24時間温熱をくらえ【四万温泉】

資料館

14:59
早速タオルを持って、元禄の湯へ行く。週末だと日帰り入浴の外来客が大勢いるお風呂だけど、今日は冬季アンド平日ということで人が少なかった。ゆったりとお風呂に入る。

しかし、「ゆったりと」がまだできない。カリカリした都会の空気が体に、脳みそにまとわりついている感じがする。エイと湯船に浸かっても、5分もすれば外に出たくなってしまう。

「風呂に入った」という事実を獲得したら、すぐ次のことをやりたがる。スタンプラリー的なものの考えだ。それはこれまでの人生、特にアワレみ隊での活動を通じて根深く自分の体に浸透し、今の僕を苦しめている。体調が良いときは、スタンプラリーで得られるカタルシスはとても心地よい。しかし体調が乱れると、達成感ばかりを求め続けて焦りと恐怖に逃げ惑うことになる。まさに今がそれ。

12月の那須湯本滞在で、「ゆっくり過ごす」ということを学んだはずなのに。今またそれが元の木阿弥になっているということを認識する。でもこれはあらかじめわかっていたことだ。だからこそ、一ヶ月に一度のペースで気を抜く場を強制的に作っているわけだ。こういうことを毎月続けていれば、いずれは意図的に、いつでも気を抜けるときがくるのだと思う。

「まずは小手調べだからな」と独り言をいいつつ、30分足らずで元禄の湯を退却。浴室自体は独特なデザインで面白いのだけど、無味無臭に近い泉質だと「成分が染み込むゥゥゥゥ!」感が乏しい。今の僕だと、途中で飽きてしまうのだった。おいおい、2泊3日の間に体と心を慣らしていきたい。

元禄の湯を出たところに、「歴史資料館」と名前が付けられた一角があった。本館1階で、フロントの脇にある。歴史ある温泉宿の自負をここで披露しているというわけだ。

額には、「千鶴万来」としたためられていておもしろい。「客」じゃなくて「鶴」なんだな。湯治にやってくる方を「客」扱いしないで、おめでたい「鶴」としたのだろう。

部屋の中

15:01
昔の宿帳などが陳列されているのを眺めながら、部屋の奥に行くと「上段の間」があった。名前の通り、手前の座敷より一段高くなっている部屋だ。お武家さまがやってきたときに通された部屋だという。

普通、そういうのは「遠くから眺めるだけ」かと思ったが、この宿では僕のような庶民階級でも足を踏み入れることができる。これが下克上なのか!しばし恍惚の境地。

ちなみにこの積善館、昔は1階に家の人が住み、2階に湯治客が泊まっていたそうだ。ということは、この1階の上段の間よりも2階の湯治客のほうが偉い。もっといえば、屋根瓦を葺いた職人さんが一番偉い。でも結局はお天道様が一番偉いんだろう。

本館1

15:02
いったんフロントに戻り、そのすぐ脇にある階段を登っていく。ここからが本館宿泊エリアとなる。古い宿なので、当然階段はある。こういうのを見るにつけ、本当に体が駄目になってから湯治じゃ遅いんだな・・・と気づく。

宿としては極力バリアフリーにしようと配慮しているようで、本館2階には佳松亭5階からエレベーターを乗り継いでアプローチできる。しかし、本館1階および3階には階段を使わないとたどり着けない。歳をとったら、おとなしく快適な大型ホテルにでも泊まったほうが良いのだろう。

温泉に浸かって健康になるために、まずは自分が健康でないといけないという矛盾。

本館2

15:03
本館2階部分。

「うわ・・・」と思わずのけぞってしまうような、古い作り。狭い廊下、くすんだ赤いじゅうたん、木の扉、昔ながらのドアノブ。平成も27年になっているというのに、このような宿が現役バリバリということにかなり驚かされる。

再開発を免れてまだ残っている木造アパート、みたいな感じだ。日本共産党のポスターが壁に貼ってあったらすごくしっくりくる。

これで天井にくもの巣でも張られていたら完全に廃墟だけど、現役バリバリだ。掃除はさすがにしっかり行き届いていて、不潔さは全くない。

こういうのを見て、嬉しくなってしまう。だって、普通ならこれだけ「年季の入った、味のある建物」だったら他旅館と競争にならんぞ?リニューアルしなくちゃ生き残れない、なんて考えるはずだ。でもこのようにそのまま残されているというのは、それだけ「この内装であっても」客が訪れている証拠だし、それは温泉が良かったり接客が良かったり、積善館が愛されているからなのだろう。

だとしてもすごいな、これ。

本館3

15:04
積善館2階から山荘へは、2本のルートが延びている。一つは山の斜面に沿って階段があり、もう一つはエレベーターだ。

日帰り入浴客は積善館2階の岩風呂に入ることができるので、このあたりをうろつくことはできる。しかし山荘から先へは立ち入りが禁止となっている。防犯の観点からもあまり外来の人にうろつかれて欲しくないからだろう。

僕も以前ここまでは訪れたことがある。で、今日はいよいよ満を持して「宿泊客のみのパラダイス」である山荘と佳松亭へ潜入できる。どうする?全裸で仮面をつけた紳士淑女が夜な夜なみだらなパーティーを開いていたりしたら。オレ、仮面なんて持ってきてないよ。

お楽しみは後にとっておこう。まずは本館探検を続行だ。

本館4

15:05
もうね、映画のセットなのか?と思うくらいレトロなんだわ本館って。

見てよこの扉、壁、スイッチ、天井。何もかも古い。

「レトロ」っていう表現を使うと随分ポジティブだけど、こりゃあさすがの僕であっても「ボロい」という言葉が口から飛び出してきそうだ。

こういうのを「味があって、むしろ楽しい!」と感じる僕でさえ、「うわぁ・・・」と思うのだ。若い女性とかどうなのかね。「ありえない」と拒絶反応を示すだろうか?スキー宿でこういうボロいのだったらまだ耐えられる。なぜなら、旅行のメインはスキーだから。スキーが楽しければボロくてもOK。でも積善館に泊まるってことは、温泉旅行を、旅館を楽しむわけであり、それでこれというのはレディーのお許しをいただけるのかどうか。

・・・と思ったら、結構若い女性がいてびっくり。カップルもいれば、女性同士もいる。どうやら、こういうのを「味があってむしろ楽しい」と受容できる世代らしい。感受性が広くて素敵なことだと思う。こういう女性とお付き合いしたいので是非、と声をかけたかったけどそれはやめておきなさい。彼氏にどつかれるぞ。

本館5

本館の廊下の一角に机と椅子が置いてあった。談話室的な扱いなのだろう。

机の高さが異なり、別のところから持ってきました感がすごい。ふすまが外されて壁に立てかけられてあるし、ざっくばらんだ。

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