24時間温熱をくらえ【四万温泉】

LEDシーリングライト

1番館は古い建物ではあるが、さすがに時間の流れに取り残されたわけではない。廃墟じゃないんだから、老朽化した部分は取り替えるし、最新化だってされる。

ほら見ろ!照明がLEDシーリングライトだ!

一般家庭でLEDシーリングライトというのは、いまどき珍しくなくなった。しかし、旅館においてはまだまだ蛍光灯が多い気がする。「リモコンで照明の明暗を調整したりする」という経験はあまりない。まあ、僕の場合は廉価な宿を中心に利用しているからなのかもしれないけど。

「ほほぅ」

と唸りながら、ピピピピとボタンを押してしまった。自分の家にもLEDは装備されているので目新しさはないのだけど、「宿の部屋」ということで、つい。

「この部屋で過ごすにはどの程度の明るさが最適だろうか?」

なんてこ難しい顔をして微調整をしてみる。

館内図

非常口案内図が部屋に掲示されていた。

1番館は6部屋だった。自分がいるのは105号室。「二人部屋だとしても贅沢な広さだ、なんなら3人でも泊まれるんじゃないか」と思っていたが、6部屋の中では一番小さいようだ。いや、図の描き方の問題だろうか?「隣の庭は青い」という言葉があるけど、「隣の部屋は広い」という言葉がただいま頭の中をよぎり中。

この6部屋の中には1人部屋もあるはずで、だとすると僕の「3人泊まっちゃえ」的な発想はおそろしく貧相であるということになる。ああ恥ずかしい。

建物の1/4くらいのスペースで「厨房」がある。ここで我々が作られている食事が作られているのだろうか?だとしたら、小腹が空いたら深夜忍び込んでここで・・・などとけしからん妄想をたくましくするが、さすがにそんなことはしなかった。ガチャガチャと食器類を動かしていたり調理する音は滞在中耳にしなかったので、ここが現役で使われているのかどうかは不明だった。ひょっとしたら、従業員のまかないメシ専用かもしれない。

ガスコンロ使えず

「本館にご宿泊のお客様へ」と題した紙が一枚あった。

元禄四年から続く湯宿建築で貴重なので、客室内にガスコンロなどを持ち込んだら駄目だぞ、と書いてある。ここ1番館は文化財じゃないから関係ないよね、だからガスコンロ・・・いやいや、どっちにせよガスコンロはまずい。

「湯治スタイルの宿泊」を宿は提唱しているが、実際は「自炊をやってよい」とは言っていないよ、ということだ。おとなしく宿メシを食べてください、ということなのだろう。じゃあ「湯治」ってなんだよ、と思うが、なにも「素泊まり」が湯治とは限らない。長逗留できるように宿泊料金を抑えているならば、メシ付きであっても湯治的な宿といえるのだろう。

実際、この1番館は建物や部屋そのものからは全く色気がない。眺望も悪い。設備も微妙だ。でも、元禄の湯をはじめとする名湯があるからこそここに宿泊するわけで、「あくまでもメイン」というスタンスは僕自身望むところだ。

床暖房

部屋の中はもわん、と暑い。湿気が高いわけではないので、むっとした暑さではない。だけど、なんだろうこの暑さは。1番館の建物に入った時点で、既に温かかった。部屋の中ならなおさらだった。

これは、1番館の床下に温泉パイプが引かれているからだ。源泉から引っ張ったお湯を湯船に注ぐついでに、床暖房をやっている。すげえや、一石二鳥だ!

しかし、冬でもこの暖かさはかなりなものだ。僕は「寝るときはひんやりした部屋、ひんやりした布団で寝るのが好き」な人なので、夜ちゃんと眠れるだろうか今から心配だ。寝苦しくなって、寝返りを打ちまくるのではあるまいか。

※温度が調整できませんので、暑さに弱い方はご遠慮くださいませ。

と注意書きがある。そりゃそうだな、「暑いから湯の量を絞ろう」って勝手にやったら、湯船のお湯が干からびる。

ためしに床にゴロンと横になってみた。「ひょっとしたら、岩盤浴ならぬ畳浴になるのではないか?」と期待したからだが、さすがにそこまでホットではなかった。とはいえ、部屋全体がかなり温かい。

クーラー

部屋の片隅には空調がある。最近見ない薄型だな?昔はこういうのが実家にもあったな(30年前)・・・と思ってよく見たら、これは「冷房」だった。つまり、「エアコン」じゃない。暖房機能はなし。

そういえば昔って、「クーラーだけ」っていう空調機が当たり前だったよなぁ。暖はストーブで確保する、というスタイルだ。今じゃこの手の「クーラー」って、日本じゃあまりお目にかからなくなった。懐かしいなあ。

恐ろしいことに、今は冬だから床暖房はありがたいが、夏になってもお湯の供給は止まらないということだ。寒いから床暖房なのではない。温泉が流れ続ける限りは夏であっても床暖房なのだった。そのためのクーラー。床から温熱を、天井から冷気を。力を力でねじ伏せる強引なスタイル。

使用中は温度下げすぎますと結露が発生し
露が垂れてしまう場合がございますのでご注意ください。

と書いてある。すごい世界だ。

でもポジティブに考えれば、夏場この部屋に泊まり、クーラーを一切使わなければ「サウナで一泊」と同じことができる、ということだ。どっぷり汗をかくことができるので、新陳代謝が高まる・・・かも。でも、その前に脱水でぶっ倒れると思うけど。

別注料理

なにやら料理の写真が並ぶ紙を見つけた。

ルームサービスか、それとも提携している近所の飲食店からの出前メニューかと思ったが、「別注料理」と書いてあった。どうやら、「箱弁当じゃ物足りない人のために、追加で料理を頼んで腹を満たせ!」ということらしい。ちょっと心配になる。マジで食事の量が少ないのかもしれない。僕、空腹で倒れるんじゃないか?

「この二泊三日を生き抜くためにも、別注するべきではないか?」

と真剣になってメニューを確認してみたが、これが結構お値段がハイソだ。500円前後くらいの、気の利いた一品料理があったら「何事も体験してみなくちゃあいけないよなあ、しょうがないなあ」と言いながらニヤニヤしつつ注文していたと思う。「温泉三昧だと、体力が必要だから」とかなんとか理由をつけて。でも、さすがに「上州牛サーロインステーキ 5,000円」なんてのを見たら、そういう気持ちが引っ込んだ。

宿メシを食べておきながら、さらに5,000円のステーキ!?一体どんな人が頼むのだろう。外国からのお客様で、「私、醤油臭い日本食って口にあわなくって。たくさん料理を出されても、食べられる料理がほとんどないんです」という人用?

いや、世の中には僕が想像すらできない金持ちというのはゴマンといる、ということだ。お前の無知を世の中の常識に当てはめようとするのはやめろ。5,000円ステーキなんて、なんならトイレで尻拭き紙として使っている人だっているかもしれない。「やっぱりA5ランクのステーキはやわらかくて、肌触りがいいですね」とか言いながら。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください