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浴衣に着替え、館内図を見ながら一人作戦会議を開く。さて、今日はどうしようか。
本来なら、こういう「作戦会議」すらやるべきではない。那須湯本の回でさんざん述べたけど、「さてこれからどうしようか?」という選択肢が自分の中であること自体がイヤだ。「風呂入るしかない」「部屋に戻っておとなしくするしかない」「飯」「寝る」くらいのシンプルな生活が一番いい。
イヤだなあ、イヤだなあといいつつ、ワクワクしながら図を見る。
ほら!思った通り、探検し甲斐がある館内じゃないか。困るなあ、こういうの。増改築を繰り返したものだから、大変にややこしい建物構成になっている。
こういうのが大好きな性分なので、ついつい「まずはこっちに行って、次はあっちに行って」と作戦を立ててしまう。そうなると、「できるだけ効率よく館内を巡るには?」なんて「最適化」に夢中になってしまい、逆に疲弊するという有様。
まずは僕がいる壱番館。6室からなる。そして本館は17室。今から戦々恐々としている「箱弁当」が振る舞われるお食事会場もこの本館奥にある。
夕食時間18:00~19:00
朝食時間8:00~9:00
となっていて、食事時間そのものが短く設定されている。器がずらずら並んで、それを肴に飲む、という場ではないということがここからもうかがえる。やばい、飲むなら短期決戦で濃いヤツにしないと!と身構えるが、よく考えると自分はお酒を飲まないんだっけ。
別注料理でサーロインステーキを頼もうが何を頼もうが、この一時間が勝負なのだから時間というのは平等だ。金持ちであっても貧乏人であっても、等しく時間は過ぎていく。
お風呂は、「元禄の湯」の他に混浴の「岩風呂」がある。自治体の条例により、混浴を認めていない都道府県もあるやに聞くが、群馬県はOKらしい。そういえば混浴露天でとても有名な宝川温泉汪泉閣も群馬県だっけ。
本館ダンジョンを突破した先にあるのが第二ステージ「山荘」。15室。
ここには貸切風呂「山荘の湯」がふたつ並んでいる。予約なしで、空いていれば使えるのだという。タイミングを見計らって是非利用したいものだ。
山荘には、専用のフロントや玄関、食堂は存在しない。
山荘から地下トンネルを抜け、そこから上に登ったところが第三ステージ「佳松亭」。概略図であっても、明らかに本館や山荘と比べてグレードが高いことがわかる。部屋のサイズがでかい。きっと実際そうなのだろう。
23室。積善館の中では最大勢力を誇っており、ここが宿としては主戦場となっているはずだ。
ちなみに、公式サイトによると、本館のキャッチコピーが「日本最古の湯宿建築」、山荘が「和風の粋と技巧」、佳松亭が「贅と心づくし」となっている。確かに、僕が泊まっている壱番館が「贅」とは思えないので、明らかにランク分けがされているっぽい。
かといって、一泊二食で3万円4万円、といった値段ではない。季節やプランによって値段が上下するけど、概ね佳松亭は2万円前後のようだ。・・・まあ、壱番館と比べると3倍の差があるのだけど。
この佳松亭には、「杜の湯」というカラン付きの大浴場がある。山荘、本館ともにカラン付きの湯はないので、頭を洗ったりしたければここまでやってくる必要がある。あと、有料の貸切風呂もここ。45分3,000円だから結構よいお値段がする。さすが佳松亭。
またここには、本館とは別に玄関がある。谷底にある温泉街を迂回する形で山の上を走っている道路からアプローチできるようになっていて、駐車場もこちらにある。車で訪れた人は、間違って温泉街に突入して本館側に入ろうとしても無理。赤い欄干の橋のところで立ち往生だ。
ラグジュアリーな宿・佳松亭があるお陰で、この宿は全体的におもてなしのグレードが高かった。従業員さんの接客は気持ちよいし、トイレや風呂場の備品もよろしかった。一泊7,000円程度で泊まらせてもらっている身としては恐縮するレベルだ。
この館内図のよいところは、「上から見た図」だけでなく「横から見た図」もあることだ。山の斜面に沿って、ひな壇型に増築されていった宿。なので、この横から見た図はとても理解しやすかった。
なにしろ、本館の3階に行けば山荘にアプローチできるわけではない。山荘と連絡通路があるのは、本館の2階だ。
本館の一番下のフロアを1階とみなすと、佳松亭の最上階は8階となる。
ちくしょう、探検しがいがあるなあ。画一的な間取りだったら、今更ウロチョロするまでもない。しかし、図を見ると階ごとに廊下や部屋の形が違っており、こりゃあ見どころがいっぱいだぞと。こまったなあ、気持ちが休まらないぞ。
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