歩する羽目になる。よりによって、部屋には「中」サイズの浴衣しか置いていなかったりするからだ。いや、「大」でも178センチだと小さい。すねが出るのはかまわないけど、すぐに胸元がはだけて無駄にセクシーになるのは周囲に申し訳ない。ムラムラさせたいんじゃない、これは必然なんだ。

だから、こうやって「自分のサイズにあった浴衣を自分で選んで持っていきなさい」というやり方は、宿にとっては各部屋に浴衣を配備する手間がはぶけるだけでなく、宿泊客にとってもメリットが大きい。ありがてぇありがてぇ。せっかくなので今回は「身長150センチ以下」用の浴衣を着て、「ピチゆかた」を堪能してみるか。

たぶん、それをやると浴衣の丈が「ひざ上」になると思う。ミニスカ浴衣なんて目に毒だ、女性でもない限りはやめとけ。しかも今は冬だし。

張り紙

「こち亀」でもこの積善館の「元禄の湯」が紹介されたらしい。両さんが描かれた漫画が掲示板に貼ってあった。

あと、

本日の「館内歴史ツアー」はお休みさせていただきます

という張り紙も。ほう?館内歴史ツアーか。そういうのがあるのか。どうやら、毎日開催されているらしい。そりゃあ是非参加したいものだ、この建物は「使われていないらしい謎の建物」をはじめとしていろいろありすぎる。

元禄の湯

チェックイン時、今回泊まる「1番館」の場所を教えてもらったのでそこまで移動する。
どうやら、元禄ロマン漂う「本館」とは別の建物らしい。「本館の中にある1番館というエリア」ではない。従業員宿舎として、本館脇に作った建物の一階部分を客室として開放している・・・というのが正解っぽい。ただ、公式サイトを見ると「本館1番館」という表現が使われている。

1番館は、元禄の湯の前を通っていく。本館の縁側を通っていく。ここは板敷きだけど、靴で移動してもよい場所となっている。しかし、なんだかとても悪いことをやっている気持ちになる。

元禄の湯の下駄箱

これが積善館だけでなく四万温泉を代表する湯、「元禄の湯」入り口。外に下駄箱がある。男女は別。年季を感じさせる壁、として窓のデザインが大正ロマンといった感じ。この建物がいつ建てられたものかは知らないけど、なんとなく明治大正といったイメージ。

元禄の湯解説

泉質は「ナトリウム・カルシウム塩化物硫酸塩温泉」。

昔から「草津の治し湯」といわれており、キツい泉質である草津温泉で湯治を終えた人が、肌をいたわるためにこの地を訪れたという。同様に、この近くにある沢渡温泉も「草津の仕上げ湯」といわれているので、いかに草津がヤバいお湯かということが伺える。そして逆に、四万温泉の湯が悪く言えば「キツくない、地味なお湯」であるということでもある。

無色透明だし地味だし、といっても侮ってはいかん。四万の病気に効くという触れ込みだし、なによりも胃腸にきくのだという。熱いままで源泉を飲めば下痢に効いて、冷ましてから飲めば便秘に良いというのだから不思議だ。うっかり便秘のときに熱い源泉を飲んだら、ますますひどくなりそうだから要注意だ。あべこべに飲まないようにしないと。

元禄の湯

元禄の湯の内部。

「写真撮影禁止」の張り紙が脱衣場などに貼ってある。おそらく、この珍しい浴室を見た観光客が、入浴中の人がいるにもかかわらずカメラを取り出して撮影する・・・といった事案が後を絶たないのだろう。それだけの魅力がある、フォトジェニックな浴室。

この写真は早朝、誰もいないときに撮影したものだから問題ないと思う。神社仏閣や美術館における「写真撮影禁止」とは意味合いが違うから。

で、この元禄の湯だが、写真のとおり小ぶりな湯船が5つ並んでいる。草津温泉における「合わせ湯」や、那須湯本温泉の鹿の湯のように、湯船ごとに湯温が違うのか?・・・と思ったが、それは特にないようだ。どこも同じ温度に感じられた。ではなんでわざわざ湯船を分けているのか、それは理由がわからなかった。

しかし、「この湯船は俺のだ!」という独占した喜びっていうのはある。そういう点では、小さい湯船も嬉しいものだ。ほら、日帰り入浴施設の露天風呂スペースに「つぼ風呂」とか「樽風呂」と名前がつけられている湯船があるでしょ?一人または二人入るのがいっぱいの小さな湯船。あれ、いつも大人気だし、中に入っている人はとてもご満悦な表情になっている。それと同じ感覚。

大きな窓から差し込む光がとても心を落ち着かせる。開放感がある作りだ。

なお、右側の壁には、蒸し風呂が埋め込まれている。引き戸を開けてその中に入れば、人一人が入って横になることができるスペースがある。あっつゥい湯気がロウリュ感覚で噴出していれば歓喜ものだけど、さすがにそんなことはなく、ぬるい湿気が充満しているといった感じ。微妙な感覚ではあり、僕は滞在期間中ほとんど利用しなかった。

使われていない階段

元禄の湯で、男湯入り口と女湯入り口の真ん中に階段があった。ここから建物の二階に上がることができるらしい。さきほど橋の上で見た、「ここは今でも使われているのだろうか?」と不思議に思っていた場所だ。ものすごく探検したい気持ちがある。

しかし、階段の手前には

誠に申し訳ございませんが こちらより先は通行禁止となっております

という札が掲げられていた。残念、二階の一部がすぐ目の前にちらっと見えているのに!一体どういう構造になっているのか、見てみたかった。これは明日以降開催されるであろう「館内歴史ツアー」に期待か?

それとも、宿泊する人の特権だ、闇夜に乗じて忍び込むか。いやいや、れっきとした不法侵入やんけ。やめとけ。

元禄の湯の脇

あともう一つ、謎の建造物として残っている「渡り廊下を渡った先にある建物」だが、その渡り廊下に通じる道は元禄の湯の傍らにあった。

なぜわざわざ渡り廊下を作ったのか?すぐ近くに橋があるというのに。雨が降っても離れに宿泊している人が元禄の湯に濡れずに行けるようにという配慮だろうか?でも、だとしたらなんでわざわざ離れを川向かいに作ったのか。謎がとても多い。

この渡り廊下もやはり今は使われていないようだ。業務用として行き来はあるのかもしれないが、一般の宿泊客が出入りしてはいけないらしい。先ほどの二階に上る階段同様、遠巻きに眺めておしまいとなった。

絶対この奥に女中の折檻部屋があるに違いない。そう思うことにしよう。または、徳川埋蔵金か、宇宙人との密約で人体実験を行っているエリア51か。

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